表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊業  作者: まんらび
2章
16/46

16話:入学

血と汗にまみれた試験を終えた一行。

それぞれの思惑と未熟さを抱えたまま、彼らはついに「学び舎」へと足を踏み入れる。

そこは、ただの学校ではない。

生き残るために力を磨き、己の存在を証明するための場所――。

新たな仲間、新たな師、そして新たな敵。

平穏とは程遠い、波乱の幕開け。

少年少女たちの「入学」が、始まる。

【登場人物】

主人公:気道 輝

真鴉 隼

神宮寺 泰斗

水瀬 詩織

伝諸 浩負

教師

再び体育館に集まった精鋭たち。

そこには、最初五十人いた受験者の姿はもうなく――生き残ったのは、たったの十人だった。


真鴉「……すっからかんになったな」


広い体育館に反響する声が、やけに虚しく響く。


輝「真鴉が手を貸してくれてたら、もっと助けられたかもなのに」

真鴉「一人助けたんだからいいだろ〜?」

輝「……それは、ありがとう。だけどさ」

真鴉「力無いやつは黙っとくことだな。この世は力が全てなんだよ」


その言葉に、神宮寺が薄く目を細める。


神宮寺「……ここに来て初めて共感したよ。ほんとにな」


輝「神宮寺さんまで……!」


そんなやり取りの最中、不意に声をかけられた。

眼鏡をかけた細身の男が、にやにやと笑いながら近寄ってくる。


???「あの……すみません」

輝「はい?どうしました?」

???「いやぁ……私、貴方の動向を見てたんですけどね」

輝「……ほう?」

???「貴方、弱すぎませんか?戦闘の“せ”の字も分からないでしょう」


輝「え?」

真鴉「ギャハハハ! 馬鹿にされてやんの!」


???「失礼……私は伝諸(でんしょ) 浩負(こうふ)と申します」

真鴉「ずいぶん珍しい名前だな」

浩負「うすっ……」

輝「初対面でその言い草……俺、病んじゃうよ!」


教師「……話はそこまでに。皆様、入学おめでとうございます。ここにいる皆さんは、正真正銘、我が校に選ばれた“精鋭”達です」


真鴉「……やった。ついに、入学できたんだ……!」


教師「――ただし、最後の関門が残っております」

輝「関門……?」


教師「この世界は時に仲間を蹴り落とす判断も必要になります。……皆様で話し合い、一人だけ蹴落として下さい。情は捨ててもらいます」


その言葉に場が一瞬静まり返る。

緊張感が張りつめる中、真鴉が小さく呟いた。


真鴉「まじ……か……?」

神宮寺「誰が落ちるか、話し合うまでもないだろう」


浩負「ほう、誰のことですかね」


神宮寺「……」と視線を鋭く走らせる。


念動力少女「まさか……私ですか?」

神宮寺「そういやお前、名乗ってなかったな。名前は?」

水瀬「水瀬 詩織です」

神宮寺「……水瀬か。俺が言っているのはお前じゃない」


水瀬「え?」


その瞬間、神宮寺の冷たい視線が真鴉に突き刺さる。


真鴉「……は? なんでこっち見てんだよ! 俺だって言いたいのか!?」

神宮寺「仮にも仲間になる人間に、裏切りの可能性を残すやつを置く気はない。弱すぎる気道を残したほうが、まだ不安が少ない」


真鴉「待て! 俺がどんな気持ちでここまで来たか、わかんないだろ!? 俺は遠距離から支援できるし、力はちゃんとあるんだ! 力が全てだって……そうだろ!」

浩負「確かに。この雑魚(輝)より、裏切りの芽を摘んだ方が得策かもしれませんねぇ」


真鴉「裏切りって……ちょっと気道をコケさせただけだろ! 結果的に助かったし……そんな言われる筋合いはねぇ!」

輝「……」


真鴉が膝から崩れ落ち、拳を握りしめた。


真鴉「俺を……落とすのか。俺が……落ちるのか……?」

神宮寺「しょうがない。立ち回りが甘かったな」


その時、黙っていた輝が口を開いた。


輝「……俺が棄権する」


真鴉「!? 気道……お前が!? どうして……」

輝「真鴉……どうしても入りたい理由があるんだろ? 俺はそこまでして入るタマじゃないしさ理由もないからね」

神宮寺「……ふん。無駄なことを」


教師は静かに腕を組み、輝の決断を観察していた。

口元にはわずかな笑み――それは「裏試験」の答えを得た者への表情だった。


真鴉「気道……お前……」

輝「真鴉……頑張れよ」


浩負「お涙頂戴案件ですねぇ〜」

真鴉「……あ?」

浩負「おぉ、怖い怖い」


真鴉が浩負の胸ぐらを掴む。


真鴉「何がお涙頂戴だ? 言ってみろよ」

輝「落ち着けって真鴉!」

真鴉「落ち着けるかよ! 俺、気道にあんな悪態ついてたのに……それでも気道は俺にチャンスをくれた。こんなお人好し、見たことねぇんだよ。……だから、てめぇみたいな屑が馬鹿にしていい人間じゃねぇ!」


教師「……気道 輝...やはり、力だけでなく“情”を信じる者も混じっているか。これもまた、一つの資質だろうな」


真鴉の拳は震えていた。

その震えは怒りだけではなく、気道の行動に胸を打たれたからこそ生まれたものだった――。


水瀬「あの、一つだけ……いいですか?」


真鴉「あぁ、いいよ」

(浩負の胸ぐらを掴んでいた手を離し、水瀬へと視線を向ける)


