~消~
宜しくお願いします。
読んでいて変な点、不快な点などを見つけたら教えていただけるとありがたいです。
この小説のリメイクで、続きらしきものをだしています。タイトルは『裁きの眼』です。
よかったら見てください。
理由は知らない。
父さんは兵隊となり、家を出ていった。
母さんは泣いていたけど、何故だかは知らない。
と、兄さんは言った。
兄さんには、感情というものが無かったのだと今なら、気づける。
僕は兄さんの分の感情をもっているようだ。
だからだろうか。
僕は今、あり得ない位の悲しみに包まれている。
近所のおばさんが死んだ。
友達の少女が死んだ。
何故救ってやれなかった。何故こうなった... ...。
今日も普通に学校に行って、他愛のない話で笑って。
そんな毎日を過ごすはずだった。
何故こうなった
その答えは、ない。
何の権力もない少年に知ることはできない話だ。
プロプス帝国 王都 プロプス城にて
「王!東より犯罪組織、影が攻めてきました。
近くの町は全滅!
このままだと王都に進行してきます」
なも知らぬ衛兵が言う。
「数は?」
私が聞くと
「... ...四人です」
か細い声が返ってきた。
たった四人に我が町がやられるだと...。
許せん、許せんぞ。
「全戦力で向かえ討て!」
シーンとした城内に声が響く。
すると数秒遅れて、
「はっ」
と、声がする。
「25478、25479、70、71。
あれ。今何人だったか?K、俺何人殺したっけ?」
戦場に響く幼げな声。
Kと呼ばれた人物は幼げな声に、
「25680」
と、返す。
中性的で、透き通った声をしていた。
彼ら(?)は、鴉の羽のような色をしたローブをまとっていた。
その影響で、身体的特徴はほとんど分からない。
このローブが【影】の由縁だろう。
ヒュン、
耳をつんざくような音。
これは、風を切る音だろう。
その音と同時に血の香りが広がる。
地面は赤く染まり、地獄の血の池を思い出させる。
「ここら辺にはもう、誰もいないぜ」
そういった彼の周りには、多くの死体が倒れていた。
「ちゃんと数えられてるか?S」
鼻で笑うような口調でもない、心配するような口調でもない口調でKは言った。
「25685だ。間違いねぇ」
自信ありげにSは言った。
だが、即座にKは首を横にふり、
「25686だ」
と、返す。
するとSは、誤魔化すように笑った。
まるでいたずらっ子のようだ。
「早く進もうぜ。俺に殺されたがってる獲物がたくさんいるからな」
Sは、上手いとは言えない鼻歌を歌いながらKを置いて歩いていく。
Kもそのあとに続く。
グチャ、グチャ、
「痛い?痛いよね。だって、内臓潰してるもん」
黒いローブの人間が、横たわっている兵士の腹に手を突っ込んでいる。
ローブの人間の細い腕は、血にまみれて赤い。
「あれ、動かなくなっちゃった。死んだ」
黒いローブの人間は、立ち上がって兵士の頭を踏み潰した。
「目指せ王都、だね」
「た、たすけてくれ」
平民が必死に懇願している。
それを聞いた黒いローブの人間は、軽蔑した声で言い放つ。
「... ...死ね」
空に舞った血が、太陽の光に反射して輝いている。
黒いローブの人間は、返り血を浴びないよう避けて進む。
足取りが少しフラついているように見えるが、ただの蜃気楼だろう。
それから数時間後... ...。
太陽は空の頂上で何も知らずに光を放っていた。
国の中心であるはずの王都。
今やみる影もなく、廃墟と化している。
力を持たぬ民は、広場に集まり身を寄せあっている。
無論、『僕』もその一人だ。
ある者は恐怖に顔をこわばらせ、ある者は幼い子供を守るように抱きしめている。
すると、何処からか濃い血の匂いが広がる。
気づくと近くに、「四つの黒い影」がいた。
影の一つは僕達に話しかける。
「誰か、この国の王族の隠れ場所を知らないか?
教えた者は、一回だけ願いを叶えてやろう」
影がそう締めくくる。
話が終わると、すぐさまひそひそと話が始まる。
話すか、話さぬか、話題はこればかりだ。
その中、僕は手を挙げる。
すると、場は静まりかえった。
「僕が案内します。ただし僕の兄、国王付き護衛長の生死を教えてください」
これは、僕の唯一の希望である。
答えを待っていると、また同じ影の一人が言う。
「分かった。願いを叶えよう。ただし、案内が終わったあとだ」
僕はそれに頷いた。
読んで頂きありがとうございます。
更新は、ゆっくりやっていきたいと思っています。
生ぬるい目で見守ってもらえると幸いです。