脱引籠り
101号室にて浦川七海は苦悩していた。現実の命運を握る決戦にほとんどの異世界人が参加できないからである。亜人迷宮に侵入するカギは悪意値50以上の者でないと起動しない仕様であった。
使える戦力は大きく絞られる。 魔導士いのり、武闘家くろは論外であり、縫目神奈、賢者新はぎりぎり悪意値50に達していた。盗賊ケイト、魔獣使いチカは悪意値100以上の純粋悪であるが御するのは容易ではない。
浦川七海は異世界人で悪意を抱きそうな人物を自身が作成した検索エンジンで探し続けていた。しかし、その努力もむなしく成果はあらわれなかった。
敵の予想戦力値が計り知れないこともあり作戦を綿密に立てたいところだが良い考えは浮かばない。
「七海ちゃんが戦えば万事解決じゃない?」
パソコンの画面に零海が出現する。確かに悪意値100以上の自身は参戦可能である。
「試してみるか。」
七海は立ち上がり、10年ぶりにアパートの外に出る。太陽の光が眩しかったが気にせず神技「物理法則無視」により浮かび上がる。携帯端末を片手にとりあえず強そうな亜人のもとに向かってみる。
標的の亜人はすぐ見つかり、その亜人はどす黒い魔分を大量に発し、悪意の回収をおこなっていた。その魔分量から相当な手練れに間違いはない。
しかし、その亜人は七海の姿を見るや否やその正体に気付き戦意喪失したのか、逃げ出していく。七海は回り込み亜人を殴り飛ばす。
亜人が命乞いをするも構わず、七海は神技「最高に派手な花火」を打ち上げ亜人は宙を舞い散り散りとなった。
七海はつまらなさを感じながらも自身の参戦を決意した。




