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第19章 正義って面倒なもの

モモ姉は話しを続ける。

「モンゴ、部活で一緒のルリちゃんって、1年生の時のクラスメイトだろ?」

「そうだよ、新聞部の部員だ。才色兼備の優等生だよ」

「ああ、あのテレビで取材されていた娘か……。今風の可愛い子だよね。私も見たけどアイドル並みの子だね。まあ、チューコ程じゃないけど……」

「ああ、顔はいいけど、性格はじゃじゃ馬だよ」


モモ姉は2本目のビールに手を付ける。

「ぷぱー。ところで、モンゴはルリちゃんって子と仲良いのか?」

「まあまあだな。普通の友達って感じだよ」

「いいけどさ、ストーカー事件を解決した子なんだろ? 少しは気をつけろよ。普通の女子高生とは頭のキレが違うんだからな。ギゾクーズってバレるなよ」

「それがさ、ギゾクーズの正体を暴こうとしているらしいんだ」


俺は部室で話した内容を話した。それはルリが張り込みをする件である。

すると、モモ姉は困った顔をする。

「あっちゃー。次のターゲットが居酒屋ブラックなんだよ」


俺はチューコと顔を合わせて同時に叫ぶ。

「えっえええー」

モモ姉は呟く。

「それにな、今月中には任務をしないといけないんだよ。ルリちゃんと鉢合わせにならない事を祈るしかないね。大丈夫かな?」


チューコがモモ姉に聞く。

「ルリさんが張り込みをするのは1か月間だけなんですよね? だったら、1か月後に任務を実行すればいいんじゃないですか?」


モモ姉はビールを飲みながら、チューコの意見を否定する。

「それは無理だ。残業代の改残データが消される可能性が高い。それに隠し口座を定期的に変えている。現在は新宿店の店舗に隠してある情報をつかんである。だけど、1か月後がどうなっているか分からないよ」

「という事は、今月中にやるしかないなって事だな」

「兄様、やりましょう。ルリさんに見つからなければ問題ないですよ」


話をまとめるとこういうことになる。今月中に居酒屋ブラックに忍び込んで、残業の改残データと隠し口座を盗む。それを、バイトや社員の口座に残業代を振り込む。


決行の時間は閉店後の夜だ。その時に、ルリが外で張り込んでいる可能性があるので見つからないようにする。まあ、俺達は店内に忍び込むので大丈夫だろう。それから、モモ姉はギゾクーズの目的について語った。


俺達のボスは徳川家門という男らしい。目的は豊臣秀人が率いるブラック企業であるブラックカンパニーの壊滅である。ただ、壊滅させるわけではなく、徐々に追いつめるのが目的である。


そうしないと、豊臣を殺しても、次の悪党が会社を継ぐだけで、ブラック企業はなくならないからである。まず、若者にブラック企業の偉い奴が転落していく様を見せつける。


そして、ブラック企業へ就職をしたくなくなるように洗脳する。そうする事により、ブラック企業そのものを世間から、否定する価値観を若者に植え付けたいらしい。そして、若者にブラック企業に就職せずに、健康で希望を持って生きてほしいみたいだ。


最後は若者が過労死、ハラスメントによる自殺など無くしていくのが目的だ。まあ、悪を滅ぼしたいって考え方は俺も同じだ。俺は自分の仕事をこなすだけだ。そして、俺の両親を殺した運送業者もブラックカンパニーのグループ会社であるらしい。


つまり、ブラックカンパニーを潰す事が敵討ちに繋がるのだ。依然としてやる気が沸いて来た。ギリギリまで、俺に敵討ちの相手の情報を教えなかった理由を理解した。


昔の俺だったら、直接に豊臣を殺しに行っていただろう。でも、それだと根本的な解決にはならないのだ。あくまでも、世間にブラック企業の否定を洗脳するのが目的なのだ。


だから、悪党が滅びゆく光景を見せなければならないのだ。正義って面倒なものだな。



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