確立記念日
帰宅してから即座に、趣味の部屋と称した実験室で、この狐を女の子にする為の作業を始めました。
(これが役に立つ時が来るとは…)
清浄が男の子として現れた事から、刹那と涅槃の人形とは別に、どうにか性別を持たせて子供を作れないかと考えていました。
そうして清浄のヘアピンを参考に作ったのが、このヘアゴム…だったんですが、肝心の魂だけの存在がおらず、実験が頓挫していたんですよね。
(刹那と涅槃は、地上に来た時期と僕の実験とが奇跡的に噛み合っただけでしたし…)
早速狐にヘアゴムを付けますが、全く反応がありません。
(何か忘れてるのでしょうか?…あ)
実は、質量を変化させる都合上、変化前の質量を記憶させる必要がありまして。
例えば、刹那と涅槃でしたら人形のですね。
(つまり…この狐の体重を正確に把握する必要がある、と…)
正直無理だと思いましたよ。だって、実体が無いんですから。
(はぁ…ローラーするしか無さそうですね…)
こうして、ひたすら狐の体重を当てる作業をする事なんと7時間。ようやく当てる事が出来ました。
(ま、まさか質量がマイナスだなんて、誰がわかるんですか…)
すると、狐はみるみるうちに女の子の姿になったんです!
金髪桃眼、ヘアゴムでハーフツインにされていました。
(よかった…何とか成功です)
その子が起きるまでと、引っ張り出してきた道具を片付けていると、聞き覚えの無い声がしました。
「此処は何処じゃ…?確か人間の子とその親に絡まれて…」
「お、目が覚めましたか。体調はいかがですか?」
「ふむ…何処も悪くは無いようじゃな…」
(古風な口調の女の子…こちらも悪くないですね)
「それは良かったです。久々にやったものですから少し不安だったんですよね…」
「そうじゃったのか…ん?此奴、何故我の思考が読み取れるのじゃ…?」
女の子が不思議そうにこちらを見るのがおかしくて、つい笑ってしまいました。
「それ、全部声に出てますよ」
「なんじゃと…!?」
「余程会話がしたかったのでしょう、これからは存分に喋ってくださいね!」
その時、外からか清浄の声が聞こえてきました。
「親父ー!その子おきたー?」
(集中しすぎて全然聞こえてませんでした…)
女の子は何やら自分の身体が気になっている様でした。
「あ、自分の外見が気になりますか?ここに丁度鏡がありますよ」
女の子は鏡を見て、とても驚いていました。
「これが…我なのか…?」
(まあ、起きたら女の子になってました!がすんなり受け入れられるわけないですよね…)
「この部屋は基本僕しか入らないんです。リビングでうちの子が心配してるので、早く行ってあげてください」
そうして、清浄の待つリビングに向かいました。