表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

我が家のエルフさん

作者: 榎本くん

エルフっていいよねってお話し。


この作品は『ハーメルン』様にも僅かながらに改訂して掲載しています。

 突然のことになるが、我が家にはエルフがいる。


 エルフ、そうエルフだ。指輪ほにゃらら、ほにゃらら島戦記などに登場する、架空の種族である。

 物語にしか存在し得ない生物が、なぜこの鉄が空を飛ぶこの現代社会にいるのか。長くなるので簡単に言うが、要するに『異世界転移』というヤツである。

 エルフといえば魔法に長けた種族だ、それぐらいぶっ飛んだ魔法の一つや二つ、あってもおかしくないだろう。

 事実、我が家のエルフに聞いたところ「転移系の魔法にも色々種類がある訳、同じ空間を行き来したりもしくは自分のいる所に物を取り寄せたり。中でも一番難しいのが自ぶ」無駄に長いので再び要約するが、つまりはエルフにだけ伝わる禁呪を使ったということだ。

 再び元の世界に戻れる保証がない上、失敗する可能性も高い魔法であるらしい。そうまでしてなぜこちらに来たのか甚だ疑問なのだが、本人に直接聞くと「なんかこっちの方が面白そうだったから」とのことだ。ただのアホだ。


 それはさて置き。エルフという種族は、総じて美しいものだと聞いている。実際我が家のエルフも、中身はともかく外見はとても綺麗である。中身はともかく。

 金糸のような金色の髪に、青宝石ともいえる碧眼。肌は透ける程白く、美しいという言葉を形にした端麗な顔立ち。羞花閉月、自分の語彙の少なさが不甲斐なく感じるほどである。

 外見のついでに言っておくのだが、もちろん耳先は葉っぱに似た形で尖っている。

 何度か触らせて貰おうと頼んでみたのだが、一度として触らせてくれたことはない。もっとも、寝ている間にたっぷりと触らせて貰ったので、今では特にその必要性は感じていない。

 ちなみに、相手から「さ、触らなくていいの?」と尋ねてきたからと言って、調子に乗って「むしろしゃぶらせろ」と言うと、全力で殴られることになるので気を付けて欲しい。


 ああ、今更ではあるが、我が家に住むエルフ。名前を『リリーベル・オール・ヴェルスーニア』という。

 本人曰く「こう見えても私、エルフの中でも偉いほうだったんだからね。精霊の加護だって他の人より多かったし、魔法だってたくさん使えたのよ。しかもパパは村長やってたんだから!」ということだ。

 ない胸を一所懸命張っていたが、全て過去形なのが彼女の残念なところである。

 彼女の出生だが、話の通り村長の一人娘で、蝶よ花よと育てられてきたらしい。大事な箱入り娘ということだ。

 そのせいか我が家に来た当初と言えば、それはもう我が侭し放題であった。あれやってこれやってと、自分で動くことはほとんどなかった。それでも我が家の両親はとても嬉しそうに相手をしていた。

 本人は両親を召使いのように思っていたらしいが、実際は「なんだか孫ができたみたい」と完全に子供扱いであった。なんとも残念なことだが、両者とも満足しているのだから良しとしよう。

 ちなみに現在はそんな様子は全く見せず、我が家の両親を本当に父母と同じように「パパ、ママ」と呼んでいる。父の肩を揉み、母と料理をする。完全に家族の一員だ。

 母が「あんたリリーちゃんの代わりに異世界帰りなさい」と言うぐらい、欠かせない存在なのだ。

 しかしちょっとばかりむかついたので、寝てるリリーベルの鼻に牛乳を流し込んでやった。危うく魔法で殺されるところだった。


 魔法と言えば、彼女はこちらの世界でも魔法を使うことができる。もちろん使える数は断然減ったし、威力も相当落ちている。

 その状況に愕然としていたが、使えるというだけでも十分凄いのだ。そう言って慰めると、五秒程で立ち直って偉そうにしていた。もはや残念を通り越してかわいそうだ。

 しかしなぜ使えるのか。『こちらの世界には精霊が存在せず、魔法を使うことができない』というのがよくあるパターンである。

 だが彼女はこう説明してくれた。

「精霊はこの世界にもいるわよ、特に木とか草花辺り。自然の物に多く宿ってるわね。後は古くから使われてる物にも宿ることがあるわ。使いこまれた道具や、愛され続けた人形とかね」

 つまり、精霊とは付喪神みたいなものなのだろう。ならばと、小学生の頃友達の兄から貰った未だ現役のエロ本を取り出したら、顔が三倍に腫れる程叩かれた。

 この要領で自分の胸も叩けばと言ったら、その倍になるほど叩かれた。間違ったことは言っていないのに。

 余談だが、持ってきたエロ本にはしっかりと精霊が宿っていた。リリーベルは何とも複雑な表情をしていたが、十年以上の時を経て尚使われ続けている代物だ、こちらとしては当然だと頷かざる得ない。使うというとこがミソ。


 この世界は精霊の数が非常に少ない。実に非情である。実際問題、シャレてる場合ではないほどに非常事態だったりする。

 これはリリーベルの受け売りだが、エルフという種族は、精霊からの加護を受けて成長していく生物であるらしい。

 精霊を取り込み、体内に廻らせ、糧とし、力と成す。力を失った精霊は魔法と共に排出され、自然の中で再び力を得て、また取り込まれる。成長ないしは老成するには精霊の存在が必要不可欠なのだ。

 ちなみに、加護と魔法の強さの関連性はここにある。加護が多い、つまりは取り込む精霊の数も多く、排出する数も自然と多くなり魔法の威力が上がるのだ。

 そのため、例え人より多く精霊を取り込んだからといって、その分放出もしているので成長が早まるということはない。精霊は常に一定量しか体に収まっていないのだ。

 言ってしまえば、エルフとは精霊のでっかい塊のようなもの。

 例えるならば、雪が一番近い。一つ一つは小さな結晶だが、纏まることで大きく白い塊となる。もっとも、原子でできている人間も似たようなものであるが。

 

 話が逸れたが、要するに精霊が少ないこの世界では、リリーベルが成長できないということだ。全くできないという訳でもないが、これでは何百年、何千年の時を要することになるのだろう。非常に非情で、無情。

 リリーベルは「大丈夫よ。エルフはもともと長命な種族なんだから」と何でもないように話したが、夜に一人で泣いているのを知っている。

 大丈夫なはずがない。

 自分がみんなを忘れるより、みんなが自分を忘れるほうが、ずっと悲しいのだ。

 一人取り残されることが、どれだけ辛いことか。

 それを見て決めたのだ。

 必ず方法を見つけ出すと。そして、この命ある限り、ずっとリリーベルの隣にいると。



「って明日の結婚式の時話そうと思うんだけど、大丈夫だよな?」

「それを本気で大丈夫と思っているアンタの頭が大丈夫じゃない」

「とか口言いつつも、顔赤らめてにやにやしちゃうリリーベルさんマジ可愛い」

「ううううるさいうるさいっ!」

「ツンデレいつもごちそうさまですって待て、魔法はダメだ危ない待て待て待てって何で褒めてんのに俺吹き飛ばされ――っ」


以上、『我が家のエルフさん』でした。

設定等穴があるかもしれません。もし見つけられた場合は、指を差して笑った後そのまま流して下さい。無理して塞ごうとすると、余計広がる可能性があります。

誤字脱字等ありましたら、そちらはご一報頂けると助かります。

愚作ですが、お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