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たのしいゆめ  作者: 蒼翳
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第二夜

虚空を撞木鮫だの提燈鮟鱇だのが泳いでいる。

アスファルトは昨夜の娼婦の喘ぎを吸い込み、電柱は酔払いの吐瀉物を崇めていた。

少年は机で溺れ死のうとしている。

しかし私は涸れた排水管に眠る五十年前の新聞の写真でしかない……

私は決して過去の人間ではない。

私は決して過去の人間ではない。

私は、決して、過去の、人間ではない。

困った事に先刻よりアノマロカリスの群れに睨まれてしまっている。

困った事に先刻より……私を過去の人間と罵る星々が在る。

私は決して過去の人間ではないというのに。


アノマロカリスは謂う。

『お前は漂流した瓶に過ぎない』


虚空には畸型の魚が泳ぐ。

アスファルトは処女の悲しみを内包している。

電柱は汚物を崇拝しては無意味な音を出す。

少年は机で何度目かの溺死を果たした。次彼はどう溺死するつもりだろう。


しかし


私は


涸れた


排水管に


眠る


五十年前の


新聞の


写真に





すぎないのだ。

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