息子と人形
ここでは狭いので、3人で研究室を出て、リビングでお話することにしました。
涅槃が刹那に何か耳打ちしている様子でしたが、どうやら涅槃が折れたみたいです。
(おおよそ2人の力関係が伺えますね)
それから刹那が天界での出来事を噛み砕いて説明してくださいました。
2人が天使だった事、涅槃が冤罪を掛けられ、神と対峙した事。そして刹那が神を堕とし、2人で逃げて来た先が僕の人形だったという訳でした。
「そんなことが…2人とも大変でしたね…」
あまりに規模が大きく驚いた僕は、ただ2人を撫でる事しか出来ませんでした。
(ここで安心して過ごして頂けると良いのですが…)
そのとき、さっきまで寝ていた清浄がリビングに入ってきました。
「おはよ…あいかわらずおきるの早いね…」
「あ、清浄!おはようございます、1人で起きれて偉いですね!」
「こどもあつかいしないでよ。え、そのてんしとあくまっぽい人たちは…?」
(えーと…なんて紹介するのが正解なんでしょう)
「この子パパの子!?かわい~!」
「ふん…生意気そうなガキだな」
(あ、2人にもまだ子供がいる事言ってませんでしたね…)
段取りが悪い自分に苦しめられながら、何とか説明を試みました。
「この子達はですねー、なんと僕が作った人形なんですよ!」
「え?じゃあなんでうごいてるの…?」
「実は、姿を変えられる人形を作ってたんですけど、ようやく完成したんです!今日からこの子達はうちの子ですよ!仲良くしてくださいね!」
「へー…?」
(んー、後で改めて説明しましょう…)
「ちなみに、この子達は清浄より年上ですよ」
「あ、そうなんだ?」
年上のきょうだいが増える事なんて滅多にありませんからね。一応言っておきました。
「私はアトだよ~、よろしくね!」
「俺はヨクト、宜しくなクソガキ」
「ちょっとヨクトちゃん!クソガキって呼んじゃダメでしょ~?」
「…わーったよ…宜しくなゼプト」
「あれ?パパが1回しか呼んでないのにもう名前おぼえたの?…あ!もしかして、弟ができてうれしいんじゃ」
「うるせぇ偶然だよ」
(なんだか、微笑ましいというか…良い関係ですね)
「よろしくね、アトねぇ、ヨクトにぃ!」
「あー、清浄…そのですね…2人に性別は無いんですよ…」
「え?そうなの!?」
(雰囲気からしたらそう見えますよね…)
まあ、僕にとっては皆可愛いのですが。
「アトねぇでいいよ~!えへへ、ゼプトくんのお姉ちゃんになれちゃった!」
「俺もまあ、アトが良いなら」
こうして子供がまた2人増えたのでした。