~消~ 2
「ルールは守るもの。だから、さよなら」
影は広場にいた、ほとんどの人間を殺した。
ただ一人を除き。
そのことを一人は知らない。
僕が進み始めてしばらくすると、影たちが喋り始めた。
「お前、何人殺した?」
「五万位」
「やった。俺七万!」
「いやぁ、二人とも凄いね。ボク、興奮しちゃうよ」
「その発言、とてつもなく気持ち悪いな」
「同意する」
「酷いよ... ...」
「気にするなよ」
笑い声が聞こえる。
とても和気あいあいとしていて、殺人を犯している者達とは思えなかった。
むしろ、子供の会話と言われた方が納得できる。
ちゃんとついてきているのだろうか。
心なしか足音が聞こえない。
ふっと後ろを振り返る。
振り返ると、すぐ後ろにいた。
足音なんて聞こえなかったのに。
「急いでくれ」
そう言われるまで動くことができなかった。
やはり、彼らは人殺しなのだ。
身体中を恐怖が支配した。
僕が動きだすと、彼らの会話も再開した。
目的地まであと、少しだ。
そう思った瞬間だった。
大きな腕が僕の首をしめつける。
気づいたら刃物を突きつけられていた。
「このガキの命が惜しかったら、すぐにこっちに来ることだな。安心しろ。殺しはしない。
金になってもらうだけだ」
男は下劣に笑いながら言った。
見たところこの国の鎧を着ているから、元兵士ってところか。
王権が崩壊しているから、正義など貫く意味がなくなったのだろう。
所詮兵士なんてこんなものか。
「本当なら助けなくてもいいんだけどな。
けど、約束したもんはしょうがない。お前には死んでもらうぜ」
影の一人が言った。
と、ほとんど同時に何かが落ちる音がした。
音のした方を見ると、男の首が落ちていた。
男の腕の力が抜け、そのまま男の体は倒れた。
僕が立ち尽くしていると、剣を持った影が近づいてきた。
影は僕に問うた。
「大丈夫か?」
僕の記憶はここで途切れた。
「こいつ、殺していいか?」
「だめ。約束をしてしまったから」
「じゃあ、だめだね」
声が聞こえる。
うっすら目を開けると、そこは例の隠れ場所の中だった。
数年ぶりの光景だ。
少女と『探険』とかいって入ったんだった。
国が言わずとも知れているこの場所。
前に入ったときと全く変わっていない。
「大丈夫?意識ちゃんとしてる?」
と、聞かれた。
不意に聞かれたので驚いたが、僕はゆっくり頷いた。
「どうしてここだと分かった?」
と、僕は聞く。
それもそのはず、僕は途中までしか案内していない。
「勘だ」
と、今度は違う奴が答える。
さすが、本物の勘は違うな。
でも、目的地には着いた。
僕の役目は終わりだ。
「約束。守ってくれるんでしょ。教えて」
僕がそういうと、一人の影が近づいてきた。




