修羅の刻!!聴心流覚醒!!
斑鳩の森に、朝陽が差す。
太子は一人、巨岩を前に拳を振るっていた。
その動きは研ぎ澄まされ、無駄がない。
だが――
(まだ……聴こえない。拳の奥にある“声”が……)
天聖心を得たとはいえ、まだ使いこなせてはいない。
かつて守屋の拳に沈められた記憶が、身体を鈍らせていた。
そのとき、背後から声がかかる。
「“恐れ”があるな、厩戸の拳には」
現れたのは秦河勝。
鋭い視線で太子を見つめる。
「拳に宿るのは、力ではない。“迷い”だ。お前はまだ、自分の心すら聴けていない」
「……どうすれば、“聴ける”?」
「向き合え。お前自身の“過去”と」
⸻
回想 ――戦火の京
かつて太子が旅した街に、戦火が広がっていた。
瓦礫の中、泣き崩れる母子。言葉をかける間もなく、盗賊たちが現れた。
その時、太子は恐怖に震え、拳を振るえなかった。
「力も、言葉も、届かなかった……!」
この記憶が、彼の“恐れ”の根源だった。
「お前はまだ、その時の自分を許せていない。だから拳が震える。拳を貫くには、“赦し”がいる」
秦河勝の言葉に、太子は目を閉じる。
「……赦すのか……己を……」
⸻
翌日・風の峠
太子の拳が止まる。
彼の周囲には、竹林がざわめくように揺れていた。
目を閉じた太子の口から、静かに言葉が漏れる。
「聴こえる……この風の中に……命の声が……!」
ズォォォォォォン――!!
太子の背後に、無数の光の掌が現れる!
これは――
天聖聴心流・奥義の一つ!
「千手掌破」――!!
一秒で百掌を叩き込む神速の拳技!
だがこれは、ただの物理攻撃ではない。
相手の身体と共に――“心”をも揺さぶる拳!!
太子の拳が竹を貫き、その内部の年輪が揺れる。
「これが……俺の拳だ……!」
だがそのとき!
バァァァンッ!!!
上空から雷鳴のごとき気が降り注ぐ!
「来たか……!」
物部守屋が、再び現れた。
「今度は逃さん。お前の“夢想”を、その拳ごと砕く!」
守屋の身体からは、凄まじい覇気が立ち昇っていた。
「俺の拳に、迷いはない。貴様のような“情け”に染まった拳では――この“破天崩王撃”は止められん!」
「ならば、俺の拳で答える!」
二人の拳が、再び激突する――!
⸻
次回予告!
第四話「天より降る鎧!天聖鎧・天律!」
追い詰められる太子。
だがその時、天が裂ける――!
黄金の鎧、天より降臨!
その名は――天聖鎧・天律!
To be continued…