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2 カミサマのたね

「つーまーりー、その石はアンタの力の源で、アンタの神としての力が詰まってるの。アンタが一人の神である証拠であると同時に命そのものなの」


 私は頭1つ分背丈が低いアキリアに引っ張られながら白一色の廊下をペタペタ歩く。


 うーん、色は白っぽい

 なのに、不思議な感じに光を反射してる

 完全に白って訳じゃなさそうだけど、なんだろ、これ

 にしても、やっぱ裸足冷たいな


 当の本人は全く違うことを考えていた。


「聞いてんの、クレフェール?」

「やだなあ、アキリアのありがたい助言を右から左に聞き流すわけないじゃないの」

「聞いてなかったのね?」


 ムッ、とクレフェールを見上げて目一杯睨み付けた。

 だが、それでもクレフェールは全く違うことを考えていた。


 なんかちっちゃい女の子が拗ねてるようにしか見えないんだよねえ

 ちょっとカワイイんだけど、この上目遣い

 美幼…美少女にだけ許されるこのプクッと膨れたほっぺとかすごい突きたい

 プニッてしたい


「アンタ今失礼なこと考えなかった?」

「気のせいだよ」

「あと、アタシはアンタより先輩なんだから、『さん』くらい付けなさいよ」

「まあまあ。アキリア、クレフェール、もうすぐ広場に着くわよ。クレフェールは最初のお仕事をしなくちゃ」


 私はポロロニルやアキリアと共にたわいない話をしながら後ろを歩いていた。


 神様になっちゃいました!って判明した後、軽く混乱なんかしたりして、夢でも見てるんじゃないかと頬をつねったりしてみたものの、痛かっただけだった。

 だが、そこで私。

 私が本当に神様になっているとわかったが、だからなんだって話。ぶっちゃけると、「わー、私ホントに神様になっちゃったんだー」程度の緩い感想しか浮かばなかった。

 神様になったにしては、なんとも呆気ない反応だと思う。しかし、

「なってしまったものは仕方ない」

 それが、私という人物の基本理念だった。


「ポロロニル、それ、一応教育係だから引っ張ってきたけど、役に立つの?邪魔じゃない?」

「それもそうねえ。じゃあ、アキリア。ダムソールの(シード)に入って原因を片付けてきてくれる?」

「わかったわ。ちょっとアンタ!『発芽』は大変なんだから、ポロロニルの言うことをよく聞きなさいよ。ダムソール行くわよ」


 ポロロニルが引きずっていたダムソールの襟を掴みアキリアが分かれ道まで連れていった。ポロロニルは笑顔で手を振って私に向き合った。


「ごめんなさいね。ダムソールの(シード)にちょっと問題が重なったみたいで」

「いやあ、気にしてませんよ。ところで教育係ってなんですか?」

「その名の通り、新人神様に色々教えてあげる神様達のことよ。もともと誰かが用事で抜けちゃった時のために教育係は数人いるのよ」


 へえー


 ポロロニルと話をしていれば、なんか広いとこにでた。ポロロニルと私は近くのベンチに座った。ふむ、以外と座り心地がいいじゃないの。


「まずは最初のお仕事、種の『発芽』よ。種には神様の力がぎゅって込められているけれど、その量には限りがあるの。アキリアも言っていたように、種はあなたの命。だから、無くなっちゃうと神様としての能力も失っちゃう」


 ほおほお


「それを防ぐために、あなたの種を成長させる……つまり、種をただのタンク状態から、自動で神様の力を増やしてくれる装置に変化させるのよ」


 ふむふむ

 それが最初のお仕事ですね

 確かにアキリアの言ってた通り大事なことか


「ちなみに、『発芽』も(シード)の力を多く消費するから、なるべく早くしなければならないの」


 下手に力が減ると発芽できなくなっちゃうのかな?

 しっかし、足冷たいな

 もろ素足なんだけど

 白ワンピと種だけって

 最低限のものしかないという

 んむ?


 いつの間にか足が冷たくない。下を見ると薄い青のパンプスがフィットしている。


「あら、さっそく力が使えたのね」


 ポロロニルが関心したように誉めてくれた。


 いや、えっ

 足冷たいって思っただけで?

 さっき発芽に神様パワーを多く使っちゃうとか言ってなかったっけ?

