表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/53

第24章 居酒屋ブラックの悪党ども

1人は社長の六木だ。事前に手に入れた写真で見たので間違いない。元ミドル級のボクサーだけあってガッチリしている。身長は180センチ以上で、体重80キロは超えているであろう。それと、顔もイケイケの強面だ。


ストライプのスーツ姿に、腕には高級そうな王冠マークの腕時計をしている。六木の対面に座っている男はスキンヘッドだった。新宿店の店長の堀という男だ。上下がジャージ姿であり、肩幅も広くて体格が凄い事が分かる。この2人は暴力に慣れているのが分かる。


六木と堀は幼馴染で、豊臣から店をもたないかと誘われたらしい。豊臣は野心のある若者には出資をしていた。自分の若い頃と被るのと、イケイケな若者を応援したい2つの理由からであるらしい。


水商売の経験のある六木は話に乗ることにした。元々の才覚があったのか、3年で居酒屋を10店舗も増やしたのである。ただし、無茶な経営は従業員にしわ寄せがいくことになる。従業員の中には過労死や鬱病などになった者が多数いる。


ルリが調べた資料にも、杉森盛信という23歳の青年が過労死している。それでも、経営が許されてしまうのが現在の日本である。


第二、第三の死者が出る前に、ブラック企業を潰すのがギゾクーズの仕事だ。俺は下の会話に耳を傾けた。どうやら、過労死をした青年の話をしているらしい。


六木が口を開く。

「あの、リアンってメンヘラ女が来やがった。過労死を認めて欲しいだとさ」

「またかよ、過労死した奴と付き合っていたらしいな。名前は杉森って社員だった奴だ。まあ、真面目だけが取り柄って感じだったな。それで、彼氏の敵討ちのつもりかよ。本当に下らねえ女だな」

「ああ、面倒くさいぜ。杉森も死ぬ位なら辞めればいいのにさ。本当にバカだよな。仕事なんて沢山あるのにな」

「でさぁ、その件だけどさ。昨日の夜、記者が取材に来たぜ」


六木は慌てて尋ねる。

「おいおい、堀ちゃんよ、そういう事は早く言えよ。豊臣会長から圧力を掛けているから、マスコミは動けないはずだぜ。どこの新聞社の野郎だよ?」

「いや、女子高生だよ。制服からブキコーの生徒だな。ほら、歌舞伎町近くにある高校だろ?」

「ああ、あそこの高校か……。それで、何で女子高校生が過労死の取材なんてするんだよ?」

「いや、新聞部の部活活動の一環らしい」


六木は自分の高級腕時計を眺めながら鼻で笑う。

「ふっ、でもガキだろ。何も出来ないだろ?」

「いや、何処で手に入れたか分からないけどな、過労死した杉森の勤務日記のノートを持ってきやがった。働いた時間も残っていて、これは証拠として労災認定されちまうよ。そしたら、この店は終わりだな。さすがに豊臣会長でも庇いきれないだろう」

「つまり、裁判になったら負けて、テレビやネットで晒されて店が潰されちゃうって事か?」

「だろうな、陰湿なマスコミが嫌がらせ来る可能性は高い。今はそういう時代だからな」


六木は怒りを露わにして、テーブルを壊れるほどの強さで叩く。

「ふざけるなよぉおおー。俺達がどんなに苦労して店舗を増やしたと思ってやがる。クソガキに潰されてたまるかよ。そいつの要求は何だよ?」


堀は右手の指を2本立てる。

「ああ、要求は2つだ。1つ目は謝罪を遺族の墓の前ですること。2つ目は支払われるはずだった残業代を全従業員とバイトに支払うこと。覚悟を決めたら、いつでも連絡してくれだそうだ。電話番号も丁寧に置いて行きやがったよ」


六木は椅子から立ち上がり、自分の後ろにあるロッカーを殴る。凄まじい衝撃音が部屋に響く。そして、スチール製のロッカーはアルミ缶のように凹む。やばいな、さすがにプロのミドル級のパンチだ。そこいらのチンピラのパンチ力とは全然違うな。


あんなの喰らったらダメージは計り知れないぞ。俺は腕力には自信がないのだ。隣のチューコは震えているようだった。しかし、こいつらが要求なんて聞く相手じゃないだろうよ。


六木は声を叫ぶ。

「クソ女がぁあー。残業代全部払えだって? そうしたら、結局は破産するしかないじゃないか? どっちにしろ、会社は終わりじゃねえかよ」

「そういう事だ。男が日記を書いているなんて想像つかねえよ」

「でもよ、証拠の日記を盗めばいいだろ? そしたら問題ないだろ」


堀は溜息をつく。

「六木さぁ、甘く見すぎ。何にしろ、証拠を持って1人で乗り込んでくるような女だぞ。だったら、証拠をコピーしている可能性があるだろ? 普通の女子高生の行動力じゃねえよ」

「じゃあ、泣き寝入りかよ。ふざけるなよ」


堀はニヤリする。

「バカ、そんな訳ないだろう。逆に脅してやればいいのさ。証拠を提示出来ないようにな」

「脅すってどうする気だよ? 何か良いアイディアがあるのかよ?」

「いや、結局は女だろ?」


しばらくして、六木は冷静さを取り戻して理解する。

「なるほど、そういう事か……。その女は可愛いのか?」

「アイドル並みに可愛いぜ。まあ、すぐに会わせてやるぜ」

2人は顔を合わせてニヤリとする。


こいつら、ルリを襲うつもりだ。それをネタに裸の写真でも撮って脅すつもりだろう。堀はスマホで電話をする。おそらく、会話内容からルリを呼び出すつもりだ。近くで張り込みをしているから、来るのに10分も掛らないだろう。どうする? 


すぐに飛び出してコイツらを倒すか? いや、倒すのに時間がかかりそうだ。しかも、その後に金庫を開けて逃げる時間を考えると不可能だ。それに、ルリと鉢合わせしてしまったら正体がバレる可能性が高い。


いつも学校で会っているのだから、ちょっとした仕草が命取りになるかもしれない。それに感も鋭いから危険すぎる。


そうだ、俺からルリに電話して危険だから来るなって連絡するか?

いやいや、俺がココにいるって証明するものだ。俺はどうしたらいいんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