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第38章 カロウシの新キャラ登場

その頃、ナガトは○☓ビルにいた。○☓ビルは港にあるので、海が近くにある立地であった。ビルは15F建ての予定だったが、現在は9Fまでしか完成されていなかった。


これは資金不足で、建設が中止になった為である。なので、鳶職が組み立てた足場が、現在も残っており、鉄製の足場がビル全体を囲んでいる状態である。何も知らない素人から見れば、ジャングルジムに囲まれたビルに見えるだろう。


最上階の10Fの場所は、半分しか施工されておらずに、四方には壁がない状態である。壁はないが、柱になる鉄骨が縦に、数メートル間隔で空に向かって立っていた。


他にも、本来の天井がある部分は、鉄骨が2メートル間隔で横に規則正しく並んでいる。この野ざらしの10Fが実質的な最上階にあたるのだ。ちなみに、いわゆる鉄骨構造の建物である。


ナガトは10Fの天井部分である鉄骨の上に座っていた。近くには天井部分より、高く突き抜けた柱の鉄骨があった。そこに、英戸リアンはロープで縛られており、更に目隠しをされている状態でいた。豊臣の命令で、ナガトがビルに連れて来たのである。


ナガトの目の前には、作業場現場に残されたクレーン車のフックが目に入る。クレーン車のフックの奥には、広大な海の光景が広がっていた。ナガトが巾着袋から煙管を出して、さして綺麗でもない海を見ながら一服する。


そして、ブランコに乗る子供のように、両足を鉄骨からブラブラと揺らしていた。とても、一流の殺し屋とは見えないだろう。


そして、ナガトは少女のような幼さが残る口元から紫煙を噴き出す。

「ふう、潮風が気持ち良いでありんす」

その時、ナガトのスマホが鳴った。

「んっ? 誰でありんすかね?」


ナガトは巾着袋からスマホを取り出した。相手は豊臣会長だったので、すぐに電話に出たのであった。

「どうも、豊臣会長。どうしなんせ?」

「おう、ギゾクーズの居場所を特定するのは無理だったわ。ちょっと、甘く見すぎていたな。向こうにも、頭が切れる奴がいるみたいだぜ」


ナガトが呟く。

「それで、どうしなんせ?」

「だから、そっちのビルで捕まえる作戦に切り替えるぞ。戦闘の準備をしておけ」


豊臣の元々の予定では、ギゾクーズが店舗に忍び込んだら、従業員に捕まえさせるつもりだった。もちろん、失敗した場合も考えていたのである。その場合は、盗ませた封筒に仕込んだ盗聴器で、居場所を突き止めるつもりであった。


しかし、当日は雨で盗聴器が壊れてしまったのである。電話番号はギゾクーズと話をしたいと思って、遊び心で封筒に入れていたのである。まさか、豊臣も本当に電話を掛けて来るとは思わなかったのである。


これは豊臣にとって幸運だった。ギゾクーズを直で潰せるチャンスをもらう形となったのだから……。

まあ、六木が刺されたので、ギゾクーズも連絡しなければならない状態になっただけである。だが、ギゾクーズも豊臣も、お互いに運が付いていただけであった。


この状態をナガトはワクワクしていた。

「じゃあ、このビルにギゾクーズが来るでありんすか?」

「ああ、今から2時間後に決闘という形になったよ。応援として、5人衆と呼ばれる兵隊を送りこんでおいたよ。まあ、好きなように使ってくれ」


ナガトは不満を持った。なぜなら、自分ひとりで戦うのが好きなのである。

「会長、わっち1人で十分でありんす。心配でありんすか?」

「ああ、今回の件についてはな……。まあ、ギゾクーズの女には注意しろよ。俺の感だが、あの女はナガトと同じタイプの匂いがしたんだよ」

「わっちと同じ?」

「ああ……。だから、5人衆と協力してやってくれ。これは命令だぞ」


豊臣はモモチの交渉術に恐怖を覚えた。駆け引きの判断力から、タダ者ではないと判断したのである。だから、5人衆をナガトに預けたのである。しかし、ナガトは1人で仕事をするのを条件で従っている。元々は人と関わるのが嫌いであり、風来坊でフワフワと生きるのが好きだからである。


しかし、あの自信家の豊臣が、そこまで言うなら命令を聞く事にした。

「会長、分かったでやんす。ところで、獲物は生け捕りでありんすか?」

「出来れば生け捕りにして、世間に顔を公表してやりたい。しかし、無理なら殺して構わないよ。所詮は裏社会の人間だしな……」


そして、豊臣はナガトに強い口調で言った。

「ただし、堅気の英戸リアンは解放してやれよ。六木を刺した奴とはいえ、堅気を直接殺すのは、俺の流儀に反するからな。まあ、落とし前は1ヵ月の監禁で許すつもりだ。ナガト、分かったか?」

「ええ、了解でありんす」

「じゃあ、良い報告を待っているよ」

そう言うと、豊臣の電話は切られたのである。その瞬間、ナガトは後ろに気配を感じた。


ナガトは振り向く事なく、後ろの人物に声をかける。

「主ら、5人衆でありんすか?」

声の先には、5人の男達が天井部分である鉄骨の上に立っていた。


全員が黒いハットを被り、黒いロングコートを羽織っている不気味な集団だ。彼らはカロウシのメンバーで、5人衆と呼ばれている暗殺集団であった。両手の黒い手袋には、アイスピックのような鋭い鉤爪が装着されていた。もちろん、10本全ての指にである。


彼らは鉤爪で敵の喉を切り裂くのが得意であった。まるで、その武器はエルム街の悪夢の怪人のように見える。


リーダーらしき、長髪で一番背の高い男が返事をする。

「そうです、ナガトさん。豊臣会長に言われて来ました」

「わっちはわっちで勝手にやるから、主らも勝手にしたら良いでありんす」

「そうですか、そう言って頂けると幸いです。私達もそのつもりでしたので……。みんな、行きますよ」

そう言うと、5人衆は鉄骨から飛び降りて、床に着地してゾロゾロと歩き出す。


彼らは下の階段の方へ向かっており、1Fでギゾクーズを待ち伏せする作戦を立てていた。5人衆はナガトがカロウシの中でも、殺しで3本の指に入っている事が気にくわなかった。いわゆる嫉妬だ。


そこで、今回は名をあげるチャンスだと活き込んでいたのである。ナガトよりも、早くギゾクーズを倒して、自分達の手柄を上げたいのが本音であった。つまり、カロウシ内でデカい面をしたいのだ。


そのナガトは5人衆を、鉄骨の上から見下ろしながら、ギゾクーズの事を考えていた。まずは、高みの見物をしよう思ったのである。ギゾクーズが5人衆に倒されるレベルなら、自分が戦う必要がないと思ったからである。


ナガトは海を見て、煙管の灰を下に捨てた。それから、約2時間後にモンゴ達が来たのである。これから、ギゾクーズとカロウシの壮絶な決闘が始まろうとしていた。

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