~間~
報告書
影による被害
死者 約50万人
行方不明者 0人
軽傷・重傷者 0人
生存者 0人
これはひどい。覚悟はしていたが、ここまでとは。
見渡す限り死体、死体、死体。
赤子までもが、死んでいる。
だが、希望はあった。
こんな報告したくねぇよ、と思った矢先のことだった。
「生存者、一名発見しました」
ユーキの声が響き渡った。
俺の勘は正しかった。というより、生きている人間がいて、良かったと思う。
他の人間も同じなのか、安堵の表情を浮かべている。
「ああ、書いちまったじゃないか」
報告書には、0人と書いてある。
それを1人に直すのが、何とも嬉しく感じた。
しかし、この大災害の中生き残るとは。
本音を言えば、俺だって生存者がいるとは思ってもいなかった。
となると、生き残っていたやつに興味がわいてくる。
「おいジューオー、生存者に会いにいくぞ」
俺は部下に声をかけ、歩き出す。
僕はほどなくして、世界中立平和機関というところに保護された。
そこで、僕はこの国のたった一人の生存者ということを知った。
あまり人がいなかったので、同情や好奇という目にはさらされなかったのが幸いだった。
ああいう目をしてくる奴等には、殺意がわいてくる。
考えただけで悪寒が走る。
こんな感情を感じるのは初めてだった。
やはりそれも、彼女の影響?
ああ、彼女らは逃げ切れたのだろうか。
もしも、無惨に死体となっていたら、僕の生きる意味がなくなってしまう。
愛する彼女を失いたくない。この愛が一方通行でもいい。
「よう、生存者くん。名前を教えてもらえないか?」
いきなり話しかけてきたのは、30代くらいの男。
腰に剣をさしていることから、剣士だと思う。
「名前、ヘルディック・エンタシアです」
僕がそう答えると、
「おう、そうか。ヘルくん。
突然だが、君は孤児院に行くことになる。急いで準備をしてくれ」
と、男は言った。
このまま孤児院に行けば影に会えない。
頭の中でその事実だけが谺する。
僕は、一つの答えを出した。
「僕を部隊に入れてください」
これしかなかった。でも、言ったからには進むしかない。
「君を入れて何の得になるのか?」
男の言葉は辛辣だった。それが事実であるから尚更。
それでも僕は諦めない。
「いえ、絶対に僕は入ります」
僕は男を睨みながら言った。
その瞬間空気が震えた。
すると、隣にいた男が、
「こいつ、魔法の素質がありますぞ。
魔術師になれば、その力を最高に発揮するかと思われ...」
「いや、こいつは剣士向きだ」
さっきの男が言葉を遮り言った。
2人がガミガミ言い合っている中、もう一人の男が話しかけてきた。
「あんな小うるさいやつらのとこより、俺のとこへこいよ」
僕は少し考える。
いや、もう答は決まっていた。
僕ははっきりと言った。
「僕は... ...」




