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現代版リアル童話シリーズ

現代版リアル『浦島太郎』!

作者: 華凜

リアルシリーズ第11弾です。

話中に色々と矛盾点がありますが、仕様です。


 むかしむかし、あるところに浦島太郎という男がいました。


太郎はこう見えて東大出身のエリートですが、あいにくの就職氷河期のせいで今は自宅ニート三昧です。

家でまったりPCと睨めっこしてます。


さて、そんなある日のこと。

ニート生活のせいで金が底を突いたので、夕飯のおかずは自給自足しようと魚を釣りに海に出掛けたときのことです。


海岸をゆったりまったり歩いていると、大きな松の樹の下で子供たちがDSを持って集まっているのが見えました。

ピコピコと何をしているのかと気になって近づいて見ると、なんと一匹の海亀が子供たちにいじめられ――



『いっけぇ!海亀(オレ)さまの赤い甲羅×3をくらえ!!』

「ぎゃー!!」

「うおい!カメさんひでえ!」

「緑の甲羅にしてくれよ!!」



――いえ、“カメが子供たちをいじめていました”。


どうやら子供らとカメさんがDSの『マリ夫カート』(通称マリカ)で対戦しているらしいのですが、子供たちはカメさんの放った甲羅で苦しめられているようです。

かくいう筆者もよくマリカの赤い甲羅には悩まされました……。(遠い目)


まあそれはさておき、正義感の強い太郎は、子供たちがカメさんにいじめられているのを見て激怒しました。


「やいやい、このカメ野郎!よくも子供らをいじめやがったな!!」


緑ではなく赤い甲羅で攻めるとは許せぬカメ野郎なのです!

ちょっと仕返ししてやりましょう!


「明日、教育委員会と保護者に電話してキサマの悪事を報告してやるからな!」

『えっ、ちょっ、それだけはご勘弁を!!』


海亀は土下座して許しを乞います。

最近の保護者はモンスターペアレントが多いので、万が一にも通報されたらひとたまりもありません。


『お願いです!もうしませんから、どうか保護者には報告しないでください!』

「どうしよっかなー♪」

『エロ本10冊あげますから!』

「ぬぅ」

『特撮AV10個あげますから!』

「むぅ」

『竜宮城に連れってあげるうえ、美女で巨乳でナイスバディかつ処女なる乙姫さまに会わせてあげますから!』

「よかろう!!」


美人な女性に会えるなら理由がなんであれオーケーです。

かくしてスケベな浦島太郎は海亀の悪事を黙認する代わりに、竜宮城にいるという乙姫様に会わせてもらう約束をしたのです。


「ところで、竜宮城ってどこある?」

『海底ですね。フツーに日本海溝の底の方まで行きます』


えらいこっちゃです。

聞く限り竜宮城とやらは深海8000メートルくらいにあるそうですが、メルヘンチックに海亀の背中に乗って潜ったのでは溺死+水圧による圧死は必至です。


「ぬぅ!」


美女に会うにはこの際やむを得ません!

太郎は海洋研究開発機構の職員にうまく言って深海6500っぽいやつを横流ししてもらいました――

――が、平安時代から潜水艇というチートを使用するのは大変よくないと反省です。


仕方がないので太郎は米軍のお兄さんをちょろまかして原子力潜水艦をレンタルしてきました。

なんか借りる際に「USA!USA!」とか言われましたが、どうってことありません。


……でも免許も無いのに勝手に潜水艦なんか動かしていいのでしょうか?


「ダイジョブダイジョブ!ほら、『潜水艦、みんなで潜れば怖くない』って言うじゃん?」


赤信号とは訳が違います。

でもまあ目的のブツは手に入れたことですし、おまわりさんには目を瞑ってもらいましょう!


「ほな、行きまっせー!!」


理由はありませんが、元気よく大阪弁で出発です!


 浦島太郎は適当に潜水艦を運転し、海亀の後を追って深海8000メートルまで潜りました。

途中で操作にミスってしまい岩に激突しまくって浸水しまくりましたが、どうってことありません。


しばらくすると、海底の奥底にドーム型の天井が見えてきました。

どうやらあの透明なドームの中に竜宮城があるようです。


『さあ浦島さん、どうぞお入りください』


竜宮城の門はオートロックなので海亀さんがパスワードを入力後、指紋認証して開いてくれます。

――が、


「むぅ」


太郎の乗っている潜水艦は大きすぎて門に入りません。

かといってここで潜水艦を下りて泳いで入るとなると、8000メートルの水圧でペシャンコになるという、入りたくても入れない二律背反の事態です。


「ぬぅ!」


この際やむを得ません!

