代償
代償
勝利の代償は重かった。須納瀬栄人の「才」の量は凡人そのもので独自能力の習得にすべて費やされてしまった。はじめはこの意味をあまり実感できなかったがすぐに違和感に気づいた.
もう何事も上達しないのだ。勉強してもテストの点数は下がるし、アルバイトですらマニュアル通り満足にできなかった。まさに希望はなかった。
「お前ごときがS級亜人を倒せたんだ。それぐらい当然だろ。」
極小蟲は開き直っていた。
さらに、残念であったのは状況が変わってないことであった。悪意の取り除かれた生徒たちは元には戻らなかったし、元凶の草間未来は変わらず教職についていた。
ただ一つ変わったことはこのクラスに転校生、くろが編入したことだ。くろは元気よく今日も手を上げて質問していた。
「先生、わかりません。」
「また後で補習が必要ね。」
草間未来はにこやかに受け答えをする。この学校の理事長となった新のコネで編入してきた生徒を無下にできないため、今日も夜遅くまで補習授業をする心づもりのようだ。
授業が終わり、須納瀬栄人は学校を後にする。岐路につこうとしたとき勇者荒木が現れた。
「1か月の猶予は与えた。戦う覚悟はできたか?」
須納瀬栄人は頷き。前を見る。
凡人須納瀬栄人が仲間に加わった。