~道~5
「大丈夫さ。気にするなって」
ライトはそう言ってくれたが、僕にとっては大問題だ。
二時間後に集まるという約束を忘れていたのだ。
今はそれより1時間ほど過ぎていた。
気づいたのは、図書館から出たすぐあとでもう遅かった。
今、こうして向かっているが隊長のことを思うと足が重くなる。
「僕、クビにされるの?」
そうライトに問うと大笑いされ、
「そんなことでクビはないって。面白いやつだな」
と返された。
ゲラゲラ笑うライトを見ていると、少し和む。
ピリッ、いきなり頭の中に静電気が走るような感じがした。
ふと、ライトを見るとライトも何か感じたらしく、周りを見渡していた。
これは普通じゃない。僕のひ弱な第六感がそういっている。
「キャァー」
女性らしき悲鳴が聞こえる。
僕が音源を探していると、ライトに手を引かれる。
驚いてライトの顔を見ると、大量の汗が滴っていた。
ライトの心の乱れ具合がよくわかる。
ライトがここまで警戒してるなんて。
興味と恐怖が入り交じった感情が僕の中で渦巻いた。
すると、ライトが立ち止まった。
ここはさっき居た広場だ。
いや、違う。さっきは血だまりなんてなかった。
噴水の色が赤くなる位の血が広場にあった。
そして、大量の死体が。
「来るの早いんとちゃう?さすがやわぁ。まあ、オマケも釣れたしええか」
声のするほうを見ると、ニタリと笑う妖艶な女がいた。
「お前、グールだな」
冷たい声でライトは女に問う。
「見れば分かるやろ?フフッ、ここの人間は美味しかったわぁ。御馳走様」
女は呑気に答える。
それを聞いたライトは、鋭い殺気を女に向ける。
「そうか。じゃあ、それが最後の晩餐だな」
そう言ったライトの隣には、屈強な男が立っていた。
「あら、今度の人は召喚師~?」
女は言うが早いか、素手でライトに突撃する。
「覚醒【肉体強化】」
しかし、ライトは軽く女を吹き飛ばす。
いや、女は受け身の体勢で倒れる。
押してる!
知らない内に手をグッと握りしめていた。
「甘いわぁ」
声がすると同時にライトと屈強な男共々殴りとばされる。
さっきまで倒れてたのに。
「クッ」
ライトの腹には風穴が空いていた。
屈強な男も消えてしまっている。
つ、強い。
「ほら、言ったやろ。甘い。ゆーことで頂戴するわ」
女はライトを喰おうとしていた。
このままじゃ、死ぬ。
「やめてください」
これしか、僕にはできない。
「じゃあ、ウチを止めるんじゃ」
ふざけた口調で女は言った。
そうだ。僕が止めてみせる。
僕は持っていたナイフを勢いよく自分の腕の付け根に突き刺した。
そして、柄に力を込める。血が飛び散り、服を汚したが気にせず力を込め続けた。
しばらくすると、腕がとれた。
なので次は同じように、左足の膝下を削いだ。
そして、女に渡した。
「これで、我慢してください。お願いします」
すると女は、
「会ったばかりの者のため、腕と足を削ぎ落とす... ...。中々のものや。今回はウチの不手際や言っとくわ。今度は、手合わせ頼むわぁ」
と言い、腕と足を持ち逃げてしまった。
腰くらいまで伸びた草が風になびく。
すると、新緑の香りが漂う。
この香りを嗅ぐと、不思議と落ち着く。
遠くを見ると、町があった。
小汚ないけど、暖かい町。
あそこは駄菓子屋で、いつも賑わってるんだよな。
あ、あれはヤスおじさんの家だ。どんな悪ガキもそこを通るときは静かに通るんだった。
あれ?誰か手を振ってる。誰だっけ?
顔の細かい部分にもやがかかっていてうっすらとしか分からない。
君は誰なんですか?
そう声をかけたいけど、体が動かない。
ねぇ、いかないで。ねぇ。
君の名前、教えてくれますか?答えてよ。
「今のままだと難しいかと...」
40代位の医者が言った。
「どうにかなんないですか」
答えはかえってこなかった。
医者は踵を返してどこかへいってしまった。
ヘル、ごめんな。
俺、強くなるからな。だから、目を覚ましてくれよ。
一旦物語を止めたいと思います。
続きを書くつもりでいるので、今後も宜しくお願いします。
御愛読ありがとうございました。