武人
「どうだ。」
「大丈夫。」
荒木は須納瀬に状態を確認する。本人はそう言っているが実際辛そうである。一般人に連続した戦闘はお勧めできない。
「次はくろと2人で行くか。」
「任せろ!」
くろはやる気に満ちていた。2人の共通点は戦闘狂であるということだ。その度合いは違いはあるが。
次に堤信吾に案内されたのは闘技場のような場所であった。観客席が周りを取り囲んでおり、歓声が聞こえる。そして、堤信吾の声がこだまする。
「ついにやってまいりました!異世界人対亜人の頂上決戦!勇者アラン、武闘家クロゼッタ対武人二ル・ウォッグ。」
自己紹介はしていないら恐らく本名を読み取る能力であろう。
目の前には武装した亜人がいる。第2階層の支配人であろう。その身は魔分により精製された鎧と兜で覆われており表情は見えなかった。
「こいつ、結構固いね。」
こうしている間にもくろは1撃をおみまいしていた。その鎧はへこんでいたが瞬時にまた元通りとなった。
「弱点は鎧の継ぎ目だ。」
「わかった!」
荒木の助言を聴くとまたくろは飛び出していった。荒木は初級呪術である再生鈍化を唱えた。
「ははは、わが鎧は無敵なり!」
亜人は両手に剣を精製し、振り回す。その動きは確かに速かったがくろは余裕でかわし攻撃し続ける。島が吹き飛ぶ火力であるくろ一撃を受け続ける奴の鎧は尋常ではない。
「少し本気を出すか。」
亜人は剣を収めるような構えをする。攻撃が必中となる職能力居合である。
荒木が危ないと叫ぶ間もなく、くろは吹き飛ばされた。荒木が慌てて回復魔法をかけようとするとくろが制止するような動作をする。
「わたし、そういうとこ嫌いなんだよね。もとの世界でも雑魚戦しかさせてもらえなかったじゃない。」
くろはよろよろと立ち上がる。
「ちょっと魔分を貸してくれる?」
すごい形相で睨まれたので、荒木は仕方なく強化魔法をくろに使う。恐らく独自能力一撃必殺を使用するのであろう。くろには無駄に「才」は有り余っているので強力な独自能力を習得できた。しかし、本人の魔分量が常人より少ないためこの世の法則を曲げるための魔分量が不足気味であった。
亜人はまたしても居合で迎え撃つ。しかし、その構えをとる前に一撃必殺を受け、その鎧は四散していった。
「この決戦を制したのは異世界人でした!」
堤信吾のアナウンスとともに会場に歓声が沸き起こる。
くろは満面の笑みでその場に倒れていた。