15話:最終試験
二次試験を生き延びた輝...
真鴉と共に下級鬼を凌ぎ、神宮寺の圧倒的な力を目の当たりにしたことで、輝の胸には焦燥と覚悟が入り混じる。
次に待つのは、命を懸けた最終試験。
勝者だけが入学を果たすことのできる、究極の戦い――。
闘技場に鳴り響く鐘の音は、希望と絶望の両方を告げる前触れであった。
果たして、気道輝はこの試練を生き抜き、禍津学園の新たな一員となることができるのか――。
【登場人物】
主人公:気道 輝
真鴉 隼
神宮寺 泰斗
教師
異形の修行僧
念動系の受験生
鈴の音が暗闇に響く。
シャン……シャン……。
闇の帳を割って、修行僧のような姿をした異形の化け物が闘技場の真ん中に現れた。
その手に握られた鈴が揺れるたび、空気が震え、背筋を冷たいものが這い上がる。
輝「なんだあいつ!」
真鴉「気色悪ぃ……」
教師は淡々と説明をする。
教師「最終試験の説明を致します。単純明快――乱闘をしてもらいます。同盟を組むのもあり、虐殺もあり。なんでもありの戦いです。制限時間は30分...人数が10人以下になった場合も終了でございます...最後に一つだけ……あの異形の呪霊は、かつてここの生徒だった者。死して尚、現世にしがみつくその傲慢さを見込み……皆様の審査に利用させてもらいます」
真鴉「……使えるもんは使っとけってことか」
教師「では――残った人達を全員、闘技場へ。ご健闘を祈ります」
スッ……。
光に包まれた瞬間、全員の身体が闘技場の中心に投げ出された。
土と血の臭いが混じる場所。壁には無数の刀痕が残り、既に幾度もの死闘が繰り返されてきたことを物語っていた。
輝「真鴉さん!全員皆殺しとか考えてないですよね!?」
真鴉「大丈夫だ!気道はとにかく生き残ることだけ考えろ!」
輝「了解です!」
神宮寺が呆れた声で吐き捨てる。
神宮寺「一回裏切られたのに信じるとか……馬鹿すぎるだろ」
輝「お人好しですみませんねぇ!」
その間にも周囲では殺し合いが始まっていた。
怒号、金属がぶつかる音、肉を裂く鈍い音が響き渡る。
「死ねぇ!」
「ぐっ……!」
血が飛び散り、地面を赤く染める。
教師の声が再び降りてきた。
教師「思ったより皆様、耐えていますね……では追加で。下級鬼三匹を投下します」
闘技場の上空から巨大な影が落ちてきた。
ダンッ!
ドシンッ!
ドゴッ!
地面が揺れ、砂煙が上がる。牙を剥いた鬼たちが咆哮をあげた。
輝「嘘だろ!追加は聞いてねぇよ!」
次々と受験者が斃れ、数が減っていく。
輝「やばい……一人でも多く助けないと!」
真鴉「はぁ!?気道、人助けしようとしてんのか!?意味ねぇって!」
輝「意味ある意味ないじゃない!目の前で死なれたら……夢見が悪いだろ!」
少し離れた場所――下級鬼に喰われかけている受験者の姿が見えた。
輝「ダメだ!あの人、間に合わないッ!!」
スッ……。
輝の足が止まった瞬間...視界の隅に黒い影がよぎった。
輝「こ、これって……!」
振り返ると、真鴉が銃を構えていた。
真鴉「クソッ、人助けなんざ性に合わねぇけど……仕方ねぇ、たまにはやってやるよ!」
カチャ……バンッ!
銃声が轟き、火花が散る。
飛んだ弾丸は下級鬼の頭を撃ち抜き、そのまま壁に叩きつけた。
下級鬼「グォァァァァ!!」
???「や、やめて……!」
ドゴォォンッ!
