暗闇の監獄
ルーカスは桜のブラックパニッシャーをデイバックにしまう。そして懐中電灯をサブマシンガンと一体化させるパーツを取り出しサブマシンガンに取り付けた。
「落ち着け・・・訓練通りやろう」
施設の奥、広いロビーを抜けて監禁部屋の更に奥にある地下へ向かう階段へとゆっくり向かう、ルーカスの呼吸が緊張のせいで荒くなり始める。
呼吸に混じって別の音がする、トントンと鈍く板を叩くような音だった、するとルーカスの目の前に白くベタつく糸のような物が垂れてくる。
「なんだこれは?」
垂れて来た先を懐中電灯で照らしていく、ルーカスは嫌な予感がして顔が険しくなる、丁度懐中電灯の光が真上を向く頃。背後に何かいる気配がした。ドンと言う音と共に驚き後ろを振り返ってみると体長が人間と同じくらいの大きな蜘蛛が黒い目でルーカスを捕らえていた。
「うわぁぁ!」
絶叫に反応した巨大蜘蛛がルーカスに飛びかかって来る、危ないところで蜘蛛の下をくぐるようにしてサブマシンガンの銃口を真上に向けてセミオートで発砲。全弾丸が蜘蛛の腹部に命中、青い体液が吹き出し足を体に引き寄せると背中を地面に当てて倒れた。まだ少しだけピクピクと小刻みに動く。
「なんて、大きさだ・・・こんなのが施設中あちらこちらに、いたらたまったもんじゃないな」
不意に脳裏を過ぎる不安、桜は無事だろうか?灯りもなし、武器もなしで敵に出くわしたらたまったものではない。
「確か地下一回に配電室があったな、ヒューズを変えればまだ機能する筈だ。」
蜘蛛の屍を乗り越え地下へ向かう階段を下りる。
一方、桜は暗闇で身動きが取れずうつ伏せの状態でうずくまっていた、軽く体が震える。
「・・・大丈夫、すぐ目が慣れる・・・あ、携帯」
携帯を開きその僅かな光を頼って安心を得るがすぐに充電が切れまた暗闇に逆戻りした。
「くそ・・・なんで、ふぅふぅ暗い、嫌」
昼間の頼もしい彼女の面影は完全にない、暗闇は桜を完全に覆って離さない。体の震えが次第激しくなる、暗闇はそこに潜む何かを想像させる、桜も例外なくその潜む何かの虚像を想像してしまう。
「くぅ・・・何もいない何も」
必死の自己暗示、だが長くは持たない想像は妄想へと肥大化し幻聴を彼女の耳に襲わせる。
キシャャャ!キシャャャ!という暗闇に蠢く謎の声、生き物が生き物でない、そういった感覚、自分の呼吸すら怪しくなりだし恐怖以外何も残らない。
「やめて・・・来るな、誰か助けて・・・ルーカス」
しゃっくり混じりの泣き声、桜の瞳から涙の粒が零れる。そして目を瞑り開かないまま動かなくなった。
ルーカスは階段を慎重に降りる、地下一階にたどり着き、目の前のフロアの安全を確認。
「仲間が居ればスムーズなんだがな・・・」
地下一階のフロアはロビーよりも広く大きい、変わりいくつもの扉と壁があって迷路のようだった。配電室を探すのも一苦労だった。
「ここだな、あ・・・鍵が・・・壊すか」
鍵が掛かったドアノブを破壊、蹴って扉を開けてすぐに部屋の安全を確認。敵や障害物がないことを確認すると配電室の配電盤を強引にこじ開けて、ヒューズを取り替えてブレーカーを上げる。