第05話 平和の崩壊
マモルがフェイルを倒して以来、ミリが忽然と森に姿を現さなくなった。
さっぱりミリが来なくなってしまった事にアークは今にも泣きそうな顔をしてマモルに尋ねる。
「マモル、僕ミリに嫌われちゃったのかなぁ」
「嫌われるような事してないなら、大丈夫だろ」
アークは少しほっとした様子で、落ち着きを取り戻すと今度はミリに何かあったんじゃないかと心配を始めた。
マモルはそれについては何も答えなかった。 喧嘩別れをしたわけではないし、急に来れなくなると言うのは何かあった可能性が高い。
ただ、会えない以上はこれ以上心配のしようはなかったのだが、アークは思いついたように提案する。
「そうだ、北の門を超えてミリに会いに行こうよ」
「さすがにそれは辞めよう。 帰って来れなくなったらそれこそ、アークの両親が心配するだろ?」
「……それはそうだけど。 ……でも、ミリがこっちに来れたんだ。 僕だってあっちに行けるよ」
「バカ! ミリは魔王だぞ、権力があるんだよ。 それに対して俺らはただの村人だぞ。 どうやって通るんだよ」
マモルとアークが討論をしていると、北の大地の空から黒いなにかがこちらへと向かってきているのが見えた。
最初は何か分からなかったので、討論を止めぼーっと2人は暫く眺めていたが、やがてあの黒いなにかの正体に気付くと、全力で村に向かって走り出した。
だが、上空にいる魔物の方が早く、下にいる2人を追い越して南へと向かって行った。
「マモル、何で魔物が?」
「分からない、けどまずいぞあの方向は俺らの村がある」
それからマモルとアークは無言で走り続けた。 ようやく後5分で到着すると言う所で2人は走るのをやめ、やがてその場に立ち止った。
「マモル、村が燃えてるよ……」
「あぁ、そうだな……取りあえず、今は生きる事を優先しよう。 木の陰に隠れよう」
足がおぼつかないアークを支え、木の陰に隠れて、燃え盛る火が消えるのをただ待った。
次第に火は勢いをなくし、マモルとアークの所からは見えなくなったので、再び村へと駆け出した。
村に戻ると、そこは地獄かと思うほど、悲惨な状態であった。
家は全て焼け落ち、焼かれた人は最早誰かすら特定が出来ない程であった。
一応確認する為、マモルとアークはそれぞれ自分の家へと戻っていったが、すぐに引き返し合流した。
「ジーニはダメだった。 顔は分からなかったけど家にいたから多分ジーニだ」
「僕の所も駄目だったよ。 2人いたから、多分お父さんとお母さんだと思う。 僕達これからどうしようか?」
マモルはどうしたらいいか、分からずその場にしゃがみ込みただ燃えている村を眺めていた。
アークも同じでマモルの横に座り込み、村の最後をただ見届けていた。
やがて、完全に火は収まり、村はこの時点をもって消滅した。
暫く村の最後を見届けていたが、アークは立ち上がった。
「僕はミリを探しに行きたい」
「だったら、まずは学校に通おう。 俺らはまだ子どもだ。 まずは多くの事を学ぶ必要がある」
「そうだね、僕らまだ知らない事だらけだ。 ここから南にいけば学校がある都市に辿り着くよ」
「よし、そこに行こう。 だが、まずは村の皆には悪いが金目の物は全部持っていこう。 代わりと言っては何だが全員お墓を作ってから行こう」
「そうだね、その方が村の皆も喜ぶよねきっと」
それから、村の焼けた人々を全員引っ張り出して1つの場所に固めた後、村の皆を骨になるまでしっかりと燃やした。
その間にマモルとアークは村の真ん中に穴を掘り、骨となった村人を全て同じ場所に埋めた。
その後、森から取ってきた大きな木で十字架を作り、村の真ん中の皆を埋めた場所に立てた。
そして、マモルとアークは皆に向かって両手をつけて安らかなる祈りを捧げた。
「これで、皆安らかに眠れるよね」
「あぁ、後はお駄賃として村の金品貰って行こう。 都市へ出発だ」
マモルとアークはその後、村の全財産を集め、村を出た。
その後、都市へと移り住んだ2人は村の財産を使い小さな家を買い新たな生活を始めた。