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太陽の魔女  作者: 重山ローマ
第一章 太陽の欠片編
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孤独なトウソウ

 

 灯篭とうろうは、買ったばかりの帽子を深くかぶり、人の波に流されていく。


 どれだけの時間が経っただろう。

 あおいと別れ、異常な大きさの欠片を顔に埋めた少女と男の二人組を見送ったあの日から、どれだけの時間が――。


 灯篭はただ一人、怯えるように視線を流し、少女を追っている。

 怯えながらも、彼は彼なりに、戦いを続けていたのだ。


 とはいっても、彼には、戦う手段がない。

 欠片を二つ持って持っていたが、一つは砕けてしまった。

 少女から身を守るため、灯篭は無意識のうちに、太陽の欠片に願ってしまったということだ。

 しかし、これまで欠片が砕けるところを見たことがなかった。


 灯篭は考える。

 なぜ、欠片が砕けてしまったのかということだ。

 そもそも太陽が砕けたもの――だから、それがさらに砕けたところで妙ではないのかもしれないが、試しに欠片をアスファルトに叩きつけても、割れることはなかった。

 そもそも、砕けた欠片は、砕けたという表現も間違っているように思える。


 粉々に、目に見えなくなったのだから。


 だから、どちらかといえば、砕けたというより、消えてしまったと考える方が正しいのかもしれなかった。

 そう考えてみると、灯篭は答えに近づいた気がしたのだ。

 欠片にあった魔力が失われたから、消えてしまった――そうに違いない。

 願いを実現することが二回目だからではない、そう考えるべきだと灯篭は思った。


 欠片に願うべきかと灯篭は考える。

 いなくなった葵を探すために使うか、見失った二人組のために使うか、それとも、まだ見ぬ敵から体を守るために使うべきか。


 まだ決めきれない灯篭は、ほんの少し痩せてしまった腹を撫でて、ハンバーガーショップの前を通り過ぎる。


 あまりに時間が過ぎてしまった。最悪の事態も考えなくてはならないだろう。


 仲間になった葵が、すでに、何者かに殺された可能性。


 つまり、灯篭は仲間もいないたった一人の、ネギを背負ったカモのような存在になっている可能性だ。

 いや、それは可能性ではない。

 葵は少なくとも、灯篭のすぐそばにはいないのだから。


 彼は格好の的だ。


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