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警察庁異世界犯罪特別捜査班  作者: 名梨権ノ兵衛
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魔導師タク

文章が長くなったので短期間の連載にすることにしました。

会話がうまくできないので、独白めいた説明文になってしまいました。

連載が続けば内容的にも文章力も上がるのではないかと期待しています。


 俺の名は魔導師タク。

 本名は勘弁してほしい。

 俺が最初に召喚された世界では本名すなわち真名は重要な意味を持っていた。

 それはおいおい話すとして、今回は俺の仕事について話そう。


 俺の所属は警察庁異世界犯罪特別捜査班。

 肩書きは専任捜査官兼執行官。

 長ったらしいので魔法捜査官または魔道師というのが通称だ。

 ちなみに部署は「下の特捜」と呼ばれている。

 有名な別の特捜班と区別するためで、地下の目だたない場所にあるせいだが、格下に扱われているみたいで気にいらないのは俺だけだろうか。

 もちろん公式な組織表には載っていない。


 特別捜査班とはいっても中身は3人だけ。

 捜査や犯人の逮捕などを行うのは俺一人しかいない。

 もう一人は捜査班のトップで、本人いわく「苦情処理係」。

 警察組織は、ガチガチの現実主義であり魔法や異世界と最もかけ離れたところにある。

 その現実(警察組織)と真実(異世界)の間に挟まれて苦労している人物である。

 言ってみれば、異なる世界の板ばさみになっている。

 家庭でも嫁と姑の板ばさみになっているそうだが、世界に比べれば軽いものだろう。

 最も苦労をかけてる俺が言うのもなんだが「ご苦労さん」といいたい。


 最後の一人は、事務のお姉さん。

 事務処理といっても馬鹿にしたものではない。

 異世界への出張旅費や、ミスリルのナイフの代金(領収書なし)等をどうやって精算しているのやら。

 こちらで価値のありそうな貴金属や宝石などを持ち帰って、経費の一部に充ててもらっているのだが。

 裏金問題などで騒がれたこともあり、不透明な処理をするとどこから突き上げを食らうか解ったものではない。

 先日、ドラゴンの鱗を持ち帰ったのだが見向きもされなかった。

 逆に、モコモコの実が服に付着していて、検疫の重要性を説教されたとき、モコモコについて説明したら出来るだけ多く持ち帰るよう指示された。

 モコモコは、乾燥した荒地でも湿地でも生える、ガーランドという世界ではありふれた雑草だ。

 どこにでもモコモコ生えてくるのでこういう名前が付いている。

 この実はあまり美味くないが飢饉のときの非常食になっているらしい。

 様々な事務処理やマスコミ等への情報操作も彼女の担当になる。

 ある意味、警察庁で最も有能な女性であると俺は確信している。


 特別捜査班の仕事は想像がつくだろう。

 異世界転移した人々を捜し、本人の希望があれば連れ戻すことが主な任務である。

 「本人の希望」というのが微妙な問題だ。

 異世界転移を喜び、帰るのを拒否する人は少なくない。

 現実社会に適応できず、チートでTueeを実現できる異世界での生活にあこがれるのは解かる。

 日本ではその他大勢のモブだったのが、異世界では主人公になれるという幻想を抱いている人は帰りたがらないのだ。

 そういった場合は、本人の意思を確認した証拠DVDを撮って保管しておく。

 しかし、基本的にこのDVDを残された家族に見せるようなことはしない。

 家族が見捨てられたと感じて、怒りや悲しみを生む原因になるからだ。

 

 一番の問題は、日本でうまくいかない人の多くは、異世界でもうまくいかないということだ。

 日本で怠けた人は異世界でも怠けるし、勉強しない人が異世界で懸命に学ぶということもめったにない。

 チートなスキルはしょせん道具のようなものである。

 それを使う人の努力や工夫がなければ、結局宝の持ち腐れになることが多い。

 オリンピックのアスリートたちは才能だけでメダルを取るわけではない。

 絶え間ない努力と厳しい訓練で才能を開花させ結果に結びつけるのだ。

 異世界でスキルをもらっても、それを十分に使いこなせないまま終わることも少なくないのだ。

 スキルを使いこなした人も、そのスキルのせいで異世界での社会生活に支障がでる場合がある。

 チートなスキルを権力者に狙われ、それが厭でスキルを隠して人里はなれて暮らす人。

 魔物から人々を助けたのに、最後には化け物と呼ばれて忌避されることもある。

 中には、現地の法律や習慣に無知なままスキルを使って無双をやったあげく、犯罪者になった者もいる。

 アニメや小説では感情のマイナス面はあまり表面でてこないが、チートは羨望や嫉妬、欲望の対象になるのだ。

 あなたが長年努力して得た以上のものを、何の努力もなしに手に入れた人間がいたら、あなたはどう思うか想像してほしい。

 結局、一度は帰るのを拒否しながら、後になって帰りたいという人がでてくる。

 その時は、保管していたDVDを示して日本への送還と引き換えに、スキルの封印や記憶の削除を承諾させることにしている。

 日本で普通に平和に暮らすならチートなスキルなど必要ないだろう。

 

