表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアル・セイバー  作者: しき
第1章
2/53

不愉快な現実

不愉快な現実

「ふざけるな!」

 荒木は激怒した。

 アパートの大家、浦川七海と金髪碧眼美少女、いのりは鍋をつついているところだった。

「静かにしなさい、近所迷惑。」

浦川七海は窘める。

 ここはアパートの101号室、このアパートには大家以外住んでいる者はいない。

 つっこみそうであったが荒木はなんとか堪えた。

「なんで財布(ウォレット)が1000Nなんだ!」

 荒木は携帯端末の残高表示画面を見せ、亜人の討伐報酬の一億Nがなくなっていることの説明と求めた。

「携帯代、それ定額制ではないんだよね。」

 どうやら多機能型亜人探査DB(データベース)、零海の通信料らしい。

 確かに言わんとしていることはわかるが理解したくなかった。1000Nは中等学校生の平均お小遣い額程度であった。これはあまりもひどい。

「こんなの聞いてないぞ。」

 荒木は浦川七海を問い詰める。

「あなたは未成年、身元保証人のいのりちゃんと契約しているから問題なし。」

 この二人はぐるであった。

 荒木は、怒りに身を任せて鍋が乗っているテーブルをひっくり返そうと思った。

 しかし、いのりの精神系魔法によってその怒りは消えてしまった。

 この部屋には魔分生成器(ジェネレーター)があり、魔分が満ちていた。それを利用すれば上級魔法である喜怒哀楽(エモーション)を使用するのも大魔導士のいのりにとってはたやすいことである。

「ゆるせ、でし。すべてはせかいへーわのため。」

 いのりはもぐもぐしながら話した。

 勇者はあくどい大人に屈した。

「この携帯を解約してくれ。」

「それがないと亜人を見つけることはできないよ。」

 浦川七海は探査魔法が使えない荒木の弱みを突いてくる。

「あいつさえいれば。」

 荒木はもとの世界で出会った、仲間のことを思い出す。

 魔王城の直前まで同行させたのは最上級支援魔法を使える賢者ただ1人だった。彼がいたからRTA(リアルタイムアタック)をするかのように最短ルートで魔王城にたどり着いた。彼がいればこの状況を逆転できる。

「師匠、私の仲間を連れてきてはいただけませんか?」

「いま、すかうとちゅーなのだ。」

 どうやら最初からそのつもりらしい。

 師匠は鍋を平らげるとご馳走様と一言残し転移魔法で消えていった。どうやら、自分のみの転移は詠唱省略できるようだ。

「まあ、冷蔵庫にあるものとっていって。」

 浦川七海は鍋の具材がなくなったことについては申し訳なく思ったのか冷蔵庫を指さした。

 荒木は菓子パンを取り出し101号室をあとにし、102号室で出動を待つこととした。

 荒木の財布(ウォレット)の残高からきっちり100Nが引かれていた。


 








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