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第2章 モモ姉は怖いぜ。

モモ姉は食事を終えると新聞を読みだした。

「チューコを見ていると心配だよ。危なっかしい娘だからね。高校に馴染めるといいだけどね」


俺はコーヒーを飲みながら、モモ姉を安心させるように声をかける。

「俺も2年生だ。モモ姉、チューコの面倒はちゃんと見るよ」

もちろん、嘘だ。モモ姉の機嫌取りで言っただけだ。


しかし、モモ姉はキョトンとした顔をした。そして、声を出して笑った。

「アッハハハハハ、2年生だって? モンゴ、これを見てないのか?」


モモ姉は笑みを浮かべながら、俺に茶色の封筒を渡してきた。差し出し人は新宿歌舞伎町高等学校と記載されている。俺の通っている高校だ。受取人は俺の名前だ。何だろう? 俺は封筒を開けると、そこには衝撃の事実があった。便箋の1行目にこう記載されていた。ー留年決定のお知らせー


俺は声を漏らす。

「えっ? 俺が留年だと……どうして?」

モモ姉がツッコミを入れてくる。

「どうして、じゃねーよ。モンゴは学校サボりまくってだろ。まあ、自己責任だな」

「いやいや、ギゾクーズの仕事や修行もあったし……。俺だけのせいじゃないだろよ」

「私はちゃんと休みも与えたけどね。チューコは高校受験もこなしていたし、条件はほぼ同じだろ。それにモンゴはゲームばかりしていただろ。美少女が沢山出て来る気持ち悪いゲームをさ……。ニヤニヤしながらさ……」


ああ、ドキドキメモリアルという恋愛ゲームにハマっていたな。でも、留年まで学校行くのは嫌だな。バカにされるは嫌いだしな。

「まあ、いいや。俺は留年なら学校辞めるわ。後輩にタメ口で呼ばれてくねえしな」


モモ姉はテーブルを強く叩いて大声を出す。

「だめだ、学校を辞めるのは許さないぞ」

「いや、俺の勝手だしな。いや、マジで辞めるわ」

「おい、卒業までは通う約束だよな?」

「ああ、去年の話ね。今年の話は今年の事情で……」

そう言う終わる前に、目の前のモモ姉が消えた。ヒュンという音がした気がする。


次の瞬間に、モモ姉は俺の背後に立っていたのである。それから、俺の首に包丁が突きつけられていた。


そして、俺に質問してきた。

「モンゴ、学校行く? それとも地獄へ行く?」

「がっ、学校行くよ……。分かったよ、学校に行けばいいでしょ。とにかく包丁をおろせよ、危ないし……」

「何か偉そうでムカつくな。やっぱり、地獄に行って方がいいっぽいね? さよならモンゴ……」

この人はマジだ。ハッタリは使わない、早く謝らないと死んでしまう。


俺は必至に声を出す。

「学校です、学校へ行かしてください。行きたくてたまんないです。お願いします。もう1回、1年生が出来て嬉しいです。僕は感謝の極みで一杯です、モモ姉様」

「よし!」

そう言うと、俺の首から包丁の刃が離れていた。何がよし!だよ、包丁はアブねーだろ。まったくもって、恐ろしい女だよ。モモ姉は……いや、マジで。


その時、チューコがバタバタと走りながらリビングに戻ってきた。そこには制服姿のチューコがいた。紺色のブレザーに緑リボン、スカートはチェック柄だ。ポニーテールの留め具は白いシュシュだ。ちなみに、ギゾクーズの仕事中は黒いシュシュを愛用している。


まあ、どうでもいい話だ。どうやら、チューコは制服姿を自慢したいようだった。

「モモ姉さん、制服は似合ってますでしょうか?」

モモ姉はチューコの頭をクシャクシャと撫でながら褒める。

「いいね、すごく可愛いね。学校中の男子もほっとかないよ」

「えへへ、そんな事ないですよぉー。てれてれ」


チューコのポニーテールが、犬の尻尾のように嬉しそうに跳ね上がる。ちなみに、俺は女のこういうやりとりは嫌いだ。理由は面倒だからだ。


モモ姉が俺にも意見を聞いてきた。

「なあ、モンゴもそう思うだろ?」

「いや、俺は2年だから制服は見慣れているし……別になんとも」

俺は鼻くそをほじりながら答えてやった。


すると、チューコのポニーテールがしょんぼりしていた。それを見たモモ姉がアドバイスをしてくる。

「そこで、素直に褒められないからモテないのさ。一生彼女出来ないな、こりゃ……可哀相な人生だ」

「別にモテたくねーよ」

「ふん、可愛くない奴だな。チューコみたいな素直さが足りないよ」


いやいや、チューコはアホなだけだ。男子高校生で素直な奴なんて気持ち悪いだけだろう。そんな事を考えていると、チューコが近づいてきた。


それから困り顔で聞いてきた。

「兄様、私の制服姿はダメですか?」

目がウルウルしている。うっ、そんな目で俺を見るなよ。


くそ、仕方ないな。褒めてやればいいんだろ。

「スゲー似合うよ、入学おめでとう。チューコ」

「わーい。ありがとうございます。兄様」

それを見たモモ姉がうんうんと頷いている。


モモ姉は時計を見ながら言う。

「そろそろ、出かけないと間に合わなくなるよ。今日は入学式だろ」

「おう、分かっているよ」


俺も制服に着替えるとするか。サンドウィッチを口に頬張りながら、急いで自分の部屋に戻った。そして、黒いズボンを履いて、ワイシャツを着てネクタイを締める。上着のブレザーを着こんで、学校指定の鞄を持つ。


一応は武器である派遣玉も鞄に入れておく。それから、鏡を見て寝癖を直してから1Fの玄関に向かった


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