表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の魔女  作者: 重山ローマ
プロローグ 太陽の魔女
32/80

歩み寄る観察者 ⑥

38


 湯船から出て髪ゴムを取った後、あさひはもう一度シャワーを浴びた。

 やっと自由になった髪の毛は、湯の流れを追うように背中を這う。

 それはきっと彼女の使命の時が近づいてきているからなのだろう――どれだけ温度を上げても冷たいままの湯は、彼女の体を結局強張らせるだけなのかもしれない。

 もうひとつの水の流れは聞こえず、あさひはシャワーを止めて息を吸った。


 彼女がタオルはいらないと言ったのは、それができるからである。

 確かに魔力は消費するけれど、それは誤差にすぎない。

 ほんの数分時間があれば回復する消費量だ。

 缶を破壊したことと同様、それは魔法というには小規模すぎる魔力行使である。

 全身の魔力を一時的に活性化させる――ただそれだけのことだ。


 燃えるように一瞬だけ浮き上がった髪は、また背を這う頃には乾ききっていて、体には水滴ひとつ残っていない。

 足の裏だけはまた濡れてしまうだろうけれど、それは彼から受け取ったタオルを使えば済む話である。


 あさひは暖簾を潜ると、まだ熟睡のおばちゃんに目を止める。

 まだ寝ているということは、彼はまだ出てきていないと思ったのだろう。

 あさひは外に出てぼんやりと空を見上げる。

 彼が出てくるまでそうして待つことにした。


 真っ黒の雲が月を隠そうとしている。

 また強く雪が降るかもしれないが、どれだけ待っても、空木木葉があさひに声をかけることはないだろう。


 だって空木木葉は、彼女わたしの側にいるのだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