エピローグ
「新。「秩序」の天井人昇格おめでとう。」
「おめでとー」
アパートの101号室にて浦川七海といのりが炭酸飲料を飲む。
「一応感謝する。」
新はそっけなく答える。
「天井人になった気分はどう?」
「特に。まだ目的の過程に過ぎないからな。」
「そっか。それよりあなたも飲みなさいよ。」
浦川七海は新に炭酸飲料を勧める。
「それは新手の嫌がらせか?」
新は水に不純物が混ざっているのは許せない性分である。
「それより貴様とは真逆の存在となってしまったな。「混沌」をつかさどる天井人よ。」
「そーだったのー?」
いのりがわざとらしく大げさに驚く。見た目相応の幼めの言動を心がけているようだ。
「隠している訳ではなかったんだけど。」
浦川七海はあっけんからんと答える。大嘘である。同等の存在になることで初めて気づいたことである。どうやら、天井人の個人情報は万物を知ることが出来る能力をもってしてもわからないことらしい。
「ところでいのりちゃん。荒木は帰ってこれそう?」
「まだかかりそー。だけどきっとだいじょーぶ。」
勇者荒木はその身体を魔人荒木に乗っ取られ、現実と魔界のはざまを彷徨っている。常人ならまず復帰は不可能であるが荒木なら出来るはずである。全く、過保護であるのにスパルタな師匠である。弟子に命を懸けてようやくギリギリの乗り越えられる課題を与えるとは。
「それまであなたの残した置き土産でつないどこうかしら。」
天才浦川七海は新の仕掛けに気付いていた。
「休んでる暇はない。そろそろ出るか。」
新は101号室をあとにした。
ー第1章完ー