策略
再び扉に戻されたくろの目前に勇者荒木がいない代わりに賢者新と盗賊ケイトがいることに気付いた。そしてすべて新の策略の内であることを察した。
「あなた。最低ね。」
くろは率直な感想を述べた。
「最低かどうかは貴様が決めることではない。」
新は冷静に回答する。
くろは盗賊ケイトを睨みつけた。勇者に反発する反逆者の一員であり、元の世界ではあらゆる貴族から金銀財宝を奪い恨みを買っていた大盗賊である。また、その懸賞金は魔王よりも高かった。
「おいおい、そんなに睨むなよ。特に悪いこともしてないのに。今回は雇われただけだから。」
ケイトはにやにやしながら言う。
「それより、賢者さん。勝算はあるのかよお。」
「奴を引きずり下ろすためのシミュレーションは万全だ。そんなことよりもう時間がない。」
賢者と盗賊は扉を開け、姿を消した。
くろは疲れでその場に座り込む。
「零海ちゃんはどこまで知ってたの?」
「あたしもこの展開は知らなかったの。ごめんなさい。もっとしっかりしてればよかったけど。」
零海は申し訳なさそうに答える。
くろは自身の無力さを恨んだ。
一方、堤信吾は混乱していた。
奥の手が破られただけでなく、訳のわからない2人にあの方の謁見を許してしまった。もう流れに身を任せるしかない。
規則に乗っ取り2人を第5階層の審判の間に案内する。
「ネアン様。失礼します。」
「何用か?」
扉を開けると真っ白な空間に天井人ネアンがいた。天井人とは神にも近い存在であり、この世の理をつかさどる存在である。ネアンは「秩序」つかさどる存在である。
「お主たちか。余の展示会を台無しにしたものは。」
「さっさとその席を空けろ。」
ネアンに対して新は強気に言い放つ。
「何たる無礼な!その行いを悔いるがいい!」
ネアンは神技「天罰」を2人に浴びせる。
通常なら絶命を免れないが新は最上級魔法聖域展開を唱えやり過ごす。
ケイトは新の独自能力創造主によって得た使い捨て能力刹那を使用する。この能力によって必ず先制で一撃を浴びせられる。
ケイトは距離を詰め独自職能力心を折るを使用し、いつものごとく小刀を突き立てる。この能力の前ではあらゆる種族であろうと無意味である。
ネアンはあっさりと崩れ落ちる。新は間髪入れず職能力市民平等を使用する。
「地に落ちろ。」




