第34章 【大悲報】ギゾクーズ殺人事件
そこには、とあるニュースの特集がされていた。見覚えのある雑居ビルの前で、スーツ姿のアナウンサーが大声を出していた。
ー昨夜未明、新宿区歌舞伎町の飲食店で、成人男性2名が何者かに襲われました。男性は刃物のようなモノで刺され、病院へ搬送されましたが、2名とも意識不明の重体です。男性は新宿区在中、会社経営者の六木種馬さん(30歳)と同従業員の堀若人さん(30歳)と判明しました。
なお、犯行現場にはギゾクーズの小判らしき遺留品を発見しました。遺留品から、犯行はギゾクーズの可能性が高く、警察は行方を追っておりますー
何だよ、これは? 他のチェンネルを回しても、ギゾクーズ殺人事件として報道されている。
更に、チューコはスマホの画面を見せる。
「兄様、ネットも炎上中です。大変ですよ」
そこにはギゾクーズの心無い悪口が書き込まれていた。
ー【悲報】ギゾクーズ一般人を刺すwww
ーまあ、結局は犯罪者ってことだよな。警察、はよ捕まえろや。
ーギゾクーズは極刑でオナシャス。
ーワイ、ギゾクーズのグッズを処分することを決意。
あんだけ、ネットでヒーロー扱いだったのに、一晩で殺人鬼扱いになってしまった。くそったれがぁ。
俺は壁を叩く。
「くそっ、誰かが……罠に嵌めやがったな。モモ姉どうするよ? このままだと犯人になっちまうぜ」
「ああ、分かっているよ。でも、ギゾクーズの無罪を証明するものがないんだ。今は情報を集めるしかないよ。まあ、犯人を捕まえて、無実を証明しなければギゾクーズは終わりだよ」
モモ姉の言う通りである。ギゾクーズはブラック企業撲滅の広告搭だ。その広告搭が、殺人をしたらヒーローどころではない。日本中の敵という認識を植え付けてしまう。
俺はモモ姉に疑問をぶつける。
「だけど、犯人なんて見つかるのかよ?」
「まあ、少し落ち着けよ。昨日盗んだ封筒の中に、こんなモノが入っていたよ」
モモ姉は1枚の紙を見せる。
そこには、電話番号と豊臣という名前の書かれた紙があった。
「モモ姉、これは?」
「分からんが、豊臣秀人の電話番号だと思うよ。電話してみれば何か分かるだろうな。怪しいけど、今はこれしか手がかりがないよ」
確かに、電話番号はギゾクーズを潰す罠の1つである可能性が高い。逆探知で居場所を特定する気か? 会話の流れで情報を聞く気か? 本当の目的は分からない。だが、他に策がないので電話するしかないだろう。
俺はモモ姉と目を合わせる。
「モモ姉、俺が電話するよ。これは俺の仕事だ」
「ああ、分かった。ただし、モンゴが対応出来そうになかったら、私が代わりに交渉するよ。それでいいか?」
「ああ、いいよ」
「モンゴ、熱くなるなよ。豊臣は相当に頭が切れる男だ。あくまでも冷静にな……冷静にだぞ……。絶対に向こうのペースに飲まれるなよ」
「ああ、分かっているよ。モモ姉」
すると、モモ姉は逆探知不可の電話を持ってきた。そして、その電話をテーブルの上に置く。それにスピーカーをつけて、全員で会話内容が聞けるような状態にした。
モモ姉もチューコは息を飲んで、テーブルの上の電話を見つめる。俺は豊臣に電話をかけた。すると、5コール後に相手が出た。




