第39章 モード系の殺し屋たち
俺達は決闘場所へ向かっていた。最寄り駅から、徒歩10分ほど歩くと、目的の○☓ビルが見えて来たのである。ここには高いビルは一つしかないので、間違えるアホはいないだろう。まあ、チューコは間違えるかもしれんが……。
俺は周りを見渡すと、人の気配がなくて、寂しい雰囲気が漂っていた。近くには港があり、ビルの高さに匹敵するクレーン車が目立っていた。
それを見たチューコがビックリする。
「わっわわぁー、大きい車ですね」
「クレーン車だな。これを使って、色々な資材を運んだりするんだよ」
「ふーん、クレーンゲームみたいですね。わくわく」
「いや、ワクワクしねーよ。だって、これから殺し合いだぜ」
俺はビルに向かって、コンクリートの地面を踏みながら歩いていく。おそらく、距離的には300メートル位だろう。ふと周りを見渡すと、工事現場のプレパブが何棟もあった。プレパブの中には、大量の木材や資材などが放置してあった。
そして、その周りには手入れしていない木や草が大量に生えていた。俺がネットで調べた通り、この港は廃墟そのものであった。そして、歩き続けると、ビルの入口が見えてきた。見た目は普通のビルであるが、建設途中なので足場が残っている。
目的は最上階にいる英戸リアンを救出する事である。俺はビルを見上げるが、どう見ても未完成である事が分かる。最上階って言っても、本来ある壁や窓がなく、鉄骨の骨組みしかない状態である。まあ、あそこが一応は最上階にあたるのだろう。
すると、ビルの入口から男達がゾロゾロと出て来た。人数は5人であり、全員が全身黒の服装である。よく見ると、ツバの長いハットにロングコートで揃えている。全員とも背が高い。その中でも、2メートル近い長髪の男が1人おり、そいつがボスキャラ感を醸し出していた。
俺はチューコに呟く。
「全身黒ってモード系かよ。コイツら、ナルシストだろ。なあ、チューコどう思う?」
「兄様も全身黒じゃないですか? アキバ系っぽいですよ」
そんな会話している内に、黒服の男達が近づいて来た。真ん中に2メートルの長髪の男が立って、左右に2人ずつ並んで止まる。
俺は大声を出す。
「俺達がギゾクーズだ。英戸リアンを返しにもらいに来たぜ。お前らが、カロウシとかって奴らか?」
真ん中の長髪男が答える。
「ええ、初めまして……。私達はカロウシの5人衆と申します」
全員がハットを取って頭を下げる。そして、両脇の4人が1人ずつ自己紹介をする。
「セイリです」
「セイトンです」
「セイソウです」
「セイケツです」
ぶっちゃけ、みんな同じように見えるので、名前なんてどうでもいいと思った。最
後に長髪男が挨拶をする。
「私がリーダーのシツケと申します」
俺はシツケに聞く。
「おい、英戸リアンは何処にいる?」
「彼女はビルの最上階にいますよ。ただし、爆弾をビルに仕掛けました。それまでに助けないと、4時頃にドガンと爆発です」
「おいおい、堅気は巻き込まないんじゃないのか? 豊臣は知っているのか?」
「豊臣会長は存じていませんよ。いわゆる、私の独断ですよ」
なんだ、コイツ。雇い主の命令を無視かよ。まったく、意味が分からないぜ。
俺は質問をした。
「なんで、ビルを爆発するんだよ? お前らにメリットがないだろ?」
「ビルの最上階に、カロウシのナガトという奴がいます。私が気に入らないので、さっさと始末したいんですよ。爆破理由はそいつを殺す為です」
ナガト? こいつら以外に、敵がもう一人いるって事だな。ということは、おそらくは敵は全員で6人だけだ。正直、なんとかなそうだな。
シツケはニヤリと笑いながら喋り続ける。
「豊臣会長には、ナガトがギゾクーズに殺されかけた事にします。そして、苦し紛れにビルに火をつけて、堅気の英戸リアンを殺したという、不名誉な死を受けてもらいます。そして、私がギゾクーズを殺して手柄を貰います」
なるほど、ナガトに恥をかきながら、死んでいってもらいたいわけだ。だからって、関係のないリアンを巻き込むなよな。
シツケは陰湿な奴だと思った。
「何で、そこまでナガトが憎いんだ?」
「私が一番強いって事を、豊臣会長に認めさせる為ですよ。ナガトはカロウシでは、3本の指に入る強さなのでね。でかい態度が我慢できないのですよ」
「じゃあ、お前がナガトを直接に殺せばいいじゃん」
シツケは首を縦に振る
「残念ながら、カロウシ同士の殺し合いは禁止なのですよ」
そう言っているが、本音はナガトには勝てないから、姑息な小細工で殺そうとしているのだろう。まったく、ダセー男だぜ。いや、マジで。
シツケが鉤爪をこちらに向けてポーズを決める。
「ナガトを殺した後は、ギゾクーズの首を豊臣会長に届けるだけです。そして、私がカロウシの殺し屋ナンバーワンの称号を手に入れるだけです」
俺は腕時計を見る。現在は3時20分過ぎだから、4時の爆発までは38分って所だな。結局、コイツらを倒さないとビルに入れないって事か……。
俺は派遣玉を取り出す。
「じゃあ、お前らを倒して、ついでにナガトって奴も倒す。それで、リアンを助けるだけだ。もちろん、ビルの爆発する前にな……」
「まあ、口だけなら何とでも言えますからね。じゃあ、そろそろ殺し合いをはじめましょうか?」
俺はチューコに声をかける。
「さっさと倒すぞ、チューコ」
「はい、兄様。行きますよぉおおおおー」
すると、5人衆が襲いかかって来た




