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警察庁異世界犯罪特別捜査班  作者: 名梨権ノ兵衛
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SS 勇者様の内政チート?(2)

大変遅くなってもうしわけありません。

SSといいながら短めにまとめることがどうしてもできません。

バカ殿様(志村君)視点の話としてもうしばらく続きそうです。

バカ殿様は変身したファランシア姫に一目ぼれ?


「ファラさん、大丈夫ですか。」


 沢渡さんが心配そうにベンチにうつむいて座っているファランシア姫の顔を覗き込んでいる。

 

「ちょっと問題だなあ。」


「まさかここまで目立つとは思わなかった。」


 秋山君たちが眉をひそめながら周囲を見回した。

 僕たちの周りには黒山の人だかりができているのだ。

 

 日曜の歩行者天国でファランシア姫は一際人目をひいて、大勢の人達がぞろぞろと後を付いてきたのだ。

 これほどの人ごみに囲まれたことがなかったファランシア姫は気分が悪くなってしまったらしい。

 広場のベンチに腰かけて休ませたものの、僕たちはどうしたものかと思案に暮れてしまった。

 

 周りを取り囲む人々はみんなファランシア姫をタレントかモデルと思っているようだ。

 

「姫さん、綺麗だもんな。」


「確かにそうだけど、この状態はちょっと異常じゃないか。」


「髪の毛のせいよ。室内で見たとき淡い金髪だと思ったんだけど、太陽の光にあたったら、反射の具合で明るい金色や銀色に変化するんだもの。」


 実際、ファランシア姫の髪は少し動くたびに金銀の波をうっている。

 柔らかな亜麻色の髪と思っていたのだが、こうして見ると豪華な王冠を付けてるように目立つのだ。

 向こうの世界ではこんな見え方はしなかったのにどうしたんだろう。

 

「でも伯母さんは何も言わなかったよな。」


「ええ。こんなに目立つなんて、橘検事なら一言注意してくれると思うんですけど。」


「申し訳ございません。」


 ファランシア姫は本当に申し訳なさそうに僕たちに謝った。

 今にも泣き出しそうな顔だ。

 

「姫様が悪い訳ではありませんから。」


「そうですよ気にしないで下さい。」


 ファランシア姫は何度かためらったあげく、とても言い難そうに口を開いた。

 

「橘様は、『魔道師が4人もいるんだから何とかしてくれるわ。』とおっしゃってました。」


 ファランシア姫はそう言うと、とても気まずそうに再びうつむいてしまった。

 それを聞いた秋山君が顔をしかめながらつぶやいた。

 

「伯母さん。確信犯かよ。」


「出来れば最初から言って頂ければ、対処しやすかったんですけど。」


「きっと、橘検事面白がってやったんだよ。あの人そういうとこあるからな。そうだろタク。」


 井上君の言葉に秋山君は頷いた。

 

「ああ、今頃絶対笑ってるよ。文句言ったら『状況の変化に迅速かつ的確に対応できなくてどうするの。』とか言い返すんだきっと。」


 そういえば出掛けに、ファランシア姫の耳元で何かささやいていたが、このことだったのか。

 

 今更何を言ってもしょうがない。確かにこのままじゃ騒ぎが大きくなってしまう。

 

「タク。何とかできないか。」


「ここまで皆の注目を集めていると難しいな。いきなり消える訳にもいかないし。」


 秋山君は幾つかの魔法を口にしたが、どれも帯に短し襷に長しといった具合で適当な方法を思いつかないらしい。

 

 魔法は何でも出来ると思われがちだが、いきなり消えたり現れたりするとさすがに人々の記憶に残ってしまう。

 

 人の記憶まで操作するのは誰でも出来る訳ではないし、第一危険だ。

 それに人の心や記憶を操作するのは原則禁止されている。

 

 秋山君が一部の異世界帰還者の記憶を消しているのも、同意を得ているとはいえ問題になっているのだ。

 