 あっさり使っちゃたよ


「えっこれいいのこれ。使っちゃったよ神様パワー」

「さすがに一回だけなら大丈夫よ。力を使うのは想像するだけでいいの。それと同じ要領で『発芽』させてみて」


 そっか

 おk、マイ世界作っちゃうぞ

 どうせだしRPG的な感じとか良さげじゃね

 エルフとか魔法とかスキルとか

 夢が広がりますなあ

 うふふ

 でも世界作るってどうイメージすればいいんだろ

 わからん

 前世だと、なんか、こう、爆発っぽいなんかから宇宙が生まれたとか聞いた気がすんだけどな

 なんだっけ

 うーん

 あっそうそう思い出した

 ビッグバン


パンッ


「うおっちゃい!」


 破裂音とくっつけていた手のひらに突然熱を感じた。と同時に虚脱感。


 ぐへぇ

 ねえちょっとポロロニルさん

 言ってよこんなこと起こるなら

 変な奇声出ちゃったじゃんか

 なぜ破裂したし

 爆発イメージがダメだったのこれ


「無事に発芽が終わったみたいね。破裂音が聞こえたけれど、何をイメージしたの?」

「大爆発的なはじける何かを」

「あらまあ。大丈夫?」


 やはりビッグバンイメージがアウトだったらしい。


 手のひらから熱が引いてきた

 相変わらず(シード)に変化ないが、なんだろ

 マイ世界出来たのか?


 相変わらず、(シード)はキレイな色のまま変化がない。


「じゃあ、まず発芽した(シード)の中に入ってみましょうか。発芽したばかりの(シード)には、本人しか入れないから、私の今から話すことをよく聞いてね」

「はーい」




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「…思ったより何にもないじゃん」


 見事に何もない空間でガッカリした。

 とりあえず(シード)の中に入ってみたけど、まわりは真っ暗だった。たまになんか光るものが横切ったりするけど、それ以外なにもない。生まれたばかりの世界だから仕方ないと思うべきか。


「おっと忘れるとこだった。よいしょ」


 ここに来る前にポロロニルに言われたとおり、(シード)を掲げた。


「『台座の間』、創造」


 パッと光ったかと思うと、私が神様となって最初にいた場所…つまり、『台座の間』が作られ、そこに瞬間移動する。白い一室で真ん中にポツンと台座が設置されている広い空間だ。


「なんか、最初にいた場所そのまんまじゃん」


 だが忠実に『台座の間』を再現できるとは流石

 神様パワー、マジでチートすぎる


 そして、一際高い場所に(シード)を置く。これで、私の神様パワーはこの世界の成長と共に補充されるらしい。私もこれで名実ともの神様になっちゃったわけだ。全然実感ないけど。


「えっと次は、そう、『時の歯車』だ。創造」


 真っ白な空間にかわいらしいサイズの歯車が表れた。歯車を回す取っ手も小さい。ポロロニルいわく、これも発芽と同じくらい大事なものらしい。


『『台座の間』に(シード)を置いたら、次は『時の歯車』。これは、世界の進む時間を制御するための『神具』よ。自分の世界の時間を常に意識して一定の間隔で動かすのは難しいもの。だから、それを自動でやってくれる装置を生成するの。できたばかりの世界は時間が暴走状態になっているから、まずはそれを制御しましょう』


 ちなみに、『神具』とは、自分の権限の一部を扱いやすく実体化ものだそうだ。


「これを止めるのか…」


 できたばかりの『時の歯車』は生成直後から扇風機の羽のごとく高速回転しだした。この歯車の状態こそ、ポロロニルの言っていた時間の暴走状態なんだろう。


 なんか、ぶーんって低い音も聞こえるけど、幻聴じゃないよね

 まさに、今、聞こえてるよね

 しかも心なしかふんわり風が吹いてる気がする

 この中に手を突っ込むのは勇気いるぞ…

 私のきれいな手がみじん切り待ったなしとは


 止めるのもダメっぽい。なぜなら、この世界と連動している『時の歯車』は、この私の神様パワーの生成スピードも兼ねているからだ。止めると神様パワーの生成もストップする。これから大量の神様パワーを使うのに、供給がストップしたらそれはもう光の速さで底を尽きる。感覚っていうか、これはもう直感で分かる。


「…後回しでいっか。ポロロニルは生命が生まれるには物凄く時間かかるって言ってたし」


 私は扇風機と化した目の前の暴走歯車を早々に放置して、台座に目を向けた。


『時の歯車が安定したら、次は神様を生み出しましょう。ああ勿論、私達のような神様ではなくて、少し低級になる、『眷属神』の方よ』


 眷属神は、『時の歯車』などの『神具』の管理や、私の助手を勤めてくれるそうだ。


 鞄持ち的な感じ?

