10話:やるべき事
仲間たちはそれぞれの場所で、己の力を磨くための時間を選んだ。
残された輝もまた、全治二ヶ月の体を抱えながら、ただじっと休んでいるわけにはいかない。
「やるべき事」は人それぞれ違う。
しかし、その選択は必ず未来を変える。
休息の中で芽生える決意――
そして、それぞれが見つけた答えが、再会の日をどう変えるのか。
【登場人物】
主人公:気道 輝
パド
師匠
師匠「さて……行くかの……」
朝食をかき込んでいた輝が顔を上げる。
輝「どこいくの?」
師匠「学校じゃ」
輝「あぁ、結界張るのか。俺も行こうか?」
師匠「いらん。お主は寝とれ!」
短く言い捨て、師匠は車に乗り学校へ向かった。
輝「……暇だな〜。パド、なんかやることない?」
パド「ない!寝とけ!」
輝「……え?喋れてね?」
パド「喋れてるよ」
輝「……口は?」
パド「ないよ?」
輝「どういうこと」
パド「分かんない。霊力が強まったせいかも」
輝「ほ、ほ〜ん……」
パド「輝は最低でも月曜までは安静!絶対!ぜっっったいな!」
輝「あい……」
---
数時間後。
静まり返った部屋で、輝はぼんやりしていた。
パド「静かだね」
輝「あぁ、考え事してて……俺の両親、殺されてたんだってな。事故だって聞かされてたのに」
パド「詳細は聞いてないの?」
輝「雰囲気的に隠したそうだったから、深くは……」
その時、つけっぱなしのテレビからニュース番組が流れた。
アナウンサー「最近問題視されている神隠し事件について――」
霊専門家「霊や妖怪……神と呼ばれる存在は実在しますその非科学的な存在が人間に牙をむいていると!私は踏んでおります!」
MCが笑いを含んで次のコーナーに移ろうとするも、専門家は食い下がった。
しかし言葉は途中で切られ、画面は別の話題へ。
輝「あっ、変わった」
パド「ほんとにいるのにね」
輝「しょうがないよ、見えない人はとことん見えないんだから...」
---
輝はスマホを開き、匿名掲示板を眺める。
「霊はまじでいる!」
「妖怪を見たことある!」
そんなやりとりが続く中、妙に目を引く書き込みがあった。
> 「霊能力を育てる学校があるらしい」
誰も反応しないその文が、定期的に投稿されている。
気づけば輝は返信していた。
> 「学校の話が聞きたいです」
次の瞬間、パドが頬を叩いた。
バチンッ!
輝「痛っ!何すんだよ!」
パド「輝!取り憑かれてた。虚ろな目して……」
返信が届く。
> 「やっと見える人が来た」
> 「入学条件は霊や妖怪が見えること。それだけで招待状が届く。時が来れば向こうからな」
輝「なんか曖昧だな……」
次の瞬間、その投稿は跡形もなく消えていた。
輝「消えてる...どういう原理だ?これ...」
---
パド「その学校、噂なら聞いたことある。封を開けた瞬間、校門に立ってるって……帰ってこなかった人も多いって事も...」
輝「怖すぎだろ...」
その時、霊調査の依頼フォームに通知が入った。
輝「……“霊の墓場”の調査依頼?」
パド「あそこかぁ……」
輝「どんなとこ?」
パド「名前通りの墓場じゃなくて、その場に入った霊が忽然と消えるって場所。私が分かるのはとんでもない霊がいるのは確実だろうね」
輝「吸収霊か?」
パド「そう」
輝「俺ら二人だけは危険だな」
パド「そう!まだ人間に実害が出てないなら行かないほうがいい、行っても意味が無いからね」
輝「でも、出るかもしれないじゃん...」
その瞬間、依頼がもう1件入った。
輝「……行方不明者の捜索依頼だ。同じく霊の墓場で」
パド「都合良すぎない?実害がないって言った直後に……」
輝「出たからには行くしかない」
パド「……分かった。でも無理は絶対禁止。危なければすぐ逃げる、その条件なら行ってもいいよ...」
輝「分かってる!」
痛む体を押さえながら、輝は霊の墓場へ向かう支度を始めた。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
今回は「霊能力を育てる学校」の謎が初めて顔を出し、そして不穏すぎる“霊の墓場”の依頼が舞い込みました。
書きながら、私自身も「おいおい輝、まだ安静にしてろって!」とツッコミたくなりましたが、行っちゃうんですよねこの男は。
それと、掲示板の謎の投稿者……完全に怪しいですね。
この学校の情報は、今後さらに重要になってくるはずです。
次回第11話「狩る者」
果たして彼らは生きて帰れるのか――。