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第31章 悪夢

そして、無事に帰宅すると、1Fの喫茶店の店内に入ったのである。すると、モモ姉がいた。


俺はモモ姉に証拠の封筒を渡す。

「モモ姉も中身を調べてくれ。封筒は濡れているけど中身は無事なはずだ。一応、中身は調べたけど本物だったよ。それと、今日はもう寝るわ。マジで体動かないからさ……」

「分かった、今日は休んでいいよ。ご苦労様」


俺もチラッと確認したけど、ブラック居酒屋の残業の証拠になるモノで間違いなかった。念のために、モモ姉にも確認してもらえば安心だ。俺は2Fへの階段を上り、自分の部屋に入ってベッドにダイブした。


もうだめだ、今日は疲労がピークの限界を超えている。俺は服を脱いで、布団の中にモグラのように潜り込む。そういえば、六木がギゾクーズと勝負するように、命令を受けていたって言っていたな。


俺達に証拠を渡すチャンスを与えるなんて、自分の首を絞めるだけだろう。あれは結局何だったんだろう? 豊臣の罠だったのかな?


まあ、いいや。もう、何も考えたくないぜ。とにかく、疲れたのであった。明日の事は明日考えよう。そう思っている内に、睡眠の世界へ旅立ったのである。


俺は夢の中で、両親が死んだ事を思い出していた。おそらく、6歳くらいの頃である。それは高速道路にトラックが突っ込んで、多数の死人が出た巻き添え事故である。


これは死者が14人も出ており、日本の交通事故でも最悪の事件であった。これは、車同士の衝突が多すぎた為、救急車が現場に来るのが遅かったのが原因である。その為に死傷者が多かったのだ。しかし、当時は自分がその事故に巻き込まれるとは思わなかった。


俺の乗っていた車は大破して、運転席の親父は即死だった。母親は俺を庇うようにして、抱きしめていてくれた。当時の光景が目に浮かんだ。俺と母親は変形した車の中に閉じ込められていた。母親が口と頭から血を流していた。息も荒くて、ゼエゼエと肩で息をしている。


こんな時に空を飛べたら、母親を助けられたかもしれない。だが、俺は足が挟まり、動けずに母親が弱っていくのを見ているだけだった。その1時間後に救出されたのだ。


もし、救急ヘリコプターが、先に動いていれば助かってかもしれない。それは結果論でしかないかもしれない。その時、空が飛べればなぁ……。


これは夢だと分かるが、いつも頬を濡らしてしまうのである。俺は弱かったガキの頃は嫌いなのだ。ふと、チュートとモモ姉の顔が浮かんだ。もう、俺は家族を誰も死なせないと心に誓った。


そこで、誰かが俺を呼んでいた。おそらく、現実世界のモモ姉だろう。

「モンゴ、モンゴ起きろよ」


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