「とにかく、どこか人目の無いとこに移動しましょ。」


「急いだほうが良いよ。スマホで撮影している奴もいる。」


 井上君がちょうどファランシア姫にスマホを向けた若者を睨みつけた。

 その男は思わずスマホを持つ手を下げたが、他にも何人かこちらにスマホを向けている者がいる。

 気づかれないように隠し撮りしている者も少なからずいるに違いない。

 

「このままじゃあまり突っ込んだ内容を話せないから、遠話を使って声に出さずに話そうか?」


「それもまずいよ。」


 僕は首を横に振った。

 既に大勢の注目を浴びているのだ。ここで僕たちがいきなり無言になって、沈黙したまま全員が同じ行動をとったりすれば、すごく違和感があるはずだ。

 

「この距離と注目度だと、話してる声は聞こえても内容が聞き取れない位の状態が限界じゃないかしら。」

 

「ああ、中途半端に聞こえるように調整するのも難しいんだけどね。」


 今実際に風魔法でそういう操作をしているのだが、結構微妙な操作が必要で魔力も神経も消耗してくる。

 

「周りの騒音を大きくしておけよ。周囲に騒音の壁を作るんだ。そのほうが楽だぞ。」


 秋山君のアドバイスに従って早速騒音の壁を作ったが、なかなか効果的みたいだ。

 いつもスキルに頼らず使いこなす工夫をしろと言っている彼らしい。

 

「一応、認識阻害は常時展開してるから、はっきり記憶には残らないはずだ。

 撮影さえなんとか阻止できれば、モデルみたいな美人にあったという記憶が残る程度になると思う。

 その記憶も時間が経つと曖昧になって顔は思い出せなくなる。」


「認識阻害をしてて、なぜ注目を集めるんだ?」


 思わず詰問するような口調で秋山君を振り返った。

 

「程度問題なんだよ。認識阻害を強くすると俺達は周りから認識されなくなる。でもそれじゃ、買い物することも出来なくなってしまうんだ。」


 肩をすくめながら秋山君が説明してくれた。

 

「一応、お客として認識は出来ても、後で顔や名前ははっきり思い出せないぐらいに調整してたんだ。」


「誰か撮影のほうを何とか出来ないかな?」


「今、直接インターネットに映像を流せないようにやってます。この周辺では軽い通信障害が起こってるはずです。

 でも既に撮影された映像をスマホの中から消す魔法は思いつきません。」

 

 沢渡さんもお手上げらしい。

 

「僕は知っての通りこの手の細々(こまごま)した操作は苦手なんだよ。」


 井上君は諦めたように肩をすくめて見せたので、改めて秋山君に向かって無言で問いかける。

 

「お前の方こそどうなんだ。何か手はないか?」


 逆に秋山君から言われてしまった。

 

「これほど注目を受けてなければ、風魔法で空気密度を調整してはっきりした映像が撮れないようにできるんだが。

 今から急に視界が歪んだら、かえって奇妙に感じないか。

 それに既に撮影したデータの消去は僕にもどうすればいいのか・・・」

 

 雷魔法で強力な電磁波を発生させて、電子機器をいっぺんに壊すことなら出来そうだが、それをやる訳にはいかない。

 

 ペースメーカーを着けている人がいれば命に関わるし、被害を受ける範囲が特定できない。

 第一、今や電子情報もりっぱな資産だ。それを勝手に破壊するのは犯罪行為になるはずだ。

 今現在魔法による犯罪を取り締まる法律がないとはいえ、僕たちが明らかな違法行為を働く訳にはいかない。

 消去する対象はあくまで無許可で撮影した僕たちの映像に限定する必要がある。

 

「しょうがない。まとめてドカンという方が楽なんだけどな。

 テロ事件かなんかでっち上げたいとこだけど。」

 

 秋山君の物騒な発言に思わず注意した。

 

「対象を選別しながら人を傷つけないように、更に気づかれないようにというのは魔法を使っても至難の業だというのは百も承知だよ。頼む。」


 諦めた表情で頷いた秋山君は、暫く目を閉じて黙っていたが、何か思いついたのか、目を開けて何か呟いた。

 僕に軽く目配せした後、何気なく空を見上げ、何かに驚いたようにいきなり大声を上げた。


「あっ。UFOだ。」


 その声に僕たちは、思わず空を見上げた。

 歩行者天国の真上に、空の半分を覆い隠すような巨大な空飛ぶ円盤が浮かんでいる。

 

