蘇我馬子、圧倒的な強さ!?太子、次はお前だ!?
夜の帳が大地を包み、星々が戦場を見下ろすなか、三人の男が古代の荒野に立っていた。蘇我馬子、聖徳太子、そして太子の兄弟子・秦河勝。風が衣をはためかせ、静寂の中に緊張だけが漂っている。
「いかに最強のお前でも、二対一では分が悪いぞ」
そう言い放ったのは秦だった。冷静な瞳には決意が宿っている。だが馬子は嗤った。
「フフフ……すぐに一対一になるさ。貴様には消えてもらうからな!」
その言葉が終わると同時に、秦の体が弾けた。《風月残影拳》——無数の残像が夜空を駆け、まるで月下に乱舞する鶴の群れのように、馬子の周囲を取り囲む。
だが、馬子はその場から一歩も動かず、目を閉じた。彼の天聖心は、音も気配も読み取っていた。
「——《転法輪脚》!」
爆風のような気配とともに馬子の体が回転する。彼の脚はまさしく法輪、仏の意志が具現したかのような破壊力を帯び、真横から迫る幻影の拳をものともせず、秦の脇腹を正確に撃ち抜いた。
「——くっ!」
秦の体は空へと舞い上がる。夜空の星々を背に、彼はまるで翼をもがれた鳥のように高く飛び、天地が反転する中、頭から地面へと激しく叩き落された。
乾いた砂煙が上がる。太子は息を呑む。兄弟子は、動かない。
馬子はゆっくりと目を開け、砂煙の向こうで太子を見据えた。
「次はお前だ……聖徳太子!」
その声に、夜空が震えた。