ハードモード
「さっきのは何だったんだ?」
荒木は堤信吾に尋ねる。
「実は短期間での戦力増強は難しくて。」
案内人堤信吾は答える。
「しかし、こちらも首が掛かってるんで奥の手を用意してます。」
迷路のような第4階層を進みながら堤信吾は言った。
奥の手。こちらの実力を見せてなおそのような言葉を発するとは。嫌な予感がする。荒木は新がいないことを悔やんだ。ただ奴は絶対危険を冒さない。奴が来てないということはそれだけのものだといことだ。
「着きました。このおくに支配人が居ります。」
そこにはゴツゴツした岩に囲まれた広い空間があった。空は赤く染まっている。まるでもといた世界の情景である。そこには1人の少年がいた。
「徳永王司。こいつはやばいかも。」
零海は魔分を感知する機能があり、今までの亜人とは違うことを察知していた。
「2人とも今すぐ逃げろ!」
荒木はこの魔分に見覚えがあった。まさにもといた世界の魔王そのものだ。
「無理だよ。職能力強制戦闘で逃げられない。」
徳永王司は冷たく言い放つ。
荒木は職能力勇敢なる戦士を発動し、一時的に自身の魔分、体力を極限まで引き上げる。そして、職能力伝説の剣で精製した両手剣で徳永王司を切りかかる。
徳永王司は最上級魔法漆黒の渦で荒木の剣技を吸収した。もといた世界であるなら最上級魔法蒼白の渦で打ち消すことができたが今の荒木には使えない。
一方、須納瀬が圧倒的勝利を使用するも、効いてる様子はない。
「こりゃダメだな。常時能力内政不干渉には手も足もでない。」
極小蟲のあきらめたような声が聞こえた。
「おい!魔分量は負けてないんじゃないのか?」
「能力の差が大きすぎる。悪いがお前の人生そこまでだ。」
須納瀬は何もできず立ち尽くすしかなかった。
「お前は誰なんだ?」
荒木は徳永王司に尋ねる。見た目はただの少年そのものである。なぜこのような力を得たのか。特に返答を期待していたわけではないが聞かずにはいられなかった。
「それは僕にもわからない。ただこの世界を支配するために生まれてきただけだ。」
もといた世界の魔王ではないということがわかる。転生の類のものであるとは思うが少年の歳と矛盾はする。それ以前に魔王は魂ごと完全に消し去ったはずである。
くろは攻撃しようとするもすでに上級魔法影縫いで身動きは取れなかった。
「なんで動けないの?」
「魔法が使えない奴にはこいつで十分だ。」
くろは動揺で先制攻撃ができなかったことを悔やみながらも全力で抵抗するが全く手足が動かない。
荒木は魔力を振り絞り初級魔法不滅の炎で徳永王司を燃やす。
徳永王司は痛そうな顔をしながら。漆黒の魔分をまとった槍を精製し投げつける。その槍は瞬く間に荒木に突き刺さった。
勇者荒木はその場に倒れ、くろの悲鳴がこだまする。




