最悪の魔物
「本当にこんなところにいるの?」
「あじんいるよー」
神奈の問いかけにいのりが答える。
2人は真夜中に地下通路にいた。ここに亜人が出現するらしい。もちろん人気はない。
灯りはところどころついているが薄気味悪い。怖いものに耐性がない神奈はいのりの後ろをついていく。
「これが初討伐ってハード過ぎない?」
「あれー?なんかおかしー。」
いのりが遠くを指さす。
神奈が目を凝らすと遠くに2人の人影が見える。その内1人は倒れている男の人で立っているのは黒ずくめの少年であった。
「さきをこされたかー。」
いのりは少し悔しがっている。神奈にはよくわからなかったが嫌な予感がする。
少年は近づくと挨拶をしてくる。
「はじめまして。もっとも私はお前らのことは知っているが。この亜人は私がもらった。」
少年はこの世のものとは思えないような声を発していた。
「はじめましてー。すのせえーとくん。いまはなの・わーむってよんだほうがいーのかしらー。」
いのりは相変わらず間の抜けた声で少年に話しかける。
「呼び名などどうでもいい。見逃してくれるのか?」
少年は赤黒い間分を発する。急に息苦しくなってきた。
「いいえ。あなたはつかまえろっていわれてるー。」
いのりは独自能力魔界の門により魔界に繋がる門を出す。これによりいのりは無制限に魔分を使える。
神奈も大天使降臨を唱え戦闘に備える。
いのりは最上級魔法流星群を放つ。大量の星が赤黒い魔分を引き裂き少年は悲鳴を上げる。
「痛いなあ。おい。」
少年が手を振り上げると赤黒い魔分は元に戻り、いのりと神奈に襲い掛かる。
大天使の光で遮ろうとするも隙間を縫ってくるのでいのりは最上級魔法聖域展開で凌ぐ。
神奈も負けじと頭に浮かんできた上級魔法高位天使降臨を唱える。高位天使は無数の光の刃で少年を赤黒い魔分ごと切り裂くがすぐに元に戻る。
「こいつは手ごわい。お前さん頼んだ。」
その言葉が聴こえた直後、魔界の門と天使たちは跡形もなくなっていた。神奈は動揺を隠せなかった。
「これで終わりだ。」
今度は少年らしい声が聞こえる。右手に赤黒い魔分が集中している。もうとどめを刺すようだ。
「うわーん。おにーちゃんこわいよー。」
いのりは突然泣き出す。
少年は意表を突かれ、わずかに動揺する。その隙を突かれいのりの常時能力かわいいは正義で戦意喪失しその場で倒れ込む。
神奈は開いた口が塞がらなかった。