遠きにありて思うもの
この世のうちを迷いつつ
胸のうちには穴が開き
形見に思うふるさとは
もはや二度とは戻り得ず
遠きにありて思うとは
かつての人も言いしかど
ついに己の身の上に
彼にたぐえる咎負いき
所詮この世は仮の宿
一時のすみかと申せども
過ぎし日胸に去来せば
後ろ髪ひく思いする
我の惜しむはただ時と
ところのみにはあらずして
忘れ得ぬかの心根と
たどりし思いぞかなしけれ
古里を離れて日と月を
経ればそら似の面影を
形に見るもかなしきと
古き言葉に伝えけり