 たしか、眷属神を作るのも今まで通り神様パワーを使うだけでいいって言ってたよね

 やっぱ神様パワー、チートすぎる

 できないことなんてないじゃないの、これ


 私はそんなことを思いながら台座の前に立って手を掲げる。ちなみにこのポーズ、特に意味はない。なんとなくだ、なんとなく。

 気分は3分クッキングのあれだ。


 さっそく眷属神を生み出しましょう

 やり方は簡単

 ①台座の上の(シード)から多めに神様パワーを引き出しましょう

 ②光る玉っぽいのが出たら、こんな人出てこないかな~って期待しましょう

 ③名前をつけてあげましょう


 以上

 早っ

 3分どころか3秒で終わっちゃったよ

 まさか眷属神を生み出す作業が3分クッキングより早いとは思わなかった

 これじゃあ眷属神が気軽にポンポン作れちゃうよ

 あ、でもダメだ

 結構コストかかる


 引き出した神様パワーに比例して強力な眷属神が出てくるそうだ。今回は最初っていうのもあって、期待から結構多めに神様パワーを使っている。もう一人生み出すのは神様パワーがもっと溜まらないとダメそうだ。


 まだ神様パワーがなんなのか、理解できないんだよなあ

 比較対象が無いのも原因だよね

 アホなほどコストがかかるかわりに恐るべき速度の時間短縮を可能にしてるのかな?

 全部私の予想だけど

 それはともかく


「さあ出でよ!眷属神 『シシェル』!」


 後で「これ、他に誰かいる時に叫んでたらすっごく痛い目で見られそう」とか思った。


 台座の上に浮いた神様パワーの塊は、一際眩しい光を放ったかと思うとヒュッと消えてしまった。変わりに台座の上にいるのは、私が最初に持っていたものと同じ(シード)を膝に乗せた十代半ばほどの美少女だった。パチパチと瞬きを繰り返す瞳は夕暮れの茜色、髪はさらさらしていてミディアムくらいの青みの強い紫色だ。


「う、うおぉ…これは、予想以上に、美形…」


 そういえば先輩方も皆美形だった

 鏡見てないからわからないけど、多分私も美形に振られるんじゃなかろうか

 もしかして、神様ってみんな美形なの?

 というか、神様になってから美形にしか遭遇してないし、なんか落ち着かないんだけど


 「まあいいか」と気を取り直し、とりあえず自己紹介をすることにした。


「えーっと、私はみ…クレフェール、です。あなたを生み出した神様なんです。で、あなたはわたしの眷属神。私のお手伝いをしてもらいます。そんなわけで、これからよろしく、シシェルちゃん」


 そう言って私は右手を差し出した。


 あっぶない。あやうく前世の名前を言いかけた。なんか途中で噛みそうになったけど、なんとか言いきった。


 こっちの名前は早く慣れなきゃダメだな

 それに私は上司になるわけだけど、やっぱ最初の仕事仲間とは仲良くやりたいよね

 フレンドリーで明るく!

 あと、取っつきやすくて頼もしい感じ?

 そう見えてると良いんだけど…


 私は右手を差し出したままそんなことを考えていた。だがおかしい。私の手は握り返されることなく空中に固定されている。


 あれ?

 おかしいな

 ここは「よろしく」的なあいさつを受けて私の手を握り返される感じだと思ったんだけど

 あれれ?

 私の右手が空中で迷子なのはなぜ?


 私が笑顔を固定したまま頭の上に「?」を浮かべたまま疑問に思っていたが、その疑問はすぐに解消された。


 私の眷属神 シシェルは、ふんわりと穏やかな笑みを浮かべたが、そのきれいな茜の瞳は、なぜか死んだ魚のような目をしている。

 シシェルは、声変わりをする瞬間を止めたような幼い少年のような声で私に告げた。


「クレフェール様。………私は男です」


…ふぁっ!?


 私の初めての眷属神、なんと男の娘でした。




抹茶の粉で味付けした餅って意外と合う。うまし。


 あっ、上のは個人的な呟きなんで気にしないで下さい。もう一話登校しようかなって思ってますが未定です。

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