~道~
少し短いです。
ガタン、電車の動きにあわせ揺れる体。
なんとも言えないこの感覚はすぐに慣れ、心地よく感じるようになっていた。
僕は国を離れ、前とはまったく違う生活をするようになる。
こうなることは十も承知だ。
しかし、住み慣れた国を離れるというのは不思議なもので、覚悟はしていても寂しさが後をついてくる。
だか僕は、その寂しさを忘れるかのように窓を開け、風を感じた。
生ぬるい5月特有の風が僕を慰めてくれてるようだった。
ギーン
さっきまで音という音がなかった車内に金属音が響いた。
すぐに音源を探す。
すると、思いの外近くにあった。
客席の間の廊下。そこにバラバラになった何かが散乱していた。
ただ呆然と覗いていると、隊長が話しかけてきた。
「初めて見るか?」
僕は少し悩んだが、首を縦にふった。
すると隊長は、
「サクリファイスのお伽噺、知ってるよな。そこの欠片、元は鐘なんだけどな、それをサクリファイスに見立てて鐘を割るんだ。もう、こんな災厄は起こりませんようにってな」
と、わざわざ説明してくれた。
だが、一つの疑問ができた。
「サクリファイスのお伽噺ってなんだ?」
隊長も知っているということ前提で話していたし... ... ...けど、僕は知らない。
僕は隊長に聞こうと思ったが、生憎隊長は自分の席について寝てしまっていた。
近くには鐘を割ったであろうジューオーがいたが、聞くのは気が引けたので気にせず風に当たっていることにした。