 円盤の端はビルに隠れて、全体の形ははっきり解らないが表面の細かい部分まではっきり見える。

 

「えっ。ホントだ。UFOだ。」

「おい。上を見ろ。」

「あれ何?空飛ぶ円盤、初めて見た。」

「すげー、でかいぞ。」


 周りの人たちも次つぎと空を見上げ、辺り一帯は騒然となった。

 突然のUFO出現に、騒ぎは僕たちの周囲からあっという間に広がっていく。

 歩行者天国にいた人々の殆どが、空を見上げて口々に驚きの声を上げスマホを向けて撮影している。

 

「おい。何時まで見てるんだ。移動するぞ。」


 秋山君の声にみんなが我に返った。

 

「今の内に、人目の無いとこまで移動するんだ。認識阻害を強化するから、バカ殿様も風魔法で周りの視覚と聴覚を撹乱してくれ。」


「あれはタクさんが出したの?」


 沢渡さんが上空に浮かぶUFOを指差しながら訊いた。

 

「ああそうだ。お前らまで引っかかってどうする。」


 近くのビルにあるショッピングモールに足早に入っていく彼の後を井上君たちは慌てて追いかけた。

 

「ファランシア姫急いで。」


 未だ状況がつかめずぼう然と空を見上げているファランシア姫の手を引いて僕も後に続いた。

 

「おい。スマホで撮影された映像はどうするんだ。」


「UFOの発する怪電波で電子機器に異常が出るのさ。」


 歩きながら僕の質問に秋山君はあっさりと答えた。UFO騒ぎとスマホ類のデータ消失を関連づける気らしい。

 

「サクラちゃんのお陰で通信障害という前兆も起こってるし、説得力あるだろ。」


「UFOは注意を引くだけじゃなくて、そういう目的もあったんですか。」


 井上君が納得の表情で秋山君に並ぶと、彼を追い越しながら言った。

 

「こっちに好いお店があるんです。そこで休みながら相談しましょう。」


 先導する井上君の後に続きながら、秋山君に確認してみた。

 

「全部の電子機器を駄目にする気か?」


「まさか、俺たちの映像が映っているデータだけさ。」


「そんな器用な真似が出来るのか。」


「奥の手を使うことになるけど。出来なくはない。」


「タクさんの魔法は本当のチートですもんね。」


 僕たちの会話に沢渡さんが入ってきた。

 

「サクラちゃんの魔法陣と同じで、何でも出来るように見えて実際は使い勝手が悪いんだぞ。

 ついでに言えばフィルムカメラや監視カメラの映像もちゃんと始末するつもりだ。」


「フイルムの映像も消せるのか?」


「俺たちの画像だけを消すとかえって違和感があるから、ハレーションを起こしてぼやけたようにすればいい。とにかく俺たちの映像が残らないようにする。」


 フィルムの画像まで処理できるなんて、本当にチートすぎる。

 僕たちが話しながら歩いている間にも、何人もの人達が足早にすれ違っていく。

 

「おい、UFOが上にいるんだって。」

「この真上らしいぜ。」

「急いで行かないと居なくなっちゃうかも。」


 皆UFO目当てに急いでいるらしい。

 

「この分なら、俺達全員が座る席は確保出来そうだな。」


 すれ違う人達を見送りながら呟く秋山君に沢渡さんが訊いた。

 

「タクさん。認識阻害をかけてると周りから見えないはずじゃないんですか。みんな私たちを避けて行きますよ。」


 確かに僕たちとすれ違う人々は、中には走っている人もいるのに、誰一人僕たちとぶつかったりしない。

 

「特定の人間として認識出来ないだけで、ちゃんと目には見えてるんだよ。障害物として無意識に避けてるんだ。

 ちょうど足元の落し物が見つからないのと同じさ。目には映っていても探し物として認識できないんだ。」

 

「なんだ、透明人間になる訳じゃないんだ。」


 秋山君の答えに沢渡さんは納得しながら呟いた。

 

