大罪の少女
縫目神奈は路地裏に横たわっていた。生きてはいるが拘束衣のせいで起き上がることもできない。幸い早朝で人がいないが人に見られるとまずい状況である。
彼女はとある亜人規則を破り、亜人裁判にて懲役126年に処された罪人であった。最もいまは亜人ではないので関係ないのであるが。彼女辛かった囚人生活を思い出す。
ことが起こったのは亜空間の維持を請け負っていたとき少年の能力で亜人という種族をはく奪されてからだ。亜空間は崩れ去り身動き取れない格好で現実に放り出されてしまった。本来ならば展示会の運営事務局に転移するはずであるが亜人ではないので中途半場なところにたどり着いてしまったのであろう。
彼女は途方に暮れていると1人の小柄な少女が歩いてきた。少女は麦わら帽子にサングラス、長袖ワンピース、手袋といった肌を極力出さないようなの恰好をしている。
「たすけてほしー?」
少女は可愛らしい声を発する。縫目神奈は頷く。
少女が初級魔法着替人形を使用すると。縫目神奈は瞬く間にTシャツと短めのキュロットスカートの姿になっていた。
「あんまいいぬのじゃなかったのだ。」
少女は呟く。
縫目神奈は起き上がるとお礼を言った。
「ありがとうございます。私は縫目神奈。助けてくれてありがとう。」
「わたしはいのり。れすとらんでもいきましょー」
いのり歩き出す。縫目神奈は特に行く当てもなく、空腹であったのでついていくことにした。
「私お金持ってないんですが。」
縫目神奈は一応確認する。
「くれかあるからだいじょーぶ。」
いのりはブラックカードを取り出す。どうやら普通ではないようだ。さっき魔法を使っていたので異世界人であろうと思った。
2人は高級そうなレストランに入る。席に着くといのりは携帯端末を取り出し、縫目神奈のほうを向ける。
携帯端末にはいのりの面影がある金髪美女が写っていた。
「会話代行アプリIMYUでーす。よろしくー。」
どうやら、この画面の女性が話してくれるらしい。いのりは注文した料理を黙々と食べだす。
「縫目神奈ちゃん。15歳の元亜人ね。私はある人から話を聞いていたの。あなたに使われた市民平等は不完全で成長分岐までは奪われてないの。」
「どういうことですか?」
縫目神奈はIMYUに尋ねる。
「成長分岐は「才」を振り分ける器、その人の個性そのものよ。あなたには無限の可能性が広がっている。」
5歳に大罪を犯し、10年間懲役で希望のない生活を送っている縫目神奈にとって、期待感のこもった声は新鮮なものであった。
「よかったら私の弟子になって一緒に亜人達と戦わない?」
特に行く当てのない縫目神奈は頷く。元々亜人のなかで異端扱いされていたので戦うことにも抵抗を感じなかった。
縫目神奈はとりあえず目の前にある料理を口にする。