水瀬「……落とすなら、浩負さんがいいのでは?」


浩負「はぁ!? なんだと!」


神宮寺「……ほう。理由を聞きたいな」


水瀬「はい。まず最初に……輝さんと真鴉さんは、私を危険を顧みず助けてくれました。あの緊迫した状況で……自分達までも危ないのに」


真鴉「……お前」


水瀬「それに……第一、浩負さんは何かしましたか? この試験で」


浩負「そ、それは……」


輝「そういえば……乱闘の時も見なかったような」


神宮寺「居たことは居たな。……隅っこで震えていただけだが」


浩負「う、うるさい! そ、それならそいつだって同じだろうが!」


真鴉「同じ……? お前と気道が?」


(真鴉の表情が一気に暗く沈む。次の瞬間――)


――ゴッ!


浩負「ぐあっ!? いってぇえ! な、何しやがる!! 暴行だ!! ぼ、ぼ・う・こ・う・ざ・いっ!」


真鴉「……うるせぇ。もういい。お前は」


神宮寺「くだらん言い訳ばかり……気分が悪い。俺はどっちでもいい...」


水瀬「私は……浩負さんがいいと思います。輝さんも真鴉さんも……絶対に必要な人です!」


輝「……みんな……」


(他の合格者たちは黙したまま、視線を合わせようともしない。)


教師「……討論にすら加わらない方々ばかり、ですか。分かりました」


教師「浩負さんを脱落とします。それで、よろしいですね?」


真鴉「あぁ。やってくれ」


教師「……了解しました。それでは――浩負さん。ご退場願います」


浩負「ふざけるな……! お前ら全員、顔は覚えたからな……絶対に後悔させてやる!」


(悔しげに歯ぎしりしながら、体育館を後にする浩負。その背中が扉の向こうに消えた瞬間、場の空気が一変した。)


輝「……みんな、本当にありがとう」


真鴉「礼を言うのは俺の方だ……気道。お前のその漢気に、俺は惚れたよ」


輝「な、なんか照れるな……」


真鴉「今までの俺が馬鹿らしい……。殺しちゃった人に、懺悔したいよ……」


輝「殺しちゃった……人?」


真鴉「ここに来てから、一人……やっちまったんだ、弱肉強食の世界だからってさ...」


輝「……それは、絶対に許されないことだ。でもな……その人の分も必死に生きろよ。俺も真鴉の業……半分背負ってやるからさ」


真鴉「気道ぉお……!」

(真鴉が涙を堪えながら輝の肩を強く掴む)


神宮寺「……くだらん馴れ合いだな。男同士の馴れ合いって...そんなの誰が見たいんだよ...」


(冷たい声。だがその眼差しには、一瞬だけ鋭さとは違う色が混ざった。)


――カツン、と教師の靴音が体育館に響く。


教師「……よろしい。これで全員が“真の合格者”となりました。仲間を蹴り落とす痛みも背負った上で、なお立っている者達です」


(その声に体育館の空気が冷たく引き締まる。喜びも憤りも、すべてを無理やり凍らされたようだった。)


教師「では、ここからが本題です。皆様……改めて、入学おめでとうございます」


(教師はゆっくりと壇上を歩き、深く一礼する)


教師「貴方達は、日本各地から集められた数少ない“精鋭”。これより先、我が校において力を磨き、知を学び、己を鍛え続ける義務があります」


輝「……義務、か」

(小声で呟く。だがその目は、先ほどまでとは違い、どこか強さを帯びていた)


教師「まずは校則と、これからの生活について説明します」


(背後のスクリーンに光が走り、文字が映し出される)


【校則第一条】

――他者を殺めること、禁ず。


真鴉「……っ!」

(胸が痛むように顔を歪める)


教師「第二条――能力の使用は、授業・試験、または緊急時を除き、厳禁」


神宮寺「チッ……縛りが多いな」


教師「第三条――裏切りを疑わせる行動は、即刻退学処分とする」


真鴉「……っ!(さっきから俺に刺さりすぎだろ!)」


教師「……以上が基礎中の基礎。これに従えない者は、すぐにでも退場していただきます」


(教師の声は変わらず冷徹で、一片の情も見えなかった)


教師「次に、皆様の所属クラスと寮についてご案内します」


(合格者たちが小さくざわつく。ようやく“学校生活”の現実感が迫ってきたのだった)


――こうして、地獄の選抜試験を生き残った十名は、正式に“入学者”として歩み出すことになった。

今回も重かったですね…。

体育館での「誰を落とすか」という話し合い、書いていても胃がキリキリしました。

真鴉か輝が落とされるかと思いきや、最後は浩負が脱落――そして水瀬の意外な勇気が光った回になりました。


実際のところ、輝も真鴉も、ここでだいぶ“絆”のようなものが見えてきた気がします。

まだ完全に仲間ってわけじゃないけど、確実に動き出してますね。


次回はガラッと雰囲気変わります!

タイトルは「安心できる場所」。

ようやく試験地獄から解放されて、一旦日常へ。

輝が家に帰り、現実との切り替えの時間を描く予定です。

バトルばかりじゃなくて、こういう息抜きの回も大事かなと思ってます。


それでは、また次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