太郎は潜水艦に取り付けられてある魚雷スイッチを「ぽちっとな」します。


ちゅばどーん!!!

『ぷぎゃーー!!』



Oh Yes!です!

爆発時の衝撃波が海亀さんに直撃しましたが、特に気にするほどでもありません。


かくして浦島太郎は出だしから門を破壊して竜宮城に上陸したのです。


 潜水艦から降りると、竜宮城と思しき古風な建物から誰かが出てきました。

あの長い髪、あのセクシーなビキニ姿。

あれはきっと乙姫様に違いありません!


「ぬっ!」


しかしよく見て見ると、乙姫さまだと思っていた相手は体重300キロはあろうかという巨体の――強いて言うならマツ○DXの如きおデブだったのです!


「おええええええ!!!!」


船酔いと萎えによるショックで太郎は激しく嘔吐しました。

昨日食べたカレーまで逆流してきます。



 太郎が目の前のブチャイクを見てゲロゲロ言っていると、先ほどの爆発で負傷した包帯だらけの海亀が紹介してくれました。


『こちらが我らの乙姫、滝川クリスタル様です』

「ホンマかいな!」


一文字違いで五輪招致の有名人です。

ですがホンモノとは似ても似つかぬ大きな違いがあります。


「わたくしがこの竜宮城の主、乙姫にございます。事情は全てこのカメからうかがっております。さあ、どうぞ中へお入りください」

「あ、ども」


竜宮城にやって来る際、事前に海亀がスマホのLINEで乙姫様に連絡しておいてくれたので、スムーズに入ることができました。



 太郎はおデブな乙姫様の後に続き、竜宮城にある広い宴会の席に通されました。


「ここでしばらくお待ちくださいな。すぐにお食事を用意しますので」

「あ、別にお構いなく」

「いえいえ、竜宮城にやってこられた方を精一杯もてなすのがこの国の礼儀。――そう、」


片手を構え、


「お・も・て・な・し」


去年どこかで聴いたフレーズです。

もちろん、ちゃんと最後に手を合わせることも忘れません。


「ではわたくしはお料理をしてくるので」


そう言って乙姫様は「カメちゃん、ちょっと来て」と言い、海亀を連れてキッチンに消えました。

直後、キッチンの方で何やら「ぐああ!!」とか「きょえええ!!」とか悲鳴が聞こえましたが、特に気にしません。



 さてさて、竜宮城の厚い『おもてなし』を受け、これはこれでいいと思っていると乙姫様が料理を運んできてくれました。

ステーキやら刺身やら焼肉やらが沢山あって、とても美味しそうです。


「どうぞ、お召し上がりくださいな」

「いやぁ、ほんとありがとうございます」


乙姫様がブチャイクだったのは極めて残念ですが、お料理は美味いしもてなしは最高だし、それなりに満足していた太郎。

しかしステーキにふと視線を落としたとき、あることに気付いたのです。


「あの、乙姫――あ、いや、クリスタルさん?」

「はい?」

「……この肉って何の肉ッスか?」

「さあ何でしょう♪」


今まで「美味い美味い!」とパクパク食べていた太郎の箸が止まります。


「……なんか味噌汁に海洋動物の足みたいなのが入ってるんですけど」

「うふっ♡よく気付きましたね!」

「……見たことのある尻尾が入っているのは気のせいですかね」

「気のせいでしょう☆」

「見覚えのある大きさの『甲羅』が血まみれになってキッチンに転がっているのが見えるのは、それも気のせいでしょうね」

「きっとそうでしょう♪」


冷や汗が太郎の顔中から噴き出します。

超ヤバい予感です。


「……乙姫さん」

「はい?」

「さっきまでいたカメが見当たらないんですが」

「あら、ほんとう。あの子、自由奔放な子だからどこか逝(行)っちゃったのねえ」


ちなみに「行く」ではなく「逝く」方でした。


「――すんません。俺、ちょっと用事思い出したんで帰ります」

「まあそう言わずもう少し」


フェードアウトしようとする太郎を乙姫様がブラックな笑みで捕まえます。


「いやいや、俺、結構急いでるんで」

「もう少しゆっくりしていかれてはいかがですか?」

「じ、じゃあ5分だけですよ?」

「5分と言わずもっといてくださいな」

