遭遇と恐怖 前編
「まったくしつこいなぁ」
息を切らしながら、迫りくるゾンビを蹴り飛ばし続ける、桜。さすがの彼女の顔にも疲労が見え始めていた。蹴り飛ばしては移動、また蹴り飛ばしては移動、この繰り返しが続いている。所持している愛用の銃ブラックパニッシャーの弾丸の数も、ついさっき底をついた。
位置は島の森の中心からみて南東。桜が森に入ってから約一時間が経過した。
このまま体力が尽きたらマズいと悟った桜は、ゾンビを蹴り飛ばすのをやめて、逃げることに意を決した。はぁはぁと息を切らしつつ、体力の続く限り。やがて、ようやくゾンビの大群を振り切り一息付ける状態となった。
「ふぅふぅ、ずっと歯を食いしばったていた」
そう言って桜は自分の顎を手でつかんで、左右に動かした。
ガサガサ ガサガサ
「・・・ゾンビとは違う・・・もっと別の音だ」
「フリーズ!」
聞き覚えのある声、桜は音がした方向を見る、そこには黒い戦闘服を着た金髪の男が立っていた。サブマシンガンにグレネードを装備し、サブマシンガンの照準をピタリと桜につける。
「ハイジャック犯か、仲間はどうしたの?」
「英語が話せるなら、脅す必要はないな、仲間は死んだよ今頃奴らの仲間さ」
金髪の男はサブマシンガンの安全装置をかけて照準を下ろす。
「乗員は全員始末した筈だが、君は?」
桜はニヤリと笑って答える。
「自分の自己紹介が先でしょう?それになぜこんな島に来たか理由も聞いてないわ」
金髪の男は頭に手を当てて、これはまいったなという、表情になる。
「俺の名前は、ルーカス。君は?」
桜は呆れた表情をして、ブラックパニッシャーを取り出しルーカスの、喉に突きつける。
「私の質問に全部答えなさい!あなたの質問はその後!」
「わかった落ち着いてくれ、俺はこの島にある戦時中に使われた、実験施設の調査に着たんだ、さらに島の位置がハッキリしない為上空から降下しろとの極秘の命令だった。」
「それでハイジャックか・・・」
ルーカスの喉に突きつけていたブラックパニッシャーを下ろす。
「文月桜、お前らの下らない作戦に巻き込まれた、哀れな女子高生以上。」
ルーカスはため息を漏らす、しばらくして桜のブラックパニッシャーに弾が入ってないことに気がつきガクッと膝をつく。
「ルーカス、弾ある?ハンドガン用の」
「ある、いくつか渡しておく」
桜はブラックパニッシャーに弾を込めると、ルーカスを置いてその場を去ろうとした。
「まてよ!どこに行くんだ!」
「あんたの言う実験施設とやらに、森よりはマシだわ」
「確かにそうかもな・・・。」
ルーカスは先走る桜の後を仕方なく追いかけて行く、しばらくして桜が歩みを止める。
「なにかいる、ルーカスあれは?」
桜が指差した方向を双眼鏡で覗くルーカス、レンズに映ったのはゾンビが走っている姿だった。
「肉体が劣化してないゾンビだな、他の奴らと違って超人的な身体能力をもつが知性がないのは、ゾンビと変わらない。」
桜はそれを聞いてルートを迂回する事を提案、もちろんルーカスは賛成した。