壁が崩れ、瓦礫が助けられた人物の上に降り注ぐ。
???「あ、足が……」
足を挫いたのか動けず、顔が絶望に染まる。
???「嫌ァァァァ!!」
その叫びと同時に――瓦礫がふわりと宙に浮いた。
輝「うおっと……浮いた!?」
駆け寄った輝が驚いた表情で見上げる。
真鴉「念動系か……同盟組んどけ。後々役に立つ」
輝「そんな物みたいに言わないの! 大丈夫ですか!?」
???「だ、大丈夫です……鬼を倒してくれてありがとうございます……。でも、私の力じゃせいぜい浮かす程度で……ほんと、ダメだな……私……」
真鴉「……なんだこいつ、自己肯定感低すぎね?」
???「す、すみません……」
真鴉「聞いててムカつく」
輝「こら!真鴉さん、なんでそんなこと言うの!?」
真鴉「だってさぁ……」
二人が言い合う背後――鬼の影が迫っていた。
神宮寺「……あいつら気づいてねぇのか? いいや、無視無視……」
輝と真鴉はまだ睨み合っている。
輝「第一、人を最初殺そうとしたのお前だろ!?真鴉!考えてみろよ!」
真鴉「んなもん関係ねぇ!俺には俺の夢があんだよ!てめぇに説教される筋合いはねぇ!」
輝「なんだと!?」
真鴉「あぁ!?やるか?何も使えねぇ雑魚がよ!」
輝「言ったな!?」
鬼が慌てふためき、牙を剥いて飛びかかろうとする。
???「あ、あの……これ、私のせいですよね……」
輝「ぶん殴ってやるよ!」
真鴉「来いよ来いよ!そんなへなちょこパンチ喰らうかよ!」
輝と真鴉の喧嘩に巻き込まれ下級鬼がボコボコにされた
神宮寺「ああ!!うるせぇ!!気が散る!!」
異形の修行僧と対峙していた神宮寺が苛立ち、思わず怒鳴りつけた。
神宮寺「はぁ……本当に、こんな奴らを合格させて良いものなのか……」
額に手を当てて深いため息をつく。
真鴉「年齢も、この世界に入ったのも俺が先だろ! だったら先輩を敬えよ!」
輝「なんだとぉ!?上下関係は関係ないだろ!?」
額と額を擦り合わせ、互いの鼻がぶつかるほどの距離で睨み合う。
場違いなほどに子供じみた喧嘩だが、本人たちは至って真剣だ。
神宮寺「あいつらは……放っておこう。俺は俺のやるべきことをやる」
シャン……。
鈴の音が響き、異形の修行僧と神宮寺の視線がぶつかる。
神宮寺「……」
異形の修行僧「……」
静寂が場を支配する。
次の瞬間――
シャンッ!
修行僧が鈴を鳴らした瞬間、神宮寺は風のごとく踏み込み、一刀のもとに斬り裂いた。
神宮寺「……がら空きだ」
しかし、修行僧はその場に立ったまま、傷ひとつ付いていない。
神宮寺「―――なっ……無傷だと?」
シャン……シャン……シャン……シャン……。
修行僧が鈴を四度鳴らすと同時に、神宮寺の足から力が抜け、地に膝をついた。
神宮寺「ぐっ……!? な、なんだ……足が……!」
バタンッと地に倒れ込む。
シャン……。
神宮寺「……遅延系の呪いか。攻撃を受けてから効力が訪れる……面倒だな」
全身を震わせながらも、ゆっくりと立ち上がる。
神宮寺「近づけないなら……遠距離から切ってやる」
深く息を吸い、刀に指をかける。
神宮寺「幽玄の帳、影は月をも裂き……」
鞘に刻まれた紋様が紅く光を放つ。
神宮寺「無明の闇に迷う魍魎よ――」
抜きかけた刃から淡い光の斬閃が漏れ、空気が張り詰めていく。
神宮寺「一閃の下に、その身を散らせ……」
刀身が漆黒の光を帯びる。
神宮寺「無に帰せ――断月・無明閃ッ!!!(だんげつ・むめいせん)」
シュッ――!
真空波のような斬撃が走り抜ける。音すらなく飛翔した刃は、数メートル先の修行僧を一刀両断。
持っていた杖までも真っ二つで
闘技場の奥の壁までもが、裂けていた。
神宮寺「……あの鈴を切ればと思ったが案の定...」
修行僧「あぁ……」
バタンッ――鈴の音を最後に、異形の修行僧は地へと崩れ落ちた。
その瞬間、神宮寺の体を縛っていた呪いも霧散し、自由を取り戻す。
神宮寺「……あっけない。時間をかければかけるほど面倒な奴だったな...」
肩で息をしながら刀を収める。
――視線を前にやれば、まだ額を押し付け合って喧嘩を続ける輝と真鴉の姿があった。
神宮寺「……あいつら、まだやってんのか」
輝「おいおい!どこ行こうとしてんだよ!逃げようとしてんじゃん!」
真鴉「バカ! 試験時間はもう終わったんだよ! ここに残る意味はねぇだろ!」
教師「そういうことです。残った皆様は合格ですので、速やかに闘技場から退出してください」
輝と真鴉は、互いにまだ睨み合ったまま出口へ歩き出す。
二人の間にはピリピリとした空気が流れていたが――その背中はどこか、互いに呼吸が揃っているようにも見えた。
神宮寺「やれやれ……こんな奴らも合格になるのか...品がない、格が落ちる...」
呟きながら、神宮寺も闘技場を後にするのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
入学試験編、ようやく描き切れました。
異形の修行僧に加え、同級生同士の殺し合い、さらには下級鬼まで乱入と、カオスの極みでしたね。
輝と真鴉の「人助けを巡る衝突」、そして神宮寺の冷静な一言、戦場でありながら少し笑える空気も出せたんじゃないかと思います。
戦闘と人間関係のぶつかり合い、両方が物語の熱になっていくので、このバランスを楽しんでいただければ嬉しいです。
次回はいよいよ――16話 入学式 が始まります!お楽しみに!