「透明人間ってマンガなんかで見るような都合の好いもんじゃないぞ。見えないと誰も避けようとしないから、ぶつかりそうになる人をよけるだけで一苦労だ。

 混雑してる場所だと、誰もいない隙間だと思って逆に人が寄って来ることも多いし。」

 

 いやに具体的な説明だが、実際に透明人間になってみたことがあるんだろうか。

 

「ここだ。この店のコーヒーは結構本格的なんだ。」


 話しながら歩いているうちに、いつの間にか着いたらしい。

 先頭を歩く井上君が指し示したのは、シックな雰囲気の喫茶店だった。

 

「なんかレトロな感じの店だな。」


「今時喫茶店なんか時代遅れと言われそうだけど、本物を出す所はちゃんと生き残ってるんだ。」


「とにかく一休みしましょ。」


「認識阻害のレベルを下げるから、姫さんを目立たないようにするのはバカ殿様の担当で頼む。」


 確かにこのままだとお客として認識してもらえないことになる。

 僕は頷いて、ファランシア姫の周囲にミラージュ魔法をかけた。

 

 井上君を先頭に店に入ると、ドアに付いたやや大きめのカウベルの音が迎えてくれた。

 

「いやに年季の入ったカウベルだな。」


 秋山君が上を見ながらつぶやいた。

 

「この店はショッピングビルが建つずっと以前からこのへんにあったそうだよ。僕の父が学生時代にデートに使っことがあるってさ。

 ビルの中に移転したけど、そのカウベルだけはその時からのものだと教えてもらったよ。」


 窓際の席に座りながら井上君が説明してくれた。

 ファランシア姫の様子を見たが、まだ具合が悪そうだ。

 

「ここで少し休みます。もうじろじろ見られることも有りませんから安心して下さい。」


「はい。ご心配をおかけしました。」


 こうして身近に見ると、改めてファランシア姫の美しさに見とれてしまいそうになる。

 

 以前会った時には、年上のおばさんという思い込みもあって、注意深く見ようともしなかったが、確かにあの時のファランシア姫だ。

 

 なんで判らなかったんだろう。良く見れば瞳が大きく、首も細く長いのは向こうの人達の特徴だ。

 

 もっともそれほど極端なわけではない。

 良く見ればそういう特徴があるという程度の違いなのだ。

 

 しかしこうして見ると、ファランシア姫が皆の注目を集めてしまったのも無理はないと、妙に納得してしまう。

 僕は、いつの間にかファランシア姫の顔をまじまじと見つめていた。

 

「なに姫さんに見惚れてるんだ。」


 いきなり秋山君から声をかけられて、慌ててみんなの方に振り返った。

 秋山君と井上君が、にやにやしながらこちらを見ている。

 

 沢渡さんはメニューを見ているが、わざとこちらに視線を向けるのを避けている感じだ。

 

「べ、別にそんなんじゃないよ。ファランシア姫の具合を見てただけだよ。」


 僕は慌てて視線を窓の外にそらした。

 窓の向こうにはショッピングモールの広場があって大勢の人が行きかっている。

 その人ごみの中に見覚えのある姿が見えた。

 その人物は迷うことなく、真っ直ぐこちらに近づいて来る。

 

 


 一目ぼれって運命的出会いを感じさせますよね。でもその人の内面ではなく外見に惚れたということは果たしてどうなんでしょう。

 結構小説なんかじゃ多いシチュエーションだと思うんですが。メガネを外すと美少女だったり、平凡なモブだったのが化粧で変身したり。

 小説では変身した相手に主人公は自然に接近していくんですが、真面目な人間なら外見が変わったとたんに惹かれる自分に自己嫌悪しそうな気がするのは私だけでしょうか。

 出来れば内面を好きになって欲しいと思いますが、人の内面なんてなかなか掴めるもんじゃないですよね。

 人間って結構外見に左右されるし、第一印象でその後が決定するなんて少なくないのが現実かも知れないと思います。

 私自身は、相手をもっと知りたいと思うキッカケにするんなら良いと思っています。一目ぼれでもお見合いでも、ナンパでも何でもキッカケと捉えるなら否定しません。


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