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4 花の乙女は瓶底メガネの王子を愛で救う

花の乙女は瓶底メガネの王子を愛で救う

平民だけどきゅるるんパワーで愛されちゃう♪


万結が興奮気味に鼻の穴を広げて帰ってきた日に手にしていたゲームがそれだった。


「なんだ、それ?」


呆れて鼻で嗤えば、万結はぷくりと頬を膨らませて俺をねめつけた。


「知らないの?弘毅、遅れてるね!これはね、今や世代を問わずに夢中になる、これぞ王道の乙ゲーなんだから!」


「馬鹿馬鹿しい…!」


「そりゃもう、イケメン祭りの鼻血ブーな逆ハーなんだよ!」


逆ハーて、しかもきゅるるんとか、どんだけダサいんだ、と口にはしないが心でツッコむ。


万結はワクワクを隠すこともなく、頬を緩ませてゲームをセットすると、俺の横にちょこんと座った。

そして楽しそうに内容を話し始めた。


それだけ知っていればやる必要も感じない、と俺は思ったが、あまりにも嬉しそうに話す彼女が愛おしくて俺は万結の肩を抱きながらテレビの画面に視線を注いだ。


懐かしい記憶とともにゲームの内容を蘇らせた。


ゲームの舞台は魔法学園。15歳になる年を迎えたヒロインは教会の認定した魔力の持ち主として、平民ながら入学してきたキャロライン。

お約束の風貌で、ふわふわのピンクの髪にやはり桜色の瞳。くりくりと大きな眼が特徴的な美少女で、小さな鼻と口がいつでもにっこりと弧を描いている。華奢ながら隠れ豊満ボディを持った、ある意味で完璧なヒロインだ。

小さな頃は虚弱な体質で寝たり起きたりを繰り返すような子だったが、12歳を越える頃には嘘みたいに元気でお転婆な少女になった。

それも膨大な魔力のせいで、身体が育つまで内包する魔力の強さに負けていたのだ、と説明があった。


その彼女を愛す攻略対象者はお決まりの男たち。


筆頭が第二王子のアルセール。彼の瓶底メガネにも実は秘密があり、彼は国の運命を握るとも言われる虹色の瞳を持つものだったのだ。

彼は優秀な兄に王太子になって貰いたいと願い、同い年の弟から向けられる憎しみに苦しむ哀しい王子だった。とあるイベントが切っ掛けで我を失い、国を滅ぼす魔王となるのがアルセールのバッドエンド。

彼を癒し、国王へと導くのがメインのゲームだ。


あとは彼の側近で将来の宰相と目される侯爵令息、やはり側近で未来の近衛騎士団長と期待される侯爵令息、生徒会メンバーの男たち、国最強の魔術師とすでに名高い教師、などなどだ。


アルセールルート攻略のあとに出てくる妖精王攻略ルートなんかもあったりして、万結は飽きずに何度も何度もやっていた。

ほとんどのルートを攻略したにもかかわらず万結が唯一落とせなかった対象者がいた。


パトリシアとしてこの世界に生まれ変わった俺はゲームのなかで掠りもしないモブだと自覚があったが、心を燃やして決意する。


トップオブTHEモブのパトリシアだってちゃんとここに生きているんだ。


だったら万結のために俺は彼女が攻略できなかった男を落としてみせよう!男のプライドを賭けて!!


もう3ヶ月もすればパトリシアはゲームの舞台であるデュラント王立魔法学園に入学することが決まっている。


悪役令嬢を華麗に躱し、ヒロインを出し抜き、数ある攻略対象者をすり抜けて、俺は絶対ゲットしてみせる!


待っていろ!!


ダグラス·モーティマー侯爵令息!!!


「ふははははははっ!」


右こぶしを高く突き上げ、左こぶしを腰に当てて淑女らしからぬ高笑いを上げた私を胡乱げに窺うマーガレットは顔色を青くしてアランのもとへと走り去った。


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