弱者
弱者
異世界人は亜人に返り討ちにされていた。異世界では仕事も無くなっていたところ亜人討伐の求人を見つけ、この世界に飛び込んでみたものの井の中の蛙であった。今相手にしているのはB級の亜人であるが中級魔法や能力を自在に操る。
「どう料理してやろうか。」
亜人は中級魔法火炎弾の詠唱を始める。右手には炎が揺らめく。
異世界人ターニャは目を閉じ神に祈る。熱心な宗教信者なりの足掻きをしていた。
「神様どうかお助けを。」
突然、亜人の右手が爆発した。亜人は悲鳴を上げる。
ターニャが目を開けると目の前に少年がいた。少年は高級そうな腕時計やネックレス、その他金品を身に纏っていた。
「詠唱妨害ごときで暴発するとは。雑魚だな。」
少年はぶつぶつ呟く。
「いいじゃない。たまには。」
超高級案内アプリ零海の声がする。
亜人は怒り狂い、少年に襲い掛かる。溢れんばかりの魔分の鎧を身に纏った姿は鬼の様であった。
それに対し少年が小刀を取り出し突き立てるとその魔分は霧散していった。いともたやすく魔人は倒されたのだった。
ターニャは少年の魔分がほとんど消費されていないことから能力の類ではないのかと思った。
「零海、他の異世界人とは目標が被らないようになっているんじゃないのか?」
「ごめんなさい。最近亜人の警戒が強くてあんまり感知できないの。」
少年はこの場所を立ち去ろうとしていた。
「助けてくれて。ありがとう。お礼をさせてほしいんだけど。」
少年は立ち止まる。
ターニャと少年はレトロな喫茶店に立ち寄る。そこでターニャはアイスコーヒーを二つ注文した後話し出す。
「私はターニャ異世界では聖騎士をやってたの。あなたは?」
「おれはケイト、盗賊だ。なんであんた弱いんだ。」
ケイトは確信を突く。基本的に人の気持ちを考えない。
「無理なお願いかもしれないけどどうやったら強くなれるか教えてほしい。」
ターニャは頭を下げる。
「盗賊に教えを乞うなんて頭どうかしてるだろ。」
「実はこの世界にきてから一度も勝てなくて。一生のお願い。」
ケイトはコーヒーを飲みながら考える。かつての異世界では弱い魔物と戦い、徐々に強くなることができた。しかし、亜人はどの個体もそこそこ強くターニャが倒せる個体と出会う確率はほぼゼロであった。
「ひとつだけあてはある。あんたに覚悟はある?」
ターニャは力強く頷く。
「じゃあ紹介料5億。出世払いでいいよ。」
ターニャから冷汗がにじみ出る。




