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あと4回コンティニューできるドン! 〜司法試験2016〜  作者: 甲男(25歳、非純粋未修ロー卒、GPA2.0)
9/10

司法試験に落ちるということ

司法試験に落ちた。


合格発表の時間はバイトをしていた。

パートのおば……お姉さんたちから「裏行って見てきていいよ」という優しい言葉をもらって有難くスマホを取り出した。

電源を入れてネットを開いて、合格者の番号がずらりと並ぶpdfを開く。

一度見て、

ああ、ないな。

と、どこかわかっていたことのように受け止めた。


もう一度見て、

やっぱりないな。

と、ああまさかそんな、いや、ワンチャンあったんじゃ、なんてぐるぐる考えて、

深呼吸して、

そっとスマホの電源を落とした。


「あと一年お世話になります」と周りに報告すると、

残念だったね、

来年は受かるよ、

などと声をかけてもらい、

上司からは「よかった! 助かる!」と、もう少し言いようがあったのではないかという反応をもらった。


夜に父から「君の番号はどこにあるんだ」と聞かれ、

「ないよ」と答え、謝罪した。

母が「私が不甲斐ないばっかりに」と泣きそうになっているのを見て、胸が痛んだ。

自分はとんだ親不孝者だ。



落ちてすぐは「まあそうだろうな」「あと八か月頑張るか」「予備校申込みに行かなきゃ」と達観と前向きが併存して、

徹夜明けのハイテンションのようだった。


数日たって、色んな人に落ちた報告をするたびにじわじわと毒が回り、

受かった同期が合格祝賀会やイベントへ行くのを見送るほどに、どんどん、どんどん、どす黒い気持ちが増えていった。


なぜ受からなかったのか。

努力が足りないのは客観的に分かっていた。

それでも主観的にはできることはやったつもりだった。

受かりたかった。

無能の烙印を押された気がした。


接客バイトをしていなければ病んでいたと思う。

働いて、人とふれあって、「ありがとう」を言い合って、それによって承認欲求が満たされているのは明らかだった。


落ちた同期が「泣きすぎて頭が痛い」と連絡してきた。


少しだけ、羨ましかった。


彼はまだ泣き方を覚えている。

ちゃんと人間なんだ、と。




この「あと4階コンティニューできるドン! ~司法試験2016~」は次の記事でおしまいです。


短答の成績と一緒に論文の成績を載せる予定です。

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