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第10章 名探偵ルリ

その頃、ルリは新聞部のエースで活躍していた。中学時代から、ネットに自分の書いた記事をアップしていた。ネットからの拾い上げの記事ではなく、自分の足を使って調べるのでアクセス数も多かった。


父親が大手の新聞社に勤めており、それを真似て情報を集める為には何でもした。潜入捜査、聞き込み、現場調査など大人顔向けの行動をしていた。ある日、クラスメイトの女子がストーカーに狙われていた。


そこで、その女子は頭の切れるルリに相談をしたのだ。内容はネットで嫌がらせ、脅迫状、無言電話などが繰り返されているらしい。もちろん、警察には相談したが、事件が起こらない限りは何もしてくれない。


だから、俺もクラスメイトとして犯人を捜す事にした。まあ、目の前の同級生をほっておけなかったからだ。すぐに調査をすると、バイト先の店長が犯人だと分かったのである。


行動が過激になると殺人まで発展してしまうので、警察に捕まえさせる方法を考えた。俺が捕まえたら、テレビなどが来て目立ってしまうから、ルリを利用した。さりげなく、ルリにヒントを与えて推理させた。


すると、簡単に犯人までたどり着くことが出来て、ストーカー店長は逮捕されたのである。おそらく、時間の問題でルリ一人でも解決出来たと思う。ともかく、これはテレビの取材に取り上げられたのである。マスコミは美人だから顔出しを要求した。


しかし、取材に支障が出るとルリはやんわりと断ったのである。だが、クラスメイトの1人がネットにルリの顔写真をアップしてしまう。インターネットで、美人女子高生ジャーリストとして人気が出てしまうのであった。他校からのファンも増えてしまったが、ルリ自身は興味がなさそうだった。むしろ、邪魔という感じであった。


それからしばらくして、ルリは新聞部への勧誘してきた。

「モンゴ君、あなたどうやって、店長が怪しいと思ったの?」

「いや、たまたま帰り道に、ストーキングしている店長を見ただけだよ。

まさか、本当に犯人だと思わなかったけどね」


俺はそう適当に誤魔化したが、ルリは疑いの目をする。

「ふーん、あなた新聞部に入らない? とりあえず、部室に1度に遊びに来てみてよ。別に無理に入らなくてもいいからさ」

「まあ、1度位ならいいけど」


俺は新聞部に興味はなかったが、学校一の美少女と話してみたいと思った。健全な男子高校生なら分かるだろう。狭い部室で男女が2人で、ムフフな展開があるかもしれないという期待があったのだ。


しかし、そんなエロゲー的な展開にならないのが現実だ。クソ現実って悲しいよね。なので、俺は新聞部に入る気はサラサラなかったのであったが……。しかし、新聞部の部室に行くと、通常では手に入らない情報が沢山あった。


ルリは新聞社に勤める父親の部屋から、未発表の情報を勝手に持ち出していたのである。その結果、部室には警察関係者しか知らない情報が山ほどあった。ギゾクーズにとっては、これほどの情報源はない。新聞部に入ればタダで情報が入る。俺は迷わずに新聞部に入る事を決意したのである。


話は現代に戻る。

ルリは真剣な顔で質問してくる。

「モンゴ君は、ギゾクーズについてどう思うの?」

「ああ、ネットで色々と犯人考察サイト出ているよな。やっぱ愉快犯じゃないか? だって、犯行した後にギゾクーズと彫られた小判を落として証拠を残していくらしいぜ。そんな事をしてもリスクが多いだけじゃん。だから、自己顕示欲の強い人間の犯行かな。つまり犯人は若い奴じゃないかな」

「そうね、若い奴っていうのは正解だと思うわ」

「なんで、そう思う?」


ルリはノートパソコンのキーボードを叩きながら答え始めた。

「今までの、ギゾクーズが犯行を行った場所を考えると分かるわ。普通の人には忍び込むには難しい所にも、難なく侵入している事から、身体能力は相当高いと思われるわ。つまり、20代~30代だと思われるのよ」

「まあ、10代の可能性だってあるだろ?」

「それはないわ。こういった高度な犯行を出来るのは10年以上の経験がないと厳しいわ。まあ、幼い頃から特殊な訓練をされたという話ならありえるかもしれないけどね。そんな漫画みたいな10代を過ごす人なんてありえないでしょう?」

「まっ……まあね」

まあ、目の前にいるんですけどね。漫画みたいな10代を過ごしている男がね。


ルリは推論を続けた。

「でも、目的が分からないのよ」

「それは新聞にも載っているじゃないか。現代のロビン・フッドってさ。悪人から金を奪って、弱者に金を配るという世直しが目的なのだと思うぜ」


これは真実である。俺もモモ姉から義賊はそういうものだと聞かされている。俺は卑怯な奴が良い目にあって、弱い人間は嫌な目に合うのが許せないので、ギゾクーズの仕事には誇りとやりがいを持っている。


もちろん、親の仇でブラック企業を潰すのが目的だけどね。まあ、結局は世直しが目的みたいなもんだ。しかし、ルリはノートパソコンを、180度回転させてモニター画面を見せきた。

「モンゴ君、これを見て。何か気が付かないかしら?」


俺はノートパソコンのモニターを覗き込む。そこには、俺とチューコが忍び込んだ組織や会社一覧が記していた。先日の闇金業者ももちろんある。


ルリの奴は一体何を言いたいのだろう?

「でも、新聞にも載っている情報で、別に特に問題ないだろ」

「それが、あるのよ、株式会社ブラックカンパニーって知っている?」


もちろん知っている。都心から田舎まで店舗があるアパレル系の会社だ。CMとかでもやっているので、日本人で知らない人を探す方が難しいだろう。貧乏人から金持ちまで利用した事はあるはずだ。


俺は質問に答える。

「まあ、いわゆるアパレル系の会社だろ。CMとかで有名な企業じゃん」

「ええ、そうね。会長の名前は豊臣秀人。1代で会社を大きくしたから、一夜城とも呼ばれているわ。ギゾクーズに襲われた人間は、この豊臣秀人に関係ある人物ばかりなのよ」

それは俺も知らない情報だ。偶然じゃないのか? モモ姉からも聞いてないし、ルリの推理に興味が出来てきた。


しかし、俺は疑問をぶつける。

「ルリの推理が正しいなら、マスコミが豊臣秀人を取り上げるだろ? だって、同じグループ会社が襲われているだからな。でも、ニュースでは名前が一切出てないじゃないか?」

「私はマスコミを黙らせているだけだと思うわ。豊臣秀人は政治家にも顔が広いからね。日本で逆らおうとする人間はギゾクーズくらいでしょ?」


なるほど、権力者にはマスコミも逆らえないからね。与党の政治家がマスコミを支配しているのは真実だしな。

「なあ、豊臣秀人に復讐とかじゃないの? だから、関係ある人物を襲っているとかさ」

「だったら、豊臣秀人を直接に襲えばいいじゃない。ギゾクーズの技術位あれば暗殺とかも出来るでしょう? でも、そうしないのは理由があると思うのよ」


たしかに、ルリの言う通りだ。こんな、まわりくどい方法をすれば、いずれ捕まるリスクが高くなるだけだ。まあ、全国のブラック企業を潰すのは物理的に不可能だ。それはモモ姉も分かっているはずだ。一体、俺とチューコに何をさせたいんだ?


それに豊臣秀人も、自分に関係のある人間が、襲われているのは気がついているはずだ。動けない何か理由があるのかな? もしかして、俺の聞かされていないギゾクーズの目的があるのかもしれない。

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