~消~ 3
「なんだって!まさか...」
ああ、また一つ国が潰れる。またあいつらだ。
姿を見て生きていたものは誰もいない。
影のように捕らえることができないことから、いつからか「影」と呼ばれるようになっていた。
そして、影という名前は、恐怖とともに広まっていった。
人から人へ、病気のように...。
そこで、影を討伐しようと言い出したのが、「世界中立平和機関」だった。
独立都市ロンファンを中心にして造られた、どの国にも属さず、ただ平和を守る、そんな機関だ。
そして、機関内部で作られたのが、特別隊の1~7だ。
俺は、その特別隊のトップだ。
今さっき届いたのは、影の情報だった。
影が、プロプス帝国を襲ったらしい。
プロプス帝国までは、列車で飛ばしても半日はかかる。
今から出発しても、着いた頃には死体の山が出迎えてくれるだけだ。
影はもう、どこかに姿をくらましているだろう。
諦めるしかないのか...。
そんな空気がどことなく広がっていた。
そんな空気を消し飛ばすようにして、7番隊の隊長が口を開いた。
「うちの隊が向かいます」
誰だって行きたがらないだろう、事件の後処理にいってくれると彼は言った。
「分かった。では、7番隊に任せよう」
俺がそう言うと、安堵の顔を浮かべる者もいた。そいつらの気持ちが、手に取るように感じられる。
俺は、心から隊長に感謝の言葉を述べた。
すると、隊長は思ってもないことをいった。
「生き残ったやつがいたら、うちの隊にいれてもいいですか?」
隊長の頭が本気でいかれたかと思った。
生き残りなんているはずない...。
俺の思いが表情にでていたのか、隊長は、
「いや、勘ってやつですかね。なんか得体の知れないヤツがいそうな気がするんです」
と、言う。
俺はため息をついて、
「勝手にしろ。ただし、報告はちゃんとするように」
と言って、部屋を後にした。
「隊長。一人でいってこいよ」
隊員のユーキが文句を言う。予想通りの反応だ。
「私はついて行きますぞ。隊長」
隊の中で唯一俺に敬語を使う(それが普通なんだが、)ジューオーは、ついてきてくれるようだ。
世界平和保護機関特別7番隊の隊員は、全部で5人。
隊としては小規模だが、一人一人が精鋭だ。
今は、俺含め3人しかいない。
他のやつらはバックれているのだろう。
だが、そんな事はどうでもいい。(よくないだろうが、)
俺は、ユーキに睨みをきかせる。
と、同時に殺気も飛ばす。
すると、ユーキはあきれたようにため息をつき、
「分かりましたぁ。行きますって」
と、嫌そうに返事をした。
今日中に向こうに着けるだろうか。
日は空の真上で爛々と輝いていた。




