降臨記念日
2年半後、ペンダントで大きさを変えられる2体の人形を作りました。
「ふぅ…やっと完成しましたよ…」
天使と悪魔を象った、それぞれ銀髪金眼、灰髪紅眼の対照的な姿。そしてなんと言ってもツインテール!
完全に僕の好みです、はい。
(さて、あとは最終確認ですね)
早速ペンダントを付けて、観察する事にしました。
すると、一瞬で17歳くらいの見た目に変化したんです!
「やりました、成功です!!」
あまりの嬉しさに両手を投げ出して喜んでいると、突然後ろから声が聞こえました。
「うぅ~ん…あれ、ここは…?」
(あ、やはりそうなりますか…)
あの清浄を参考に実験を進めたんです、人格が宿ってもおかしくないと、僕もわかっていたんですよ。
あくまで想定内、という風を装って、ゆっくりと2人の方を向きました。
「あなたはだれ…?」
「はじめまして、ここは僕の家ですよ。そして、僕は久遠永茉と言います。僕の事はお父さんだと思っていいですからね」
「わかった!よろしくね、パパ」
天使の方が冗談をあまりに素直に受け止められたものですから、不意打ちの破壊力に思わずぶっ倒れてしまいました。
「ぱ、パパ!?」
「う…嬉しすぎて…」
(世の親達は初めて子供に呼んでもらえた時、こんな感覚なんでしょうね…)
その時、僕側は2人の事をどう呼べば良いのか決まってない事に気付きました。
「あ、そうだ!2人に名前を付けましょう!えーと…刹那と涅槃でいかがですか?」
『アト(atto)…10のマイナス18乗を表す国際単位系における接頭辞の1つ。記号はaで、漢字文化圏の"刹那"にあたる。フェムトの1/1000、ゼプトの1000倍である。』
『ヨクト(yocto)…10のマイナス24乗を表す国際単位系における接頭辞の1つ。記号はyで、漢字文化圏の"涅槃寂静"にあたる。ゼプトの1/1000である。』
(清浄の前後の記号から取ったのですが…)
「アト…うん、気に入った!」
天使の方…刹那は秒で受け入れてくれましたね。
悪魔の方、涅槃も、最初は不満そうな顔をしていましたが、即答する刹那を見てすぐに認めてくれました。
「よろしくな、アト…とう」
「うん!ヨクトちゃん、よろしくね!」
(とう…?)
「あの、涅槃…とう、とは?」
「お前の事だよ」
どうやら、お父さんと呼ぶのに抵抗があるみたいですね。
まあ、こちらの反応が普通なのかもしれませんが…
(仲良くなれば、自然に呼んでくれる様になるのでしょうか…?)