 また、異世界で犯罪を行った者は、原則的に現地の法律に従って罰を受けることになる。

 殺人等の犯罪を犯した者が、日本に帰り罰を逃れようとすることもあるが受け付けない。

 異世界では、日本人の感覚では軽犯罪と思えることにも、簡単に奴隷化や死刑が適用されることがある。

 しかし、日本人が犯罪を犯した場合はできるだけ現地の法律を尊重することになっている。

 明らかな冤罪や王侯貴族などによる無法な奴隷化や処刑の場合だけが例外である。

 ハーレムを作ったものの、泥沼の愛憎劇に発展して逃げ出そうとした男もいた。

 どう対処したかはあえて話さないでおく。


 もっとも、捜査官が俺一人なので全てに対応できるわけではない。

 異世界に転移した日本人を見つけたとき、既に死んだ後だったこともある。

 その場合は、捜査官としてのもう一つの仕事になる。

 日本人の召喚と死の原因を捜査し、必要とあれば関わった人々を日本に召喚して裁判にかけるのだ。

 通常、日本人がアメリカで殺されても、犯人の捜査や逮捕と裁判はアメリカの法律に従っておこなわれる。

 日本では理不尽に思えても、異世界において合法ならば本来手出しをすべきではないのは当然のことだ。

 しかし、ことの始まりが拉致(召喚)であり、拉致(召喚)に関わった異世界人が権力者で、処罰も受けず放置される場合が多いのが現状である。

 そこで、関係者を日本に召喚してから裁判にかけることになったのだ。

 もちろん異世界の特殊性は考慮するし、まれにではあるが自然転移もある。

 異世界転移の原因が自然現象ならば天に向かって神に文句をいうしかない。

 そうすると異世界に自称他称の多くの神が居るのがまた問題になる。

 自然転移の責任を神に取らせるべきかどうかはまだ議論の最中である。

 少なくとも俺に捕まえて来いと言わないでほしい。


 裁判では、現代日本の常識や法律をしゃくし定規に適用することはしない。

 異世界と一言にいってもその数は多い。一億を越えてても俺は驚かないだろう。

 それぞれの世界ごと、国ごと、種族ごとに価値観や法律が異なる。

 エルフやドワーフ、獣人たち。ドラゴンや魔族などは当たり前。

 植物人間に鉱物人間?更には人権を認められた人工知能(アトムみたいなもの?)までいるのだ。

 そのバリエーションは、地球におけるそれよりもはるかに多く幅広い。

 それぞれの特殊性を考慮しつつ日本の法律を適用するのだ。

 現在法律家たちが真剣に取り組んでいる課題でもある。


 さて、異世界転移で最も多いのが勇者召喚である。

 俺の仕事の殆どはこれだし、対処の仕方も難しいながら決まっている。

 勇者召喚の場合、召喚した責任者は国王か国家の中枢にいる場合が多い。

 国王や大臣たちを召喚して処罰した場合、その国が混乱したり最悪の場合滅びる危険がある。

 何の罪もない国民たちを巻き添えにしてまで、国王たちを処罰するべきだろうか。

 このことは長い時間をかけて議論された。


 結局、ある学者の意見を参考にして基本方針が決定された。

 すなわち、権力者の召喚によって、一般住民に多大の損害を与えることが明確に推測される場合を除いて、たとえ国王であろうが裁判にかける。というものだ。


 国王たち権力者を召喚したら国が滅びるという発想は短絡的にすぎるというのだ。

 国王が病気や暗殺で死ぬ可能性は常にある。大臣たちも同様である。

 それで国が滅んだとしたら、国家運営のありかたに問題があるのだ。

 そういう国は、国王たちを召喚しなくてもいずれ滅びるだろう。

 実際には、国王や大臣に取って代わろうという人間が常にいて、代わりにその座につくという場合が圧倒的に多いのだ。

 また、国が滅んだら国民も皆殺しになるか、奴隷にされてしまうというのも通常あり得ない。

 国家の存亡は権力者や既得権益を持つ者たちとっては大問題だが、一般庶民にとっては多少の社会的混乱程度の影響しかないのがほとんどだ。

 庶民にとって国が代わることは税を納める相手が代わることでしかないのだ。

 国王の生死よりも、地方領主の考え一つで庶民の生活が大きく変化することのほうが多いという。

 もちろん戦争などが起こった場合は多少異なるだろう。

 しかしながら、関が原の合戦を弁当持参で見物していた町人の話もある。

 直接戦争に巻き込まれた人を除いて、天下分け目の戦いも庶民にとってはその程度のものだったのだ。

 権力者は自分達の存続を国全体の存亡と同じに考えがちだが、下のものにとっては単に首の挿げ替えでしかない場合が多いのが現実だ。

 問題になったのは、国家の滅亡が住民の奴隷化や虐殺につながるようなときだ。

 古代のカルタゴがローマ帝国に最後に負けたとき、大地に塩をまかれ、住民は虐殺されるか奴隷にされたという。

 こういう場合は、先に述べた住民への多大な損害に当たるとされるが、これはカルタゴがローマに何度も逆らって、ローマ人の憎しみと恐怖を蓄積してきたからで、通常はあまり起らないと考えられる。

 この場合の対処方法は別に定められている。

 

「いったい何が悪かったのだろう」に対して感想ありがとうございます。

最初は返事を書いたのですが、だんだん難しくなりました。

しかし、感想内容に啓発されて内容の一部を追加しました。

思ってもいなかった視点からの意見などとても参考になります。

感謝いたします。


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