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<<第一章:雨の日の太陽>>

※誤字脱字が多く見られることがます。もし、発見されたかたは是非教えてください。

※もし、ご不明な点がありましたら、質問を受け付けています。


 

   ” うわぁ、雨降ってきた ”


 ゴロゴロという雷鳴とともに、横殴りの雨粒が窓ガラスを叩きつけている。ここ三日間雨が降り続いていて、高校生活初日にしてはあまりよいスタートとは言いにくい日だ。

 もう四月だというのに、冬の名残を感じるさせるような寒さ。でも、極度の暑がりの俺にとっては、暖かいよりかは寒いぐらいがちょうど良い。



 始業式が終わった後、早速ホームルームがあるそうなのだが......。なんと、先生はそこで早速自己紹介をしろと言ってきたのだ。


   ” はぁ?なんですって? ”

俺は極度の、しかも重度のコミ症である。そのため、スーパーの店員さんに商品を渡すことはもちろん、級友に話しかけることすら滅多なことがないとできない。そんな俺にとって、この難問は鬼畜すぎる......。俺は今、この高校生活初日にして、高さ10000メートルはあろうかという高い壁に直面してしまったのだ。くっそー、とてもじゃなく登りきれねぇ!ああ、今後どんな難関が待ち受けているのだろうと考えると、先が思いやられてしょうがない。


   ” むっ、無理がある。そっ、そんなことを急に言われても...... ”

なんとか理由をつけて適当に誤魔化そうと、必死で逃げ道を探した。しかし、どの方法をとっても一回は人と話さなければいけない......。


   ” くっそー!俺はどうしたらいいんだ!このままだと、俺は終わってしまう!わずか16歳にして命を落としてしまうのか!?...... ”

自分で感じることのできるぐらい早くなっていた胸の鼓動は、異常なほどだということがはっきりわかった。緊張しすぎて、考えよとしても全然考えられなかった。


   ” ああ、本当にどうしよう。もうおしまいだ......。俺は終わってしまうのだ......。 ”


 その時だった。一人の女子生徒が俺に話しかけてきた。その瞬間、いままで感じていた胸の鼓動がいつのまにか聞こえなくなり、謎の安心感を覚えた。


「ねえねえ、どうしたの?そんな絶望的な状態に陥ったような顔して......。あっ!もしかして、この後のホームルームの自己紹介のこと?人前で話すのが苦手なタイプ?」


   ” ずっ、図星だ! ”

俺ってそんなにわかりやすいのかな?っていうか、今気づいたけど、クラスのみんながこっちを見てくすくす笑ってる。やっぱりわかりやすいのか、俺って......。しゃべれないから無駄に表情に出ちゃってる......的な感じなのかな?......って、そんなことを考えている場合じゃない!

再び、胸の鼓動が早くなり始めた。しかし、今度は異常なほどにはならなかった。その女子生徒がまた、話かけてきたのだ。


「君の名前はなんていうの?私は、桜本 さくらもと かおり。よろしくね!」

「ああ、えっと......、その、あの、田辺たなべ 駿也しゅんやです。よっ、よろしくお願いします」

「うん、じゃあよろしくね、俊ちゃん!」


   ” しゅっ!俊ちゃん!? ”

 お互いが会ってわずか30分も経っていないというのに、俺のことをあだ名で呼ぶというコミ力の凄さ!なんとも恐ろしい。俺は、去年の一年を費やしてやっとのことで人と話せるまでになったというのに!彼女はそれをすんなり、しかもわずか30分足らずでこなすとは!もう、あのレベルに行くと化け物だよ......。化け物は少し言い過ぎたとしても、本当に驚いた。こういう化け物がいるんだと思うと......、これは失礼、こういう凄いコミ力を持った人を見ると、世界にはいろんな人がいるんだなと、改めて人の多様さを身に染みて感じた。

 というか、すごい緊張してしまった。自分の名前を言うだけのことなのに、何でこんなに緊張するのか自分でも不思議に思う。


   ” やべぇ、まだ緊張してる。どうしよ本当に。一対一で話すだけでこんなに緊張して、本当に自己紹介できるのかな?ああ、もうどうしよう! ”

またもや、絶望的状況に追い込まれた俺に、天使のような囁きが聞こえた。


「先生!初日にしていきなりの自己紹介は、きつい人もいるんじゃないでしょうか?」

「ああ、まあ確かにそうだったな。すまない、じゃあ次のホームルームの時に変更しよう」


   ” ああ、天使だぁー! ”

なんと言うことか、僕の状況をみて薫さんが先生に言ってくれたのだ。あぁ神様よ、なんて幸運を我に与えてくださったのだろう。一生をかけてあなたに感謝申し上げたい!



「これで良い?さすがに次までには出来るようになるでしょ!」

「うん、多分。あっ、ありがとう」

「いいえ、クラスメイトだもん。助け合わないとね!これから一年間よろしく!」

「うん、よろしく」


 彼女はそう言うと次々にクラスメイトの方へ行き、話しかけていった。

 まだ、灰色の空では雷鳴がなり続け、窓を叩きつける雨の音はいっそう増していった。しかし、そのせいなのだろうか。俺には、クラスメイトと話しているときの彼女の笑顔が、久しぶりに見る太陽のように見えてしまっていた。

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