表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/39

18 証人尋問3

 チチナ弁護士は、キャンベル婦人に人差し指をつきつける。


「アリシア様に、離婚裁判をするよう提案したのは、あなたかと聞いているんです」


 そんなこと……あるわけないじゃない!


「そんなことしておりません!」


 私の思っていることを、婦人が叫んだ。


「では、この証言をして、あなたはいくらお金をもらったんです? 聖女教会に寄付をするためなんでしょう? 白い結婚なんて嘘のアイデアを教えたのは。代理母をなかったことにして、ガイウス様から慰謝料をふんだくろうと企んでるんでしょう? あなたの発案ですか?」


「違うわよ!」「違います!」


 私と婦人の声が重なった。


「あら、だって。あなたの証言は矛盾だらけじゃない。アリシア様が知能欠陥者? ドラゴンが治した? あはっ。そんなことあるわけないじゃないですか。ドラゴンの癒しの光は、病気や怪我を治すんですよ。不治の病とか、処女膜とか不妊とか、そういうのをね。でもね、欠陥は治せません。だって、それは生まれつきで、病気じゃないんですもの! 生まれ持った個性は、ドラゴンにも治すことはできないんです!」


「それは、聖女様の奇跡の力によるものです!」


「またまた。はぁ。これだから聖女教信者は……。そうやって、なんでもかんでも、聖女のせいにされてもねぇ。実際、聖女は、卵から生まれてなんかないし。聖女は平民で、婚外子だったなんてこと、ここにいるみんなが知っていることでしょう? ねえ、裁判員の皆さん」


 チチナは胸をぶるんと揺らしながら、観客席を振り返った。


「被告弁護人、裁判員に話しかけないでください」


 裁判長の注意に、チチナはぺろりと赤い舌を出した。


「キャンベル婦人、あなたがこんな茶番の証言をしたのは、お金の為でしょう? アリシア様は不妊で悩み、メイドに代理母を頼んだ。でも、奇跡のドラゴンがそれを癒してくれた。自分で子供を生めるようになったんだから、代理母は不要。だから、浮気をでっちあげて、代理母をなかったことにして、慰謝料を請求した。つまり、そう言うことでしょう?」


「違います! アリシア様は本当に、聖女様の奇跡が起きて」


「質問は、これで終わります」


 婦人の言葉をさえぎって、チチナは観客席にお辞儀をした。

 ざわめきが広がる。


「どういうこと?」


「全部、妻の嘘なのか?」


「確かに、ドラゴンが治せるのは、病と怪我だけだって。生まれ持ったものは治しようがないから……」


「しかし、それはただの伝説だろう?」


「どっちの言うことが正しいの?」


 チチナに言い負かされて、婦人は顔を真っ赤にして叫び出した。


「違うのよ! アリシア様は本当に特別なの! お嬢様は、聖女の母になる方なの! 神様のお告げがあったんだから! 汚らわしい男なんて、この世の中に必要ないの。男なんて、全員滅びればいいんだわ! お嬢様は、卵を生むの! これは女性全員の希望なの!」


「静粛に! 証人は退席してください。警備員、彼女を外に出しなさい」


 警備人に引きずられるように、キャンベル婦人は部屋から追い出される。


「アリシア様! 私のかわいいお嬢様! 男なんかに心を許してはいけません! あなたは奇跡なのです! ドラゴンがその証拠! お嬢様が聖女様を生むことは、決定事項です! この国の救世主になるのです! 男なんかに穢されないで!」


 引きずられながらも、婦人は大声で叫ぶ。


「狂ってる……」


「正気じゃない」


 観客たちがつぶやく。

 チチナは、私の証人の信頼性を完全につぶしてくれた。


 ひどい……。


「お嬢様……」


 ルカが青い瞳を曇らせる。

 お願い、大丈夫って言って。いつものように私を安心させて。 

同じように夫に裏切られた妻の短編「やり直しはあなたのために〜裏切られた妻は復讐する〜」を投稿しました。こちらは、シリアスでダークです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