誕生記念日
どうも、以下級生こと、久遠永茉です。
下っ端社会人の身ながら、4人の父親なんかをやらせて頂いてます。
まだ若いのに4人も…なんて思うかもしれませんが、ご明察。実際は僕の子ではありません。
あ、拐ってきたとかではないですよ!?これには大して深くもない事情がありまして…
中学生の頃、僕は密かに、重量の違う状態を記憶させ、自由に変形出来る、質量保存の法則に反した物質の作成に尽力してたんです。
当然ながら、そう簡単に作れるものではなく、幼い頃の僕の好奇心をもってしても心が折れてしまったんですよね。
そんな中、僕の13歳の誕生日の事でした。失敗して何とも言い表せなくなってしまった物達を入れていたごみ箱の中に、変な物を見つけました。手のひらに乗る程の大きさのその物体は、何やら周りの空気やごみを吸い込んでいる様でした。
「ん…何これ…?」
そんな不思議なものがあったら、当時の僕は触っちゃうに決まってますよ。
「うわっ…」
僕がそれを手に取ると、触れた部分から何かを持って行かれた様な感覚がしました。
「え…どうして?」
そしたらなんと、それが男の子の姿になったんですよ。
アホ毛が特徴的な紫髪、赤と黄のオッドアイがこちらを覗いていました。
僕が突然の事に驚いていると、男の子が動き出しました。
「あ…親父、おはよ…」
(親父…?)
急に子供が出来ました。軽くホラーです。
「あなたはだれですか…?お名前は?」
何も分からないので、とりあえず正直に聞いたんですが…
「じぶんのこどものことわすれるとかありえない!」
と怒られてしまいました。
(本当に身におぼえがないんですけど…)
「ぜぷとだよ…もうわすれないでね?」
(ぜぷと…?ふしぎな名前ですね)
何かわかるかもしれないと思い、その場で調べました。
『ゼプト(zepto)…10のマイナス21乗を表す国際単位系における接頭辞の1つ。記号はzで、漢字文化圏の"清浄"にあたる。アトの1/1000、ヨクトの1000倍である。』
どうやら数の大きさを表す記号の名前だったみたいです。
「清浄ですね。わすれないようにします…」
とにかく、こんな小さい子を追い出す様な真似は出来ず、僕が育てる事にしました。
この出来事がきっかけで、僕の研究が大きく進む事になります。
手のひらに乗るほどの大きさの物体が、子供の形になる…清浄が誕生したごみ箱にこそ、研究の成果が詰まっていたのでした。