「いや、だから俺もう帰ります!」

「地に?」

「地上!!Go Homeの『帰る』の方!誰がDeathの『還る』だ!」


現実世界に帰ろうとして地に(かえ)されたのではたまったものではありません。

衣服に返り血を浴びている乙姫様が言うから余計に不安です。


「冗談ですよ♪」

「ホンマに冗談か!?」

「今日はゆっくりしていってくださいな」

「だから帰るって!」

「あと少しだけっ」

「じゃあいつ帰してくれるの?」



「今でしょ!」



「ほな、サイナラ」

「ああん!今のウソウソ!ちょっと待ってー!!」


東進ハイス○ールの某先生の名言を使うとは度し難い乙姫さまなのです!

太郎はさっさと帰ろうと、潜水艦の方へ向かい始めました。


「帰るならお土産に玉手箱持って行ってくださいな!」

「玉手箱?」

「はい。……でも地上に帰っても絶対に開けてはいけませんよ?」


じゃあ初めから渡すなよ、っていう話です。

地上に帰っても開けられない箱なんかただのガラクタです。

なので太郎も一旦は拒否しようとしましたが、受け取らなければメルヘンが台無しになってしまうと猛反省です。


一応もらっときます。


「はい、どうぞ」

「うおっ!結構重いですけど、中身は何スか?」

「死んだカ――いや、生きているカメが『浦島さんはエッチなものが好き』と言っておりましたので、エッチなものを入れておきました」


一度も「エッチなものが好き」だなんて言ってませんが。

それより、乙姫様が最初に何を言いかけたのか非常に気になるところです。

でもまあ実際はエッチなものも嫌いではないし、反論する理由もないのでここは黙って受け取っておきましょう!


「ちなみにエッチなものってどんな奴ッスか?」

「無難に洋物・人妻モノAVや、竜宮城限定発売のエロ本もいくつか」


サンキューすぎます。

思わず鼻血垂らしながらグッジョブのポーズです。


「じゃあまた!」

「お元気で~!」


太郎は潜水艦に乗り、竜宮城を出て海上を目指します。

途中でまたもや岩にぶつかりまくって浸水しまくりましたが、気にするほどのことではありません。

あとで米軍のお兄さんに謝っておきましょう。




 さてさて、無事に地上に帰った浦島太郎ですが、手元には乙姫さまからもらったあの玉手箱があります。

開けるな、と言われましたが、そう言われると開けたくなる主義です。


「ぬぅ!」


乙姫様曰く、中身は秘蔵のお宝AVとエロ本なのですから、箱を開けて見ないわけにはいきません!


「開けちゃダメなの?じゃあいつ開けるの?」



今でしょ!!



「ほな、開けましょか」


乙姫様とのお約束を数十秒で無視し、大阪弁で玉手箱をオープンです!

しかし開けた瞬間に白い煙が出てそれを吸って歳をとってしまっても困るため、ちゃんとガスマスク+防護服を着用してからの開封です。

さすが東大出身。抜かりありません。


「むっ!」


開けて見ると、なんと玉手箱の中にはお宝AVやエロ本――――


――ではなく、浦島太郎のお父さんとお母さんのヌード写真が入っていたのです!!

特にお父さんがスネ毛たっぷりの脚を強調してくるビキニ写真の威力は核兵器並みです!


「おえええええええええええええええええっ!!!!!!」


激しく嘔吐です!

太郎は精神的ダメージのあまり、ショック死してしまいました。




 その後、太郎があの世で海亀さんと出会ったのは、間もないことだったと言います。



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― 新着の感想 ―
[良い点] おもろいところ [気になる点] ちょっと子供に良くない物が出てきたこと [一言] いろんな意味で応援してます
[気になる点] 深海6500は6000メートルくらいまでしか潜れないし、原子力潜水艦は長い間水に潜っていられるってだけで、潜れる深さはそこまでないので、深海8000メートルにある竜宮城に行くのは無理で…
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