仕掛人
神奈はアパートの104号室にて天井人新と対峙していた。テーブルに着く神奈に給仕サリーが緑茶を出す。
「はじめまして。私は縫目神奈です。同じアパートに住んでいながら挨拶遅れました。」
「我は「秩序」をつかさどる天井人、そして貴様の仕掛人の新だ。能力ですべてのことが分かるから何か言いたいことがあるなら手短に頼む。」
「仕掛人ってことはあなたが私を助けてくれたんですか?もしそうならありがとうございます。」
神奈は頭を下げる。
「特に感謝されることはしていない。それどころか恨まれるぐらいが丁度いい加減になるぞ。」
新は冷静に答える。
「零海。次の目標を紹介してくれ。」
「任せて。」
新は携帯端末を神奈のほうに向ける。その画面にはとある老人の顔が映し出させる。
その瞬間、神奈の表情は凍り付いた。
「判事、手塚充。あなたを亜人裁判で懲役刑にした張本人よ。」
携帯端末から案内アプリ零海の声が聞こえる。
少し間をおいてから新が話し出す。
「今回は貴様と2人での討伐だ。最も我は極力戦わない主義なのでほぼ同行するだけだが。もちろん貴様には断る権利はある。ただし、真の職能力市民平等で貴様の可能性をすべて徴収することになる。」
神奈は頭が真っ白になりかける。手塚充は神奈にとって一番恐ろしい存在だった。判決を言い渡された時は今でも鮮明に思い出せる。
神奈は正気を失う1歩手前で踏みとどまり、情報を冷静に整理する。しかし、神奈に正解の選択肢を掴む手がかりとなるものは与えられていないことに気づいた。
「新様。あなたにお任せします。」
一時その場は静まり返る。
「ある意味すごいねこの子。」
零海は感嘆する。
「流石は我が選んだ娘だけのことはある。特に惚れはしないが。我にはあらゆる分岐点の正解が見える。ただ貴様にとっての正解ではないが。」
新は説明口調で話す。
「手塚を討伐しに行くぞ。」
新は席を立ち、上着に袖を通す。
神奈も立ち上がり新についていくこととした。